月刊バスケットボール5月号

NBA

2022.03.15

八村塁のスターター起用「あらゆる可能性がある」 - アンセルドJr.HC語る

 八村 塁が好調を維持しているのと対照的に、チームとしては負けが込んでいるワシントン・ウィザーズ。NBA Japan Games 2022 Presented by Rakutenの開催が発表された日本時間3月15日(北米時間14日)には、来日して対戦する予定のゴールデンステイト・ウォリアーズとの試合に112-126で敗れた。この黒星で4連敗、直近10試合が3勝7敗という厳しい流れの中、レギュラーシーズンの残り試合数は15となった。通算成績29勝38敗で11位のウィザーズは、プレーイントーナメント出場圏内ギリギリの10位に座しているシャーロット・ホーネッツ(34勝35敗)とも4ゲーム差となっている。

 

 巻き返しを図るにはクリスタップ・ポルジンギス、トマシュ・サトランスキーら新戦力と八村をはじめとした既存戦力の融合が欠かせないのは間違いないところだが、もう一つ気になるのが八村の起用方法だ。冒頭に記したとおり八村は好調、それどころか絶好調と言えるパフォーマンスを続けているからだ。

 

 

 

 今シーズンの八村は、開幕前から長期離脱の期間があり、初登場は日本時間1月10日(北米時間9日)のオーランド・マジックとの試合だった。シーズンデビュー当初は、特にミドルレンジ、ロングレンジのシューティングに関して本調子とは言えない結果が続いたが、2月に入ってからは率直に言って、チームで最も安定感のあるシューター、フィニッシャーとして貢献できている。フィールドゴール成功率は1月が42.4%、2月が49.4%、そして3月に入ってからは57.6%。3Pショットは1月が33.3%、2月が63.6%、3月も58.3%と高確率だ。


 フィジカルにペイントに攻め込むプレーも力強く、速攻で走り、コートのどこからでも高確率でゴールを射抜いている。この日もウォリアーズに対してフィールドゴール7本中5本を成功させて12得点。3Pショットは2本とも確実に決めていた。

 

 にもかかわらず、チームとしては八村が復帰してからの27試合を10勝17敗と大きく負け越しているのだ。八村自身の起用は1月は特にテスト的な意味合いが強く感じられた。しかし、ブラッドリー・ビールがシーズン全休となる故障に見舞われ、また新戦力が加入して環境が変わる中でも八村の復調ぶりは目を見張るものがある。そろそろ八村のスターター起用があってもよさそうな雰囲気もあるが、実際ウェス・アンセルドJr.HCはどのように思っているのか。試合後の会見で質問してみたところ、以下のような回答をしてくれた。

 

「今はあらゆる可能性があります。私は今の彼は良い状況にあると思っているんですが、この先も伸びてくるか見ていこうと思っています」

“I think now everything is on the table. You know I think I like him where he is right now. But as he progresses, you know, we’ll see.”

「彼は非常に良い働きをしてくれています。序盤はかなりの試合を欠場しましたから、中盤戦で追いつかせようと取り組んできました。しかし現在の状況と1ヵ月半前、2ヵ月前では夜と昼ほど様子が違いますからね。(音声中断)シューティングは高確率だし我々のプレーやスペーシングにもかなり良い感覚を持っています。このまま成長を見守りたいですね」

“I think he’s done a lot of good things. And I know he’s missed a chunk of games early. So, we were playing “catch-up” you know in the middle of the season. But where he is now from where he was you know a month and a half, two months ago is like night and day. (audio is missing) … with confidence. He’s shooting the ball at a high clip. He’s got a pretty good feel for you know how we play, how we space. So, I just want to continue to see him grow.”

 

アンセルドJr.HCは八村のスターター起用も可能性の一つと話した(写真をクリックするとインタビュー映像が見られます)

 

 

 八村自身はスターターでもベンチからの登場でもこだわらずにチームニーズに対応するという趣旨のコメントをしていた。ウェス・アンセルドJr.HCはパワーフォワード/センターのスターターにポルジンギスとカイル・クーズマを起用しており、両者ともパフォーマンスが悪いわけではないので、ここをむやみに動かしたくないという思いはありそうだ。また、スペーサーとしてコーリー・キスパートとケンティビアス・コールドウェル-ポープをスターターに入れているが、八村をその意味合いでスターターに入れるよりも、ラインナップにサイズとフィジカリティーを加えながらフィニッシュ力を維持するような意味合いでベンチから投入する考えが見て取れる。それが奏功した結果が八村の活躍という見方なのかもしれない。

 

 八村も自身を3Pシューターとは捉えておらず、ミドルレンジやペイントでの強さが持ち味であることをコメントしている。そうした考え方が八村の起用法に影響している可能性もある。

 

 いずれにしても上記のコメントは、積極的に八村をスターターに組み込む意図よりも、ベンチからの起用で様子を見つつ、チームと八村自身の調子によっては…という感覚のように受け止められる。問題は八村の良い働きが勝利につながらないことであって、仮に現状のローテーションが安定して勝ち癖がついてくれば、今シーズンはこのままシックスマンとして定着ということになり、それで成功という捉え方になるだろう。

 

 ここまで八村は30分以上プレーした試合が一度もないので、控えで起用しながら出場時間を延ばすという考え方もある。36分換算の数値では、八村の得点(18.4)はキャリアハイ。つまりコートに長く立てばそれだけ高得点が期待できるのだ。それも一つの答えだろう。しかし、残り15試合となった今、悪い流れを断ち切れないなら、どこかで八村のスターター起用を試すタイミングがありそうな状況ではある。

 

 

取材・文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)



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