月刊バスケットボール6月号

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2022.02.20

NBA史に輝く劇的ショットを振り返るクラッチ・チャレンジはベイン/ハリバートンペアが優勝 - 思わぬ“珍プレー”も

 NBAオールスター・ウイークエンド2022の初日のライジングスターズ・チャレンジの準決勝と決勝の間に、試合とは別にこれまでにない新しいイベント『クラッチ・チャレンジ』が行われた。NBA史に輝く幾多のクラッチショットの中から5つを選び出し、それぞれのショットが放たれた位置からライジングスターが2人一組でゴールを狙うゲームだ。

 

 どのペアが最も短い時間で5本すべてを成功させるかを競う新趣向。最初にスタートするペアには90秒の制限時間が設けられており、以降のペアは自分たちよりも前のペアが達成した最短タイムを破る記録でフィニッシュしなければ失格というルールだ。今回選ばれたのは次の5本のクラッチショットだった。


1. マジック・ジョンソン(元ロサンゼルス・レイカーズ)が1987年のNBAファイナル第4戦第4Q残り7秒にペイントの中央から決めたランニング・ベビーフック(2勝1敗でリードしたレイカーズが敵地ボストンで王手をかけようという試合で勝利を決定づけた一撃)

2. チャールズ・バークリー(当時フェニックス・サンズ)が1993年のウエスタンカンファレンス・ファイナル第6戦でトップから成功させたシリーズウィナーとなるロングツー

3. レジー・ミラー(元インディアナ・ペイサーズ)が1998年のイースタンカンファレンス・ファイナル第4戦第4Q残り2.9秒からのインバウンドプレーで右ウイングの3Pエリアから決めたゲームウィナー(ミラーはパスを受ける過程でマイケル・ジョーダンを押しのけてスペースを作って決めた)

4. レイ・アレン(当時マイアミ・ヒート)が2013年のNBAファイナル第6戦第4Q残り5.2秒に右コーナーから成功させた同点3Pショット(アレンの起死回生の一撃でヒートはこの試合を延長に持ち込み、最終的に第6戦・第7戦に連勝してフランチャイズ初の連覇を成し遂げた)

5. デイミアン・リラードが2019年のウエスタンカンファレンス・セミファイナル第5選で成功させたシリーズウィナー(トップ右のディープエリアから放ったブザービーターの3Pショット)

 


これらのシーンを振り返るだけでも楽しいが、それぞれのペアが順調に進めていけば、NBAの今後を作っていくライジングスターたちが、短い時間にそれぞれの思い出のスポットから次々とゴールを成功させていくエキサイティングな展開となる。出場したプレーヤーたちは、それぞれの位置から単純にショットを成功させればよいというルールで、例えばマジックのベビーフックをそのまま再現する「HORSE」のような要求はない。とにかく「早く入れる」のが勝負だ。

 

 優勝したのはデズモンド・ベイン(メンフィス・グリズリーズ)とタイリース・ハリバートン(インディアナ・ペイサーズ)のペア。一番手で先陣を切ったエバン・モーブリー(クリーブランド・キャバリアーズ)とジョシュ・ギディー(オクラホマシティ・サンダー)のタイムを10秒以上縮める会心のシューティングだった。

 

デズモンド・ベイン(左)とタイリース・ハリバートン(左)はみごとなシューティングでクラッチ・チャレンジの初代チャンピオンとなった

 

☆クラッチ・チャレンジ最終結果

デズモンド・ベイン/タイリース・ハリバートン 39.1秒(優勝)
エバン・モーブリー/ジョシュ・ギディー 49.7秒
ジェイデン・ハーディー/マイケル・フォスターJr. 4スポットのみ成功
スコッティ・バーンズ/タイリース・マクシー 2スポットのみ成功

 

 

 この新種目は観戦するファンにNBAの歴史を振り返る機会を作った点で価値があったという以上に、楽しい時間を提供したと言えそうだ。その最大の要因はもちろん、優勝したベイン/ハリバートンペアが披露した秀逸なパフォーマンス。また2位のモーブリー/ギディーペアも、最初の4本を成功させるのには30秒もかからなかった。Gリーグ・イグナイト所属のジェイデン・ハーディーとマイケル・フォスターJr.のペアも、時間ギリギリ(モーブリー/ギディーペアの49.7秒)で5本目を決めるチャンスを残す展開だった。

 

 もう一つの要因は、最後に登場したスコッティ・バーンズ(トロント・ラプターズ)とタイリース・マクシー(フィラデルフィア・セブンティシクサーズ)が、最も簡単かと思われたマジックのベビーフック・スポットから1本も入れることができないという“珍プレー”を披露したことだ。バーンズ/マクシーペアは、ゴールから2m程度の距離にあるマジックのベビーフックスポットからバーンズが4本、マクシーが2本の計6本連続でミス。マクシーはアレンの3Pスポットから、バーンズもバークリーのロングツースポットから1本ずつを沈めたが、結局至近距離のマジックスポットから入れることができないまま、優勝ペアの39.1秒の記録を過ぎタイムアップとなってしまった。

 

スコッティ・バーンズ(左)とタイリース・マクシー(右)の珍プレーも会場を沸かせていた

 

 バーンズは「信じられません…(I'm in disbelief)」と一言。NBAではほとんどありえないこの結果と、愛嬌たっぷりのバーンズとマクシーの姿に、会場のロケット・モートゲージ・フィールドハウスに集まった観衆は大いに沸いていた。

 


文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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