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2021/04/13

コービー・ブライアントに思いを馳せるNBA取材の現場

 4月12日と13日は、昨年1月にヘリコプター事故で帰らぬ人となったコービー・ブライアントのキャリアと深くリンクする日だ。

 

イラスト/茂本ヒデキチ


 8年前の2013年4月12日に行われたロサンジェルス・レイカーズ対ゴールデンステイト・ウォリアーズ戦の終盤、ハリソン・バーンズ(現サクラメント・キングス)の左サイドをドライブで抜こうとしたブライアントは、左アキレス腱を断裂してしまう。直後、痛みに耐えながらもブライアントは腱の周辺をさすり、状態を確かめていた。普通なら痛みに悶絶して動けないような状態。しかしブライアントは、パウ・ガソルらチームメイトの手を借りながら立ち上がる。バーンズにファウルがついて時計は止まっていたが、レイカーズはタイムアウトをとり、ブライアントは自力でベンチまで歩いて戻った。
 107-109でウォリアーズを追いかける第4Q残り3分8秒。タイムアウトが明けると、自由にならない左足を引きずって、ブライアントはコートに戻ってきた。フリースローラインに立ち、与えられた2本のいずれも成功させて、試合をタイに持ち込む。
 レイカーズはプレーオフ進出に向けギリギリの位置で第8シードを争っていただけに、落とせない一戦だった。しかし、ブライアントの鬼気迫る戦いぶりに触発され、この試合を含むレギュラーシーズン最後の3試合すべてに勝利。プレーオフ進出を果たしている。
 4月13日。今から5年前の2016年のこの日は、ブライアントが現役最後の試合に出場した日だ。37歳。レイカーズで、パープル&ゴールドにすべてを捧げた20年間のキャリアに終止符が打たれた。
 それは誰も想像することができないような、輝かしいフィナーレだった。対戦相手はユタ・ジャズ。ブライアントは50本のフィールドゴールアテンプトで60得点を奪い、レイカーズを逆転勝利に導いた。最愛の家族、シャキール・オニールやデレク・フィッシャーらかつてのチームメイト、ジャック・ニコルソンやスヌープ・ドッグらステイプルズ・センターではお馴染みのレイカー・セレブたちに囲まれ、ブライアントは伝説のキャリアの最終章にもう一つ伝説を書き加え、NBAのコートに別れを告げた。

 

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ブライアントの勇姿を振り返る現役プレーヤーたち


 今シーズンNBA取材をしている最中にも、何度かブライアントの話題に遭遇することがあった。何かのプロジェクトの一環で、同じ質問をさまざまなプレーヤーやコーチに投げ掛けるレポーターもいた。
 日本時間4月11日(アメリカ時間10日)にフェニックス・サンズ対ワシントン・ウィザーズ戦を取材した際、ブライアントの影響を強く受けていることで知られるサンズのデビン・ブッカーが会見に現れたので、あらためて在りし日のレジェンドの功績に思いを寄せていますか、という聞き方で質問させてもらった。

 

ブッカーはブライアントへの変わらぬ敬意を語った(写真をクリックするとインタビュー映像を見られます)

 

 ブッカーはさまざまなインタビューでブライアントに対する尊敬の念を語っているが、このときも「正直なところ毎日思い出しています。あらゆるフェイドアウェイ、あらゆるムーブ…。今日の試合でクリス(ポール)がやったポンプ・フェイクでディフェンスを翻弄するやつとか、(試合に向かう)姿勢…。シューズには『伝説になれ(Be legendary』と毎日書き込みますし、僕の腕にもそれを刻んであります。彼を思わないで過ごす日は一日としてありません」と答えてくれた。彼にとってはある特定の時期が特別ということではなく、ブライアントの存在が日々の生活に溶け込んでいるということが、あらためて確認できるコメントだ。
 ブッカー自身による英文回答は以下のような流れだった。
"Yeah, everyday honestly. Any move, you make on the court any fadeaway, any move like Chris did tonight with the pump-fake, flyby and then just the approach. I mean I put the saying on my shoes every night, “Be legendary”. I mean I have it tattered on my arm. That’s something Kobe has left me with so…, There’s not a day I go by…, day that goes by…, or day I just go, you know without thinking about him."
 ブッカーの回答に出てきた"Be legendary"は、2016年3月23日にサンズとレイカーズが対戦した際に、ブライアントがブッカーに贈ったメッセージだ。この日から1年と1日後の2017年3月24日、ブッカーはボストン・セルティックスを相手に70得点を記録。実際に伝説として残るような活躍を見せ、このメッセージに込められたブライアントの期待に応えてみせた。これは2006年1月22日のロサンジェルス・レイカーズ対トロント・ラプターズ戦でブライアントが81得点して以来の高得点。かつ、ブッカーは一試合70得点を達成した最年少プレーヤーとなっている。
 今年の日本時間4月13日(アメリカ時間12日)に行われたユタ・ジャズ対ワシントン・ウィザーズ戦に先行して行われたシューティングアラウンド後の会見では、ブライアントの引退試合に出場したプレーヤーの一人であるジョー・イングルスにその試合関連の質問が飛んでいた。イングルスは「せっかくの引退試合を台無しにするのも楽しかったかも…(Spoiling his last game would have been really fun for us...)」と冗談めかして語りながら「特別な夜で、あの場所にいられたことは一生の思い出です(It was a special night to be a part of. We'll certainly all always remember.)」と振り返り、当日の日付が刻まれたブライアントの特別なシグニチャーシューズが、チームの全員に贈られたことも明かしていた。
 「英雄は現れては消えていく。でも伝説は不滅だ(Heroes come and go. But legends are forever)」。ブライアントのこんな言葉も思い起こされる取材の現場だ。

 

イングルスはブライアントの引退試合に出場したプレーヤーの一人だ

 

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取材・文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)

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