月刊バスケットボール5月号

NBA

2022.02.02

渡邊雄太3試合連続出場ナシも「ローテーションの一角」とナースHC語る

 トロント・ラプターズの渡邊雄太が出場機会獲得に苦しむ状況を迎えている。日本時間2月2日(北米時間1日)のマイアミ・ヒートとのホームゲームでも、ベンチ入りしながらコートに立つ姿を見ることができなかった。出場可能な状況下の試合での3試合連続不出場。これは今シーズン初めてで、昨年3月半ば以来のことだ。


一方でラプターズは徐々に調子を上げており、この日もヒートを110-106で下して3連勝。直近5試合でも4勝1敗だ。通算成績も26勝23敗と白星が3つ先行し、現時点でイースタンカンファレンス8位。7位のシャーロット・ホーネッツ(28勝23敗)には1ゲーム差、プレーオフ直接出場圏内の6位に立つミルウォーキー・バックス(29勝20敗)にも3ゲーム差に迫っている。


ポイントガードのフレッド・バンブリートと、203cmのオールラウンダー、パスカル・シアカムという主軸の活躍に加え、ギャリー・トレントJr.が5試合連続30得点以上というフランチャイズ記録(現シカゴ・ブルズのデマー・デローザンとタイ)に並ぶ爆発ぶり。ルーキーのスコッティ・バーンズとプレシャス・アチウワは、オールスターウイークエンドに行われるライジングスターズ・チャレンジのメンバーにも選ばれるハイレベルな貢献ぶりであり、スターターに定着しているOGアヌノビも力強いオフェンスを見せている。

 


ニック・ナースHCはスターターを長時間起用しすぎとの指摘もあるが、プレーヤーたちの姿勢と結果を見る限り、その起用法は奏功していると言えるだろう。また、ナースHCはシーズンを通じてその起用法にこだわる姿勢を見せているわけでもない。渡邊を含むローテーション・プレーヤーに故障や新型コロナウイルス感染による欠場が続出して前半戦を不安定なロスターで戦わざるを得なかったことを思えば、例えばオールスターブレイクまで思い切って核となる6-7人に一緒にプレーする機会を可能な限り多く提供し、勝ち星をつかみながら連携を高めようという考え方があってもまったくおかしくない。


しかもラプターズは、いわゆるセカンドユニットも強力だ。クリス・ブーシェイ、ダラノ・バントン、ジャスティン・シャンペニーらは、シーズン序盤には得点力不足を指摘されることもあったが、現在は比較的短い時間に堅実な貢献をもたらしている。この日のヒート戦でもナースHCは、数字的には“大人しかった”バントン(2得点、1リバウンド、3アシスト)やブーシェイ(17分の出場で2得点、3リバウンド、1ブロック)のプレーぶりを高く評価していた。


ラプターズの直近5試合はいずれもイーストのプレーオフ/プレーイントーナメント出場圏内のチームが相手。ヒートは上位だが、その期間に2度対戦して連勝している。ナースHCはこの結果について、「プレーヤーたちに自信をもたらす結果」と順位争い以上の価値を感じている様子だった。


日本時間1月30日(北米時間29日)のヒート戦はトリプルオーバータイムの大激戦の末に124-120で勝利したが、この試合から渡邊は出場機会を失っている。チームが好調でベンチまでを含めた各プレーヤーが好調な中、指揮官が少人数を多用する方向なことを思うと、渡邊が出場機会を取り戻すのは簡単なことではなさそうだ。


2日の試合前にナースHCは渡邊について以下のようなコメントをしていた。

 

 

「彼はにパンデミックがちょっと悪い方に作用してしまいましたね。ギャリー・トレントJr.も今は素晴らしい活躍をしていますが、コロナから元に戻すのに厳しい時期を過ごしているんですよ。」
“He’s probably on the wrong end of the Covid break a little bit. I think there was…, heck even Gary Trent, who’s playing so well right now went through a tough stretch coming out of Covid, worked himself back into it.”
「ユウタはそうする機会が持てていない状態です。私としては、もう一枚シューティング・オプションがほしいというときに、たぶん彼がそのプレーヤーになると言えると思います。大概の場合、私は彼をローテーションに入れた考えで試合に臨んでいます。最近は50-50のような感じですね。出るときも出ないときもあるでしょう」
“Yuta hasn’t really had the chance to do that. I will say this. I think we’re at times…, I think maybe one shoot…, we’d like another shooting option out there and Yuta is probably that guy. He’s probably that guy. I go into most games feeling like he’s going to be in the rotation and lately it’s been kind of 50-50. He gets out there some, he doesn’t get out there some.”


「でも彼は今でも我々のローテーションの一人です。以前の彼の40%(安全衛生プロトコル適用下となる直前の7試合の3P成功率が41.7%だった)という数字を使いたいですし、自信を持ってプレーしていた頃の姿に戻れると思っています」
“But I feel like he’s still a rotational player for us and we could use that 40% mark that he was doing earlier in the year and getting back to playing like that confident player that he can play like.”


渡邊は直近で出場した日本時間1月27日(北米時間26日)の対シャーロット・ホーネッツ戦で3Pショット2本を放ち1本成功で3得点を記録し、リバウンドも5本つかんだ。オフェンスではまだ不安定な印象もあったが、ディフェンス面ではいくつも好プレーを見せ、試合後にはナースHCも「(ディフェンスでは)ほとんどの場面で、今夜の彼は立派に対抗していました。安心してみていられましたし、良かったと思っています。(I thought he did an admirable for most of the night defensively and felt pretty good with him out there tonight, which is good)」と評価していた。

 

2日のヒート戦前、ナースHCは出場機会の減った渡邊をローテーションの一角と話していた(写真をクリックするとコメント映像が見られます)


実戦でアピールする機会がないとなかなか復調ぶりを伝えるのも難しいが、ここは我慢の時期だ。特に次戦からの3試合(日本時間4日のブルズ戦、同5日のアトランタ・ホークス戦、同8日のホーネッツ戦)は、いずれも直近の5試合で一度対戦したライバルチームが相手なので、即座に状況が変わる公算は高くないかもしれない。


ただ、ベンチでの様子を見る限り、渡邊自身は活発に声を出し以前と変わらず元気な様子だ。浮き沈みに動じず内面的な自信を維持していることは、“日本人対決”後に渡邊が話していたことでもある。これまでどおり日々の準備を続けて、チャンスがくるのをじっくり待つだけのことだ。


取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)

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