男子バスケ日本代表、世界王者スペイン代表相手に11点差黒星

 第4Qの立ち上がり、今度は富樫がスキルの高さを見せた。スピードに乗ったドライビング・レイアップでファウルを誘うとともに、ブロックショットに来る相手の指先がボールを捉えるより一瞬速くバックボードにバウンドさせたこのショットはゴールテンディングとなり得点が認められた。アンドワンのフリースローもきっちり沈めて59-69。試合終了まで9分9秒を残して10点差に追いすがった。

 

「ユウタ!」と叫ぶ声、そして八村 塁はダンクをぶち込んだ

 

 スペイン代表は動じることなく攻め続けてきたが、日本代表も、引き離されても反撃した。残り6分45秒、渡邊がスティールしたボールを自ら運び、フロントランナーとなっていた八村につなぎ強烈なダンクが決まって63-75。この場面では、ゴール下で手を挙げる八村から渡邊に対するものと思われる「ユウタ!」とボールを呼ぶ声も聞こえてきた。

 

 明確に誰の声かはわからない。しかしこの声の直後、渡邊から八村に矢のようなパスが通っている。チーム内に連係があること、世界の最高峰NBAで戦う二人がお互いに機能していることが、最高の形で表現された。

 

 さらに田中のアシストから八村が3Pショットを決めて66-77とした後、残り4分40秒過ぎにも見どころがあった。クラベールのパスをインターセプトした渡邊が、フロアに転がったボールに猛然とダイブし、八村につなぐ。このプレーは惜しくも最終的には得点とならなかったが、勝ちに向かう執念を強く感じさせた。気合十分の八村は、残り3分過ぎ以降に2本の3Pショットを決めるなど、世界最強軍団を相手にロングレンジ・シューティングの成長ぶりも印象づけた。

 

 日本代表最後の得点は残り47秒。渡邊と馬場が高い位置でプレッシャーをかけて奪い取ったボールを、馬場が速攻でレイアップに持ち込み77-86とついに点差を一桁に戻した。この残り時間で9点差は、まだまだ勝利への射程内だ。続くオフェンスでスペインは時間を使い、ペイントに切れ込んだマルク・ガソルがルビオからのロブを受けショットに向かうところを田中が渾身のブロック。最終的にはこぼれ球をクラベールに決められたものの、ポイントガードの田中がセブンフッターに飛びかかってブロックしたプレーには、意地や意欲が強く表れていた。

 

 日本代表は八村が20得点の大台に乗せたほか、渡邊が19得点、8リバウンド、3アシスト、5スティールを記録。富樫、金丸、エドワーズが8得点で続いた。比江島は得点こそなかったが、攻守でアグレッシブさが目立ち、アシスト2本を記録して±も+7。ベンドラメ礼生(サンロッカーズ渋谷)は1分35秒の短い出場時間だったが、ターンオーバーなしできっちり司令塔の仕事をした。渡邉飛勇(琉球ゴールデンキングス)と張本天傑(殴哉ダイヤモンドドルフィンズ)は出場機会がなかったものの、チームメイトのプレーからインスピレーションやチームとしての自信をしっかり吸収しているはずだ。

 

鋭い切れ味、プレーの創造性…。楽しく、かつ力強いプレーでルビオはスペイン代表を勝利に導いた(写真/©fiba.basketball)

 

 77-88という最終スコアは惜しいとも言える一方で、世界との隔たりを感じる結果でもある。よく聞く言葉だが、「健闘ではいけない」という思いがプレーヤーたちの心の中では大きいのではないだろうか。それだけ、日本代表は「できる」ことが示されている。ここから実際に勝つには、どうしたらよいのだろう。

 

 チームスタッツを振り返ると、最終的に日本代表は、3Pショット成功率が41%に到達。スペイン代表はェン半こそ好調だったが、29%に落ち込んでいた。ただし2Pショットは67%決められている(日本代表は41%)。リバウンドでは32-42と劣勢だったが、セカンドチャンスでの得点は9-11とほぼ互角。そして速攻での得点で18-10と優位だった。簡単に言ってしまえば、課題は高さと決定力ということになるのだろうが、その克服に必要なことは何か。

 

 いずれにしても、今や男子日本代表は、世界最強の相手に現実的な課題として勝利を考えられる位置に来たと言ってよいのではないだろうか。2年前のFIBAワールドカップで5連敗を喫した後、海外組だけでなく代表の全員、また国内のバスケットボールにかかわる多くの人々がそれぞれの立場で飛躍したことを感じさせた一戦だった。

 

男子日本代表試合結果
グループC
スペイン代表(1勝)88-77日本代表77(1敗)
日本代表 77(14 14 28 21)
スペイン代表 88(18 30 21 19)
トップパフォーマー
日本代表 得点: 八村 塁(20)、渡邊雄太(19)/リバウンド: 渡邊雄太(8)、エドワーズ ギャビン(7)/アシスト: 馬場雄大、田中大貴(5)/スティール: 渡邊雄太(5)/ブロック: シェーファー アヴィ幸樹(2)
スペイン代表 得点: Ricky Rubio(20)、Victor Claver(13)/リバウンド: Victor Claver(9)、Rudy Fernandez、UsmanGaruba(6)/アシスト: Ricky Rubio(9)、Marc Gasol(4)/スティール: Rudy Fernandez(3)/ブロック: Pau Gasol(2)

 

文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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