月刊バスケットボール5月号

NBA

2022.02.28

渡邊雄太(トロント・ラプターズ)の復調に期待を寄せるニック・ナースHC

 トロント・ラプターズの渡邊雄太が、日本時間2月27日(北米時間26日)にオールスター・ブレイク後2試合目の対アトランタ・ホークス戦に出場。3分に満たない短い時間に5得点、2リバウンド、2アシスト、1ブロックを記録した。

 

 

 試合は127-100でホークスが勝利した。


渡邊がコートに入ったのは、91-118と27点差をつけられた第4Q 2分52秒からで、渡邊は試合終了までプレーした。登場直後のプレーはディフェンスからで、身長203cmのフォワード、ジェイレン・ジョンソンにマッチアップし、まずはタイトにプレッシャーをかけてミスを誘った。オフェンスでは、最初のチャンスで相手の2-1-2ゾーンをトップからのドリブルドライブで破り、208cmのセンター、ゴーギー・ジェンの前からランニングフローターを放ち、得点につなげた。


次のオフェンスでは思い切りよく3Pショットを狙い、これはミスになったが、続くポゼッションでは50-50ボールとなったオフェンス・リバウンドをつかみ、サディアス・ヤングのダンクをアシスト。さらにその次のポゼッションではダラノ・バントンのドライブ&キックからのパスを右ウイングで受けて3Pショット成功と、短い時間に次々と好プレーを披露した。


渡邊は止まらず、その返しのディフェンスではジェンとマッチアップしてドライブに対応し、レイアップをクリーンブロック。そこからトランジションで攻め上がって狙ったレイアップは決められなかったものの、そのポゼッションでもオフェンス・リバウンドをつかみバントンのレイアップをアシストした。


渡邊はこの試合を含め2月には6試合の出場にとどまったが、月単位でスタッツを比較すると少しずつ復調してきていることが感じられる。


☆渡邊雄太の1・2月のアベレージ比較
M=出場時間(分)、P=得点, FG=フィールドゴール成功率, 3P=3P成功率, FT=フリースロー成功率, R=リバウンド, A=アシスト, S=スティール, B=ブロック
1月(8試合) 9.2M、1.1P(FG16.7%、3P22.2%、FT50.0%)、1.5R、0.1A、0.1S、0.3B
2月(6試合) 3.6M、3.5P(FG60.0%、3P60.0%、FT75.0%)、0.7R、0.5A、0.5B(スティールなし)

 


明らかな向上が見られるのはシューティングの3項目で、この点は「“スペーサー”として起用したいという」ニック・ナースHCの期待に応える好材料だ。また、2月にアベレージが低下しているリバウンドに関しても、実は1月に1本しかなかったオフェンス・リバウンドが2月に3本に増えており、アクティブさとアグレッシブさが増してきていることもうかがえる内容だ。


シューティングに関してもう少し詳しく振り返ると、1月は12本のフィールドゴール・アテンプトのうち9本(75.0%)が3Pショットだったが、2月はその比率が10本中5本(50.0%)に下がり、結果としていずれも確率が大幅に上昇している。それと同時に、フリースローの本数は6本から8本に増え、これも確率が上昇した。


傾向的な考察としては、故障とコロナウイルス陽性判定による欠場から復帰し、ビッグゲームでの重要な役割で試されることが多かった中、3Pショットを高確率で決めようと積極的に狙い、またワイドオープンの機会もあったが決めきれなかったのが1月で、それに対し3Pショットの機会をうかがいながらもペイントアタックで状況を打開する場面が増え、そこからの直接的な得点やフリースロー獲得につながり好転したのが2月と言えそうだ。

 

 総得点は1月が9だったのに対し、2試合少なく出場時間も大幅に減っている2月に倍以上の21。この上昇は、OGアヌノビが故障欠場となり、フレッド・バンブリートとパスカル・シアカムのコンディションがいまひとつと主力が不安定な中で、レギュラーシーズン終盤に向けコーチ陣にとっては明るい知らせに違いない。


ホークスとの試合を前にした会見でニック・ナースHCに、渡邊にインサイドへのアタックをこれまで以上に狙うように話しているのかどうかを尋ねると、答えは「No」だった。ただし、「でもショットを狙うにしてもオープンになったペイントにドライブするにしても、アグレッシブにいくようにとは話しています。彼にはずっとそうしてもらおうとしてきました(But[I am] just encouraging him to be aggressive whether it’s taking shots or taking driving lanes that are open. That’s what we’ve always tried to do with him)」とのことだった。

 

対アトランタ・ホークス戦の試合前会見でのニック・ナースHC(写真をクリックするとインタビュー映像が見られます)

 

 ナースHCはこのコメントを発する前に、次のようなことも話してくれた。


「今、彼は十分な機会を得られずにいます。だから時間を得られたら(オールスター・ブレイクの前に話していたとおり)、ローテーションに戻っていけるときは近いだろうからできる限りのことをしたい、という思いだったでしょう」
“He’s not getting a whole lot of opportunity right now. So, he’s had to kind of make the most of whatever time he’s getting. So, that we can…, you know, I think I told you right before the break, I thought he was getting close to…, back to cracking into the rotation”


「2人が欠場、あるいは3人がコンディションを落としている中で、我々は彼を必要としています。だから彼が本来の感覚を取り戻し、さらに彼らしい姿になってきてくれてうれしいです。かなり自信をもってプレーできていたと思います。そろそろもっと緊迫した状況でどんなことができるか、見てみたいと思っていますよ」
“And obviously with a couple guys are out, maybe three guys under the weather, we may you know, he certainly… We’re gonna need him. So, I’m glad that he is…, he seems to be feeling himself a little bit more like himself and even feeling himself a little bit. I thought he’s played pretty confidently. So, let’s see what he can do in the guts of the game now”

 

 

 このコメントの後、会見時点でインジャリー・レポートのステイタスが「Questionable」だったシアカムとバンブリートが出場することとなり、かつ試合の半ば以降「緊迫した状況(guts of the game)」が生まれなかったこともあってなのか、渡邊は直近の数試合同様に終盤の短い時間に出場という形になった。しかしナースHCのコメントには期待感があり、日本時間3月1日(北米時間2月28日)のブルックリン・ネッツとの次戦、あるいはそれ以降近い将来に、渡邊の起用方法に変化がみられる可能性は十分ありそうだ。

 

取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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