月刊バスケットボール5月号

3×3女子バスケ日本代表、2試合目で歴史的オリンピック初勝利

馬瓜ステファニーは日本代表にとって大会2試合目の対ルーマニア戦でチーム最多の9得点を挙げ勝利に貢献した(写真/©fiba.basketball)

 

 東京オリンピックの3☓3バスケットボールが7月24日に開幕。女子日本代表は歴史に残るオリンピック初の3☓3の試合を含む2試合を戦い、ROC(ロシアオリンピック委員会)との初戦には黒星を喫したが、2試合目の対ルーマニア戦でオリンピック初勝利を手にした。


<女子日本代表第1戦>
篠崎 澪8得点も序盤の大量失点を取り戻せず黒星発進

 

 オルガ・フロウキナの歴史的ゴールで今大会の戦いの火ぶたを切ったROCの前に、日本代表は序盤に苦戦。3☓3バスケットボールのオリンピックにおける最初の勝者として名乗りを上げる希望は残念ながらかなわなかった。

 

 西岡里紗(三菱電機コアラーズ)、馬瓜ステファニー(トヨタ自動車アンテロープス)、山本麻衣(トヨタ自動車アンテロープス)の3人でスタートした日本代表は、序盤ROCに2Pショット(5人制の3Pショット)攻勢を許し2-10と大きくリードを奪われた。山本麻衣(トヨタ自動車アンテロープス)が難しいターンアラウンド・ショットをねじ込んで日本代表としてのオリンピック史上初得点を記録し、西岡里紗(三菱電機コアラーズ)が高さを生かしてゴール下で返したが、固さがなかなかとれないまま試合が進んでいった。この間、2PショットだけでROCに3本を決められたほか、攻守の素早いトランジションからディフェンスのローテーションという本来の持ち味を発揮できず、イージーレイアップでの得点も許してしまった。

 

 落ち着きをやや取り戻したのは、篠崎 澪(富士通レッドウェーブ)が日本代表としてオリンピック初となる2Pショットを決めて4-10としたあたりから。この1本を含め、日本代表は馬瓜ステファニー(トヨタ自動車アンテロープス)が相手の7つ目のファウルを誘ってフリースローを決めた残り4分54秒までに、7-3のランで9-13まで追い上げた。5月末から6月頭にかけてのオリンピック予選でMVPに輝いた馬瓜も、このフリースローでやや固さがとれたか、徐々にエンジンがかかり出す。

 

高い決定力を発揮した篠崎 澪はこの試合でゲームハイとなる8得点を記録した(写真/©fiba.basketball)

 

 残り2分44秒、13-17のビハインドで日本代表はタイムアウトを請求。10分間で両チームが得点を競い、21点獲られたら負けという5人制にはない3☓3のルールの中、勝負をかける。

 

 高さを生かされてさらに2本ゴールを奪われたが、西岡がドライブからのフェイドアウト・ジャンパーを決め、篠崎が3連続ゴールで追いすがる。残り46秒、馬瓜が力強いドライブからのアップ&アンダーでマッチアップを破りゴール下で得点し18-19。刻一刻と過ぎていく時間の中で、日本代表に勝機が訪れた。

 

 残り30秒、馬瓜がハイポスト付近から果敢なドライブをしかけ、コンタクトを受けながらレイアップ…。ファウルか? しかし笛は鳴らずファウルとはならず、しかもミスショットとなったボールがアウトサイドでフリーになったユリア・コジッチをめがけて飛んでいってしまった。決まればノックアウトの一撃を、コジッチはプレッシャーを跳ねのけて決めた。

 

 後半の粘り強い戦いぶりがあっただけに悔しい黒星発進。しかしROCはフランス代表とともにFIBA世界ランキングの1位、2位を競う相手。敗れたとはいえ、どのチームともやりあえるメドも見えた一戦だった。

 

日本(1敗)18-21ROC(1勝)

篠崎 澪 8得点、5リバウンド

西岡里紗 2得点、1リバウンド、1キーアシスト

馬瓜ステファニー 4得点、3リバウンド

山本麻衣 4得点、3リバウンド

※キーアシスト=制限区域内の見方プレーヤーに得点に有利な状況を生み出すラストパス

 

西岡本人は目立たない数字だが、ガード陣がリバウンドを獲れた裏には西岡の奮闘も影響している(写真/©fiba.basketball)


<女子日本代表第2戦>
のびのび戦い歴史的オリンピック初勝利



今大会2試合目、日本代表はスターターに山本に代えて篠崎を起用して臨んだ。ROCとの初戦は序盤に固さがあり大量リードを許したが、この試合では馬瓜がゴール下で連続得点を奪い2-0と先行すると、一度も先行されることなく突っ走った。

 

馬瓜は終盤、一人で5連続ゴールを奪いチームをけん引した(写真/©fiba.basketball)

 

 西岡のショートジャンパーで3-0となり、さらに山本と馬瓜の厳しいプレッシャーディフェンスがターンオーバーを誘ったところで、ルーマニアは早くもタイムアウト。しかし日本代表の勢いは収まらなかった。

 

 中盤、4人がバランスよくゴールにアタックした日本はグングン点差を離す。馬瓜が右エルボーからジャンパーを沈めた時点で6-0。山本がツーピースで続いた段階で全員得点となり、以降も攻守にルーマニアを圧倒した。山本が、ミスとなった自らのツーピースのリバウンドを空中でつかみ、そのままゴールに流し込み15-6とした後は、馬瓜がポストプレーやゴール下で5連続得点を奪い最終的には20-8と世界3位の相手を圧倒。日本の3☓3にとって歴史的な、待望の今大会初勝利を手にした。

 

 日本代表は初戦こそチームディフェンスが思うように機能しなかったが、この2試合目は軽快なフットワークが戻り、ルーマニアに強いプレッシャーを与えることができていた。またオフェンスでは2試合とも、後半に力が落ちない粘り強さが発揮されていた。疲れが見える相手に対して個々のマッチアップで積極的なアタックをしかけ、また攻守でリバウンドにもくらいつく。特に序盤で大量リードを築いたこの試合では、内面的にも落ち着いたプレーぶり。次戦以降さらに期待が持てる内容だった。

 

日本(1勝1敗)20-8ルーマニア(2敗)

篠崎 澪 4得点、5リバウンド、3キーアシスト

西岡里紗 2得点、2リバウンド、1キーアシスト

馬瓜ステファニー 9得点、8リバウンド、1キーアシスト

山本麻衣 5得点、4リバウンド


☆このほかの女子の試合結果
中国(1勝)21-10ルーマニア(1敗)
ROC(2勝)19-9中国(1勝1敗)
イタリア(1勝)15-14モンゴル(1敗)
アメリカ(1勝)17-10フランス(1敗)
アメリカ(2勝)21-9モンゴル(2敗)
フランス(1勝1敗)19-16イタリア(1勝1敗)

アメリカ代表対フランス代表の試合にはアメリカ大統領夫人のジル・バイデンが応援に駆けつけた(写真/©fiba.basketball)

 

文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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