月刊バスケットボール6月号

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2021.07.13

男子バスケアメリカ代表、オーストラリア代表にも敗北

 アメリカ合衆国のバスケットボール統括団体であるUSAバスケットボールがホストとなって、東京オリンピックを前にラスベガスで開催している男子バスケットボールの4ヵ国対抗戦が、思わぬ流れになっている。FIBA世界ランキング1位でオリンピックでは直近3大会連続金メダルのアメリカ代表が、日本時間7月11日に行われた初戦の対ナイジェリア代表戦に続き、同13日のオーストラリア代表との試合にも敗れてしまったのだ。

 

 オーストラリア代表は2019年にワールドカップ向けのウォームアップで対戦した試合に続く、アメリカ代表とのエキジビション2連勝。一方アメリカ代表は、USAバスケットボール公式サイトの戦評によれば、1992年以来エキジビションでは54勝4敗。しかし直近2試合でその4つの黒星のうち2つを数えることとなってしまった。

 

<試合結果>
オーストラリア代表 91(24 13 32 22)
アメリカ代表 83(27 19 18 19)

 

“NBA同士”のハイレベルな対戦に、

今やアメリカのワンサイドはない

 

 

 この日アメリカ代表が対戦したオーストラリア代表はFIBA世界ランキング3位。この試合で22得点、4アシストを記録したパティ・ミルズ(サンアントニオ・スパーズ)をはじめ、NBAプレーヤー7人が名を連ねていた。また、2020-21シーズンにメルボルン・ユナイテッドで馬場雄大とチームメイトだったジョック・ランデイルとクリス・ゴールディング、2021-22シーズンに島根スサノオマジックでプレーするニック・ケイも出場していた。

 

 アメリカ代表も現時点ではフルメンバーがそろった状態ではない。現在進行中のNBAファイナルに、フェニックス・サンズのデビン・ブッカーと、ミルウォーキー・バックスのクリス・ミドルトン、ジュルー・ホリデーが出場しているためだ。欠員分は「セレクト・チーム」として召集されているプレーヤーの中からダリウス・ガーランド(クリーブランド・キャバリアーズ)とケルドン・ジョンソン(サンアントニオ・スパーズ)が出場している。

 

 しかし、欠員があろうがなかろうが、アメリカ代表が連敗を喫するというのは、いずれにしても大きなニュースだ。試合後のアメリカ代表の会見では、ミルズと同じ22得点を挙げ対抗したダミアン・リラード(ポートランド・トレイルブレイザーズ)とグレッグ・ポポビッチHCが姿を見せたが、やはり元気のない様子だった。

 

 リラードは厳しい結果を受けて、「ちょっとボールをもって軽くひねってやろうなどということはできません。相手はNBAプレーヤーでスターターを固められるのですからね」と硬い表情で話した。ポポビッチHCは「アメリカが過去に大差でかつ試合ばかりだったというのは誤った認識で以前から接戦がたくさんあったのです」と話し、今回の代表が力不足ではないかとの見方を否定した。

 

会見でのリラードとポポビッチHCはそろって消沈した表情に見えた

 

 前半のアメリカ代表は、第1Qだけで11得点を記録したリラードを中心に主導権を握り、ハーフタイムの時点では46-37とリードしていた。しかしオーストラリア代表は、第3Qの後半約5分間に19-6のランに成功。50-58の劣勢から、クォーター終了時には気付けば69-64と5点差をつけて優位に立っていた。


アメリカ代表は粘り、第4Q残り4分35秒の時点では82-80と再びリードを奪い返していた。しかしここから11-1のランでこの試合を締めくくったのはオーストラリア代表のほうだった。この間ミルズが残り17.5秒のクラッチフリースローを含む6得点。そして残り3.1秒には、ジョー・イングルズ(ユタ・ジャズ)が完全に勝負を決める3Pショットを沈め、91-83の最終スコアでゲームセットとなった。

 

 アメリカ代表は、ディフェンスの連係にまだ問題があるように思えるシーンがあったが、ドレイモンド・グリーン(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)やブラッドリー・ビール(ワシントン・ウィザーズ)らがファイトあふれるプレーを見せ、試合を通じてチームとして引き締まっていた。しかし、チームとしての経験が豊富なオーストラリア代表は、ユニットとして辛抱強くオフェンスを展開。しぶとくアメリカ代表のディフェンスのほつれを突いた。リラードは「彼らは経験が豊富。それに対して僕らはまだまだお互いを理解しようと努めている段階です」と悔しそうに話した。

 

 身長が185cmしかないポイントガードのミルズが、208cmのケビン・デュラントを相手に果敢なドライブを仕掛け、巧みなステップと身のこなしでみごとに得点を奪うシーンなど、個々のパフォーマンスをみてもやはりオーストラリア代表は非常にレベルが高かった。


オーストラリア代表は過去にオリンピックでメダルを獲得したことがない。前回のリオ大会では、スペイン代表相手に戦った3位決定戦で88-89とわずか1ゴール届かなかった。ミルズは試合後のインタビューで「この気持ちを表せる言葉はありません。我々は皆一緒に挑戦しようとしています。どんな意味があることか、皆よくわかっていますよ」と意欲を熱烈に語っていた。


オーストラリア代表はミルズのほかイングルズが17得点(4リバウンド、3アシスト)、マティース・サイブル(フィラデルフィア・セブンティシクサーズ)が12得点(3アシスト)、ゴールディングが11得点と4人が2桁に乗せた。リバウンドではケイが9本、ランデイルが7本と奮闘した。


アメリカ代表ではリラードのほか、デュラント(17得点)、ビール(12得点)がダブルフィギュア。しかし5本以上のリバウンドをつかんだプレーヤーがおらず、チームとして25-32とこの項目で苦戦を強いられた。これは大きな敗因の一つだろうし、本番に向け懸念材料になる可能性もありそうだ。


両チームはこのあと、日本時間7月14日(水)午前中に、アメリカ代表はアルゼンチン代表と、オーストラリア代表はラスベガスでアメリカ代表とアルゼンチン代表に連勝して士気を高めているナイジェリア代表と対戦する予定だ。


文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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