月刊バスケットボール5月号

NBA

2022.04.30

渡邊雄太(ラプターズ)がオフ入り前の最後の挨拶 - 苦しみが自信につながったシーズンを振り返る

 トロント・ラプターズでの2シーズン目を終えたばかりの渡邊雄太が、オフシーズンに入る前のラプターズによる最後の会見を4月30日未明(北米時間29日午後)に行った。

 


会見に臨んだ渡邊はさわやかな笑顔を見せた


シーズン終了とともにフリーエージェントとなる渡邊は、笑顔でメディアからの質問に対応。途中でスコッティ・バーンズが挨拶に“乱入”するシーンもあり、和やかな雰囲気の中でオフを迎えることとなった。


2021-22シーズンとポストシーズンにおける最後の試合となったプレーオフ1回戦第6戦で、第4Q終盤に出場機会を得た渡邊は、スコシアバンク・アリーナの大観衆の“Let’s go Raptors”という大声援に包まれてコートに立つ経験をした。もしかしたらラプターズの一員として最後の出場となるかもしれないその場面でのホームの大声援について、渡邊は「最後にあのような大声援で僕たちを見送ってくれたのは、やっぱりラプターズのファンの素晴らしいところだと思いました。感動しましたしありがたかったです」と感謝の思いを述べた。今シーズンに関しては、3Pシューティングが昨シーズンの40.0%を下回る34.2%(今年チーム現存ロスター中8位)、フリースロー成功率も60.0%(昨シーズンは82.8%)と不本意な数字だったが、「来シーズンに向けての手応えはあります」と自信をのぞかせた。「僕自身は数字以上のシュート力はあると思っています。言い訳はできないですし、与えられた限られた時間で結果を出さなければいけない世界にいるので、良い意味での自信を持ってやっていきたいです。ただ、改善しなければいけないところがあるので、オフシーズンにそれをやっていきたいと思います」

 


この日、会見の前にはニック・ナースHC、マサイ・ウジリ副会長兼社長、ボビー・ウェブスターGMとのミーティングも行い、その場ではシューティングの向上が課題として議論されたとのことだ。「ディフェンスは高く評価してくれているので、“ノックダウン・シューター(knockdown shooter=百発百中のシューター)”になれればNBAの中でもすごく良いロールプレーヤーになれると言ってもらえています。シュート力さえつければこの世界でやっていけるというのは自分でもわかっているので、今年のオフもしっかり重点的にやっていかなければいけないと思います」


また、ここまでの渡邊のプレーで右手のフィニッシュが少ない印象だったので、その点について話を振ってみたところ、「自分でも一番不得意な部分」と苦笑いで答えてくれた。「それだと相手も的を絞りやすいので、右手のフィニッシュ力を含めて強化していかなければいけないという思いはあります」とのこと。プレーオフ第5戦で決めたレイアップはマティース・サイブルを抜いてワイドオープンの状態で右手からの得点だったが、ディフェンダーと競った状況での右手のフィニッシュに対する苦手意識を克服することにも意欲を持っていた。


故障と新型コロナウイルス感染で開幕前から良い波に乗り切れずに終わった感がある今シーズンは、一度ローテーションで活躍する楽しさを体験した後、それができなくなったからと落ち込む“贅沢”な感覚を持つようにもなり悩んだ時期もあったという。しかしそれも立ち位置が変わったことによる成長の証し。開幕前には多くの予想がイースタンカンファレンスの10位以下だった中、5位に食い込みプレーオフでも激戦を戦ったラプターズの一員として最後まで戦えたことは、自信につながっている様子だ。


オフには一度帰国するものの、あまりゆっくりせず再び渡米してワークアウトに励む考えだ。日本代表での活動に関しては未定。フリーエージェントとして迎える夏でもあり、故障で契約の機会を逃すことがないように、また逆に実戦感覚の維持を望むレベルでできるようにバランスを考えながら、スケジュールを今後決めるとのことだった。

 

 来シーズンの所属がどこになるかは今の段階ではわからない。しかしラプターズを含め、さまざまな可能性が考えられる位置にあることは間違いないだろう。7月以降の動向に注目だ。

 


新人王に輝いたスコッティ・バーンズが会見に飛び込んできたシーン

 


取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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