月刊バスケットボール6月号

町田瑠唯、東京オリンピックのオールスター・ファイブ入り

町田を「世界一の司令塔」と呼んでも本場の記者さえ驚きはしないはずだ(左はエイジャ・ウィルソン 写真/©fiba.basketball)

 

 東京オリンピック最終日だった8月8日にFIBAが発表した今大会のオールスター・ファイブに、女子日本代表のポイントガード、町田瑠唯(富士通レッドウェーブ)が名を連ねた。これはいわゆるベストファイブで、町田は今大会で最も輝きを放った5人のプレーヤーの一人という評価を得たのだ。

 

 MVPは金メダルを手にしたアメリカ代表の万能型フォワード、ブリアナ・スチュアート。町田とスチュアートの二人とともに選出されたのは、スチュアートと同じアメリカ代表からエイジャ・ウィルソン、銅メダルを獲得したフランス代表のサンドリン・グルダ、そして準々決勝で日本代表に敗れ涙とともにコートを後にしたベルギー代表のエマ・ミースマンだった。

 

 オールスター・ファイブは男子でも選出されたが、5人全員がNBAスーパースターだった。MVPはアメリカ代表のフォワード、ケビン・デュラント(ブルックリン・ネッツ)。続く4人はパティ・ミルズ(オーストラリア代表/サンアントニオ・スパーズ)、リッキー・ルビオ(スペイン代表/ミネソタ・ティンバーウルブズ)、ルカ・ドンチッチ(スロベニア代表/ダラス・マーベリックス)、そしてルディ・ゴベア(フランス代表/ユタ・ジャズ)だった。

 

 いまや町田の名は、直近のワールドカップとオリンピックのMVP(スチュアート)、2020年のWNBAレギュラーシーズンMVP(ウィルソン)、NBA最強スコアラーの一人(デュラント)らと同じ土俵で語られる位置にまで駆け上った。

 

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東京オリンピック女子オールスター・ファイブ
※プロフィールは生年月日、身長、所属クラブ
※スタッツ略号: M=平均出場時間、P=平均得点、FG=フィールドゴール成功率、3P=3P成功率、FT=フリースロー成功率、R=平均リバウンド数、A=平均アシスト数、S=平均スティール数、B=平均ブロック数

 

ブリアナ・スチュアート(アメリカ代表パワーフォワード/#10) ☆MVP
1994年8月27日生まれ/191cm/シアトル・ストーム(米WNBA)
キースタッツ: 32.0M, 15.0P, FG54.3%, 3P36.0%, FT81.2%, 10.0R, 4.7A, 1.0S, 1.5B

 

©fiba.basketball


6試合中3試合でリバウンドと得点のダブルダブルを記録したが、これは今大会のダブルダブル達成回数最多タイ。そのうち2試合が日本代表との試合だったことは悔しいが、アウトサイドでもインサイドでも、攻めても守っても有能なプレーヤーであり、MVPの栄誉にふさわしい活躍だった。


町田瑠唯(日本代表ポイントガード/#13)
1993年3月8日生まれ/162cm/富士通レッドウェーブ(Wリーグ)
キースタッツ: 25.6M, 7.2P, FG37.2%, 3P25.0%, FT90.0%, 2.3R, 12.5A, 0.5S

 

©fiba.basketball


2020-21Wリーグでアシストリーダーだった町田は、オリンピックでも6試合中5試合で2桁アシストを記録してこの部門で今大会1位に輝いた。準々決勝の対ベルギー代表戦では10得点に14アシストで、今大会中にダブルダブルを達成した15人しかいないプレーヤーの一人となった。準決勝の対フランス代表戦では、オリンピック記録となる1試合18アシストという衝撃的な活躍。チームの決勝進出に大きく貢献した。

 

エイジャ・ウィルソン(アメリカ代表フォワード/#9)
1996年8月8日生まれ/193cm/ラスベガス・エイセズ(米WNBA)
キースタッツ: 23.4M, 16.5P, FG59.4%, FT79.3%, 7.3R, 2.5A, 0.7S, 1.8B

 

©fiba.basketball

 

高さとフィジカルの強さを生かしたインサイドでの活躍でアメリカ代表の金メダル・ランに大きく貢献した。レフティーだが写真からもわかる通り、左右両手から多彩なフィニッシュ・バリエーションを繰り出す。平均16.5得点は今大会の得点ランキング2位タイであり、チーム内ではブリトニー・グライナーと並ぶトップタイ。平均7.3リバウンドも、今大会全体で8位に入る好成績だった。


サンドリン・グルダ(フランス代表センター/#7)
1987年6月25日生まれ/193cm・C/ベリタ・ファミラ・スキオ(伊セリエA)
キースタッツ: 25.9M, 13.7P, FG61.4%, FT80.0%, 6.0R, 1.7A, 0.7S, 0.3B

 

©fiba.basketball


銅メダルを獲得したフランス代表の原動力と言えるプレーヤー。フィールドゴール成功率61.4%は今大会全体の2位にあたる好成績であり、平均13.7得点はチームトップ。単に長身なだけではなく、ゴールを背負ったバックダウン・ドリブルからターンしてのフェイドアウェイ・ジャンパーやミドルレンジのシューティングなど、多彩なオフェンスで対戦相手を苦しめていた。


エマ・ミースマン(ベルギー代表パワーフォワード、#11)
1993年5月13日生まれ/193cm/UMMCエカテリブルク(露プレミアリーグ)
平均得点1位、総得点1位、平均スティール本数1位
キースタッツ: 31.9M, 26.8P, 10.5R, 4.8A, 3.5S, 1.3B


©fiba.basketball

 

今大会で得点とスティールの2部門でランキング1位。そして得点とリバウンドのアベレージがダブルダブルという、バスケットボールの女神のようなパフォーマンスを披露した。実は、ミースマンは聴力が生まれつき一般的なレベルの50%程度なのだという。しかし彼女はそれを、何かをできない言い訳ではなく成長のバネとして飛躍を遂げた。

 

文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)



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