月刊バスケットボール5月号

NBA

2022.02.19

八村 塁“コンニチハ!”ダンクにクラッチスリー、20得点でウィザーズを快勝に導く

 ワシントン・ウィザーズにとってオールスター・ブレイク前の最終戦だった日本時間2月18日(北米時間17日)の対ブルックリン・ネッツ戦は、八村 塁の完全復調を示すいくつもの要素が見られた一戦となり、ウィザーズが、117-103で勝利した。

オールスター・ブレイク前の最後の試合で、八村 塁は完全復調と言えるようなパフォーマンスを披露した


この試合で今シーズン最長の27分15秒プレーした八村は、シーズンハイとなる20得点にリバウンド、アシスト、スティールを1本ずつ記録。フィールドゴールは15本中8本成功の成功率53.3%で、その中には2本中2本成功の3Pショットも含まれていた。


特にビッグプレーが次々と飛び出した第4Qには、4本のスラムダンクに終盤勝負を決定づける3Pショットなど13得点。ラマーカス・オードリッジや、神奈川県横須賀市生まれのスコアラー、キャム・トーマスらの得点で懸命に食らいつくネッツを振り払う大活躍だった。


78-78のタイで迎えた最終クォーター開始早々、先行したのはウィザーズだったが、その先陣を切ったのが八村だった。速攻でフロントランナーとなった八村は、イシュ・スミスからのリードパスを受け、この日9得点目となる豪快なワンハンド・ダンクでウィザーズにまずは2点のリードをもたらす。実況のジャスティン・カッチャー氏が「コンニチワ!」と絶叫したこのダンクから、ウィザーズは17-5のランへと突き進んだ。


以降、好プレーはいくつもあったが、その一つがウィザーズの88点目、八村としては11得点目となるプットバック。このポゼッションでは、スミスとアンソニー・ギルがタテ方向のドライブでペイントアタックを2度続けた後、ギルからのキックアウトを左ウイングの3Pエリアで受けた八村自身もドライブで3度目のペイントアタックをしかけた。3Pショットが相当な脅威となっている八村に対し、パティ・ミルズがクローズしてきたところをカウンターで抜き、広いスペースが空いたペイントでオードリッジと1対1となったが、八村は落ち着いてタイミングをずらし、レイアップを放った。これはミスとなったが、八村は十分に優位なポジションを確保しており、悠々ティップインを決めることができた。


キャム・トーマスの3Pショットで95-86とされた後の残り6分48秒のプレーは、ゴンザガ大学の後輩コーリー・キスパートとの息の合ったハンドオフプレーから、タイミングよくペイントにダイブしてリターンを受けダンク。得点の奪い合いが続き、ウェス・アンセルドJr.HCがタイムアウトを取った後の残り3分36秒には、デザインプレーからスミスとハイピックを展開し、ゴール下にスリップしてスミスからの絶妙のパスを受け豪快なボースハンド・ダンクで106-94とした。この2本はどちらも、ネッツに持っていかれそうな流れを引き戻す重要な得点だった。


スミスの3Pショット、デニ・アブディヤのダンク。ウィザーズは八村以外のプレーヤーもビッグショットを次々と成功させる中、八村のストロークが決定的な3Pショットを生み出す。残り1分30秒で飛び出したこの一撃は、110-101と一桁点差で粘るネッツが最後の望みをかけようという時間帯に、トップ右の3Pエリアでワイドオープンになった状況。決めるべきショットを、決めてほしいショットをしっかり決めた八村は、勝利を確信するかのように、口から舌を出しながら笑顔でベンチに戻ってきた。

 

 この日は北米時間でマイケル・ジョーダンの誕生日。その生誕の地ブルックリンで、八村のビッグプレーと舌出しスマイルは、ジョーダンの現役時代さえ思い出させた。試合後の会見でそのしぐさについて質問された八村は、「楽しんでできました」と再び笑顔を見せ、「おめでとうございます、ですね!」とジョーダンの59歳の誕生日を祝していた。

 

 全般に順調な復帰過程を踏み、ウィザーズの主軸の一角として存在感を高めている八村だが、特にロングレンジ・ゲームが絶好調だ。この試合を終えた時点で3P成功率は46.2%。これは、規定本数に達していないとはいえ、現時点でリーグトップのPJタッカー(マイアミ・ヒート)の45.0%をも上回る数字だ。そのカギは自信だと八村は話した。「ずっと練習してきて、練習通りにできている、それが良い結果に出ているんじゃないかなと思います」。3日前の試合でネンザした右足の状況も、この分では心配はなさそうだ。

 

会見前半はコーリー・キスパートと同席で行われていた


オールスター・ブレイク明けの後半戦では、トレードデッドライン直前に獲得したクリスタップ・ポルジンギスも早々に戦列に加わってくる公算が強い。新チームではさらにダイナミックなオフェンスが展開されることが期待できるだろう。その中で、八村の爆発がウィザーズにとってますます大きな力になりそうだ。


文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



PICK UP