富永延長劇的決勝レイアップ! 3×3男子日本代表歴史的五輪初勝利

歓喜の勝利をつかんだ決勝レイアップに向かう富永。よくぞ決めてくれた!(写真/fiba.basketball)

 

<男子日本代表第2戦>
激闘、劇的! 歴史的五輪初勝利

 

 初戦と同じスターターで臨んだ日本代表は、この試合でも序盤に相手にペースを奪われた。高さのある相手にレイアップやプットバックなど、ゴール下で簡単に得点を奪われるシーンが続き、開始から約3分過ぎた時点で2-9と劣勢に立たされてしまった。保岡、ブラウンの連続ゴールで4-9と追い上げるが、残り5分16秒には相手にピックプレーからフリーの状態でダンクを決められ再び4-11と点差が7に開く。

 

 残り3分46秒、ニック・セリスのフローターが決まった時点でもスコアは5-12の7点差。体力的に両チームとも厳しい時間帯になってくる中で、勝利が遠のくかと思われた。しかし日本代表はここから底力を発揮する。保岡、ブラウンが再び連続得点で7-12。1本返された後、保岡のフリースローははずれたが、オフェンスリバウンドを拾った落合からのパスを受けた保岡が、今度は2Pショットを決め9-13。

 

 ベルギー代表のディフェンスはこのあたりから、見るからに動きが鈍くなる。日本代表は逆に動きを止めなかった。ベルギーの高さの前にブラウンのダンクがブロックされたシーンもあったが、果敢なアタックを次々と繰り出したことで、ベルギーの体力を奪うことができていたのだろう。

 

 もう1本決められた後、ブラウンのフリースロー、富永のプットバック、落合のフリースロー2本で13-14の1点差。残り時間1分57秒に12秒のショットクロックぎりぎりでラファエル・ボハールトにディープツーを決められ13-16とされたが、足が止まったベルギー代表のディフェンスを相手に富永、保岡がドライブから得点し、ついには残り23.6秒、富永のドライビング・レイアップで16-16の同点に追いつくことができた。

 

 残り10.7秒には、あきらめずに向かってくるセリスのドライブを富永が執拗に追いかけ、厳しい体勢にさせたところで放たれたショットをブラウンがブロック。試合はこのまま延長になだれ込んだ。

 

 ベルギー代表は、最終局面のブラウンのブロックに対しチャレンジを適用した。ジャッジ自体を覆す意図ももちろんあっただろうが、オフィシャルが映像をチェックする間に体を休めるという効果もねらったものではないかと思う。明らかに消耗した様子のベルギー代表に、延長を戦い切る体力も自信もなかったのではないだろうか。

 

 延長戦は、レギュレーションの10分間以上に死闘と呼べる内容だった。ベルギー代表はすでにファウルを8つ犯しており、ファウルは一つ一つが日本代表のフリースローになる状況でもあった。

 

 先制したのは日本代表。ブラウンの2Pショットがミスとなり相手にボールを拾われたが、そのアウトレットパスをブラウンがインタセプトし、富永にパス。トランジションへの対応が鈍くなっているベルギー代表のディフェンスを突くように、富永はすかさずドライブを仕掛け、リバースレイアップを決めた。

 

 ベルギー代表も渾身の力を振り絞ってボールを追いかけ体を張るが、イージーレイアップが入らず、プットバックも入らず…。一発逆転勝利の願いを込めるように放たれる2Pショットも、立て続けにミスとなった。

 

 日本代表もなかなか決勝ゴールを奪うことができなかったが、最後は右ハイポイストで落合のピックを使い、右コーナー方向に加速しながらドリブルした富永が、カバーにきたセリスを鋭いスピンムーブで“アンクルブレーク”。オフバランスとなった相手をしり目にワイドオープンとなったペイントに力強く踏み込み、決勝のレイアップを沈めた。

 

 激闘の後、絶叫を挙げながら男たちは鍛え上げた体をぶつけ合い喜んでいた。全員が良く攻め切った。それだけでなく、レギュレーションの残り1分57秒から、一度もゴールを奪われなかった鉄壁のディフェンスは、きっと強大な自信になったに違いない。

 

 笑顔に汗を滴らせ、がっちり組まれた開催国日本代表4人のハドル。3×3バスケットボールのオリンピックにおける歴史を始まりを飾る、初日のフィナーレにふさわしい、最高の情景だった。


日本(1勝1敗)18-16ベルギー(1勝1敗)
保岡龍斗 7得点、7リバウンド
富永啓生 6得点、5リバウンド
ブラウン アイラ 3得点、7リバウンド
落合知也 2得点、5リバウンド

 

勝利を手にした直後、落合(右)と富永(左・背中)は力強く体をぶつけて喜びを分かち合っていた(写真/©fiba.basketball)


☆このほかの男子の試合結果
ラトビア(1勝)21-14ポーランド(1敗)
セルビア(1勝)22-13中国(1敗)
ROC(1勝)21-13中国(2敗)
セルビア(2勝)16-15オランダ(1敗)
ベルギー(1勝)21-20ラトビア(1勝1敗)
オランダ(1勝1敗)18-15ROC(1勝1敗)

 

優勝候補の一つであるセルビアのデュシャン・ブル。チームは2連勝で初日を終えた(写真/©fiba.basketball)

 

文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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