月刊バスケットボール6月号

NBA

2022.02.08

八村 塁が今シーズン5度目の2桁得点 - 黒星のウィザーズは立て直しに重要な時期にさしかかる

 戦列復帰からほぼ1ヵ月を経た八村塁が、一歩一歩前進を見せている。日本時間2月8日にワシントンD.C.のキャピタルワン・アリーナで行われたワシントン・ウィザーズ対マイアミヒートの一戦は、八村所属のウィザーズがホームで100-121と痛い黒星を喫したが、八村自身は26分37秒間プレーして今シーズン5度目の2桁得点となる11得点に3リバウンド、1アシスト、1スティールを記録した。

 


八村の出場時間は今シーズン最長を更新し、アーロン・ホリデイ(27分49秒)とカイル・クーズマ(26分57秒)に続きチームで3番目に長かった。得点の内容も3Pショット2本、ローポストでポジションを確保してボールを受けてのレイアップ、速攻でフロントランナーとなってたたき込んだダンク1本とそのプレーで得たファウルによるフリースロー1本と、ハーフコートでもトランジションでも躍動的。3Pショットは3本中2本成功の高確率だった。八村が3Pショットを2本成功させたのは今シーズン2度目で、シューティングタッチも良さそうだ。

 

 その一方、チームとしてのウィザーズは2日前の対フェニックス・サンズ戦に続く連敗。直近10試合は2勝8敗と低調で、通算成績も24勝29敗と借金が5に膨らんでいる。この試合を終えての順位は前日までと変わらず11位のままで、プレーイントーナメント進出圏内の10位に位置するアトランタ・ホークス(25勝28敗)ともまだ1ゲーム差。後半戦での巻き返しも十分可能だが、ポストシーズンに向けてオールスター・ブレイク前後の早い段階に立て直しを図りたいところだ。


そのオールスター・ブレイクまでに、今後のウィザーズを大きく左右するかもしれない注目すべきポイントが3つあると思われる。一つは左手首を痛めて欠場中のブラッドリー・ビールの、復帰に向けた見通しがどうなるか。ウェス・アンセルドJr.HCによれば、ウィザーズは日本時間9日(水=北米時間8日[火])にビールの左手首の回復状態を確認する予定だ。その時点での見込みが長期化なのか、短期間で復帰となるかで後半戦へのアプローチが変わる可能性があるだろう。

 


もう一つは八村の起用方法だ。八村はここまでの出場した14試合で平均出場時間を17.8分まで伸ばしてきており、平均7.8得点、3.6リバウンド、0.9アシストのアベレージを残している。プレーを見るかぎり動きは良く、特に3Pショット成功率はキャリアハイの37.9%だ。前述のとおりこの日も今シーズンの最長出場時間を更新したが、今後出場時間が増えれば、それだけアベレージも上昇させられそうな雰囲気がある。


この流れの中で、フォワードのケンテイビアス・コールドウェル-ポープ、あるいはセンターのトーマス・ブライアントに代わって、八村が近々スターターに切り替わっても不思議ではなさそうだ。それが実際に起こるか、起こるのならいつなのか。

 

 逆にこのままシックスマン的な起用方法を発展させるローテーション作りもないことはないだろう。しかしトミー・シェパード社長兼GMはオフの段階から八村の役割は変わらないと話しているので、最終的にはスターター起用に戻す公算が強いだろう(必ずしもそうなるとも限らないが)。それが奏功してクーズマとのフロントラインの1-2パンチが機能するなら、ウィザーズのムードはガラリと変わるかもしれない。

 

 さらにもう一つのポイントは、トレードデッドラインをまたぐ戦力補強の動きだ。今年のトレードデッドラインは、日本時間2月11日(金=北米時間10日[木])に迫っている。ウィザーズに関してもさまざまなトレードのアイディアやウワサはあるものの、実際にウィザーズが何らかの補強をするかどうかも、誰が動く可能性があるのかも、最終的には当日の締め切り時間(北米東部時間10日午後3時=日本時間11日午前5時)の直前までわからない。また締め切り時間を過ぎた後も、フリーエージェント市場でウィザーズがどんな動きを見せるか、あるいは見せないのかはそのときにならなければ何とも言えない。

 


思わぬ戦力が突如としてチームを去ったり、加わってくる可能性もないとは言えない。これら3つのポイントと、そのほかにも表面的には見えないさまざまな要素が絡む中で、ウェス・アンセルドJr.HCがどんなチーム作りをして後半戦に臨むか。その中で八村がどんな形で活躍の幅を広げていくか。注目すべき時期を迎えている。


文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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