月刊バスケットボール5月号

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2022.05.09

町田瑠唯(ミスティクス)WNBAデビュー2試合目も3アシスト、4リバウンドで勝利に貢献

 ワシントン・ミスティクスの一員としてWNBAに挑戦中の町田瑠唯が、日本時間5月9日(北米時間8日)にミネアポリス(ミネソタ州)のターゲット・センターで行われた対ミネソタ・リンクス戦で、レギュラーシーズンで開幕から2試合連続出場を果たした。町田は得点こそなかったものの3アシスト、4リバウンドを記録し、78-66の勝利に貢献した。アシスト、リバウンドとも初戦を上回るキャリアハイだ。ミスティクスは、アウェイで主軸のエレーナ・デレ・ダンを休ませた状態で、決して簡単ではない試合だったが、序盤から終始優位に立つ快勝で開幕2連勝を手にした。


町田は初戦と同じくベンチスタート。しかし9-6の3点リードで迎えた第1Q残り5分48秒にコートに入るや否や、即座にナターシャ・クラウドの3Pショットをおぜん立てする好プレーを見せた。このプレーはルーキー・センターのシャキーラ・オースティンとのハイピックからペイントアタックに転じ、スピードに乗った状態からのルックアウェイパスで逆サイドのウイングで待つクラウドをアシストしたプレーだった。

 


町田はこのクォーターの残り31秒にも、右ウイングからルックアウェイのスキップパスで、左ウイングで待つクラウドの3Pショットをアシスト。前半にはほかにも、最終的にショットが決まらずアシストはつかなかったもののドリブルドライブから得点機をおぜん立てするシーンが何度かあった。第2Q残り7分過ぎにはやはりオースティンとのピック&ロールからペイントに攻め込み、ゴール下にカットしたマイシャ・ハインズ-アレンに絶妙のバウンドパスを通した。惜しくもハインズ-アレンのリバースレイアップがはずれてしまったが、決まっていればハイライトになりそうな瞬間でもあった。


3本目のアシストは後半、第3Q残り3分過ぎに、左ウイングでのオースティンとのピック&ロールからドリブルドライブを仕掛け、トップでワイドオープンになったステファニー・ジョーンズの3Pショットを演出した。

 

 町田のナイスプレーはオフェンス面だけではなかった。第1Q残り31秒にクラウドの3Pをアシストするまでの過程では、その前のディフェンスで町田のパス・ディナイからクラウドがスティールに成功し、攻めあがったポゼッションでのものだった。第2Q残り1分30秒過ぎのディフェンスでは、身長180cmのガードフォワード、エアリアル・パワーズのドリブルドライブを体で受け止め阻止する好プレーもあった。

 

 

 開幕初戦からの2試合では、町田のスピードはボールを持っているときもオフボールの状態でも生きていることが感じられ、マッチアップを破っていくシーンがたびたび見られる。ディフェンスで相手に体を寄せていくスピードも速い。ただし、課題となりそうな点もいくつか見えている。この試合を通じて町田は4つのターンオーバーを犯したが、初戦も含め、やはり長身プレーヤーのディフェンスに対するパスの出し方は要注意だ。特に町田自身が止まった状態で狙うパスは出どころをディナイされやすく、かつ現時点では受け手とのタイミングの取り方も完成度がまだまだ。そのためパスをはじかれるシーンが何度か見られている。


オフェンス面では、ここまで、プレシーズンゲームを含めミドルレンジ、ロングレンジのショットを成功させていない。この試合ではリンクスのディフェンスが執拗についてきていたこともありフィールドゴールアテンプト自体も第1Qの3Pショット1本だけだった。


ただ、この点についてマイク・ティボーGM兼HCは試合前の会見で、「それは試合の流れを読んだ結果だと思いますよ(I think it mostly just reading the game a little bit)」と話し、特段懸念してはいない。「試合の流れが次に何をすべきか教えてくれる時があります。もしマッチアップ相手がスクリーンのアンダーに入ったらもっとアグレッシブに狙ってほしいですね。でもまだその辺を話す段階ではありません。まずはチームメイトとの感覚や、自分がやっていることに対する感覚をつかんでほしいです(The game sometimes tells you what you should do you know. If they are gotta keep her under the screen, she’s gonna have to shoot a more. I would like her to be more aggressive. But I’m not gonna push the issue yet. I wanna let her get the feel for her teammates and what she’s doing and let her watch film and see what’s available)」。とはいえ、試合後の会見ではティボーGM兼HCも、町田がパスを先に考えるタイプであることにも言及しており、ときにはよりアグレッシブに自らフィニッシュに行くことでより脅威を増していくことの必要性は自体は感じている様子だった。


もう一つ忘れてはいけないのは、東京2020オリンピックで町田が1試合18アシストという大会記録を生み出すような大活躍ができたのは、町田の能力に加えて、受け手とのコミュニケーションが徹底的に磨かれていたからだということだ。当時チームを率いたトム・ホーバス氏(現男子日本代表HC)は、自国開催の日本代表が他チームに比べてチーム練習を密にできていることがアドバンテージになると大会前に話していた。町田がミスティクスで経験を積んでいく中で、より安全にパスをさばくために何が必要かを個人的に身につけていくのは間違いない。同時に、チームメイト同士のコート上におけるコミュニケーションやティボーGM兼HCのハーフコート・オフェンスのシステムにおける動き方、フロアバランスを、全員でいかに共有し、絶妙の合わせを生み出していけるか。これはチームとしての課題でもあるだろう。

 

 町田とミスティクスの次戦は、日本時間5月11日(水=北米時間10日[火])にホームのエンタテインメントアンドスポーツ・アリーナで行われるラスベガス・エイセズ戦。エイセズは東京2020オリンピックでアメリカ代表として金メダルを獲得した身長193cmのフォワード、エイジャ・ウィルソンや、同大会で3x3アメリカ代表として同じく金メダルを持ち帰ったケルシー・プラムなど有力プレーヤーを擁し、サンアントニオ・スパーズで臨時の立場ながらNBA初の女性ヘッドコーチを務めた経験を持つベッキー・ハモンHCが率いるチーム。さまざまな見どころを提供する楽しみな一戦だ。

 


取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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