月刊バスケットボール5月号

赤穂ひまわり(デンソーアイリス) - FIBA女子ワールドカップ2022予選日本代表候補名鑑

写真/©JBA

赤穂ひまわり(デンソーアイリス/石川県/昭和学院高校)
SG/SF 184cm/71kg 1998/08/28(23歳)
☆キースタッツ
Wリーグ2021-22: 9.6P, FG50.8%, 3P28.6%, FT60.5%, 7.9R, 2.3A,1.2S, 1.1B
FIBA女子アジアカップ2021: 10.6P, FG51.3%, 3P53.8%, FT100.0%, 5.0R, 1.6A, 2.2S, 0.8B
東京2020オリンピック: 9.3P, FG48.9%, 3P25.0%, FT100.0%, 7.3R, 1.3A, 1.0S, 0.0B


東京2020オリンピックとFIBAアジアカップ2021での赤穂のプレーは、高さとフィジカルさ、運動能力、カッティングのきゅう覚、思い切りの良さ、シューティングレンジ、スタミナ、しぶとさなど、さまざまな魅力を感じさせるものだった。オリンピックでは平均7.3リバウンドがチームで1位、大会全体で8位の好成績。アジアカップでは出場時間(29.5分)、エフィシエンシー(12.0)、リバウンド(5.0)の3項目がチームトップで、このうち出場時間は大会全体の3位、エフィシエンシーも同9位だった。

 

 後者で大会MVPに輝いたのは周知のとおり。攻守両面でのオールラウンドな活躍と、激戦・接戦続きだった全5試合を戦い切った貢献度の高さにふさわしい栄誉だった。この快挙を成し遂げたからということではないが、WNBAを含む世界のプロリーグに所属するチームの中に、赤穂獲得を希望するチームが複数あってもまったく不思議には思わない。


赤穂はまた、この1年間の代表活動を経て最も成長したプレーヤーの一人でもある。それは赤穂本人の言葉からも感じることができる。オリンピックでは「お姉さん方(年長の先輩プレーヤーたちを愛着も込めてこう呼んでいる)の後ろについていっただけで、やりたいこともやらせてもらって何も考えずにやれていた」という。しかしアジアカップで引っ張る立場を経験したことで、「(恩塚 亨HCのあらたなスタイルの中で)お姉さん方のわかっていないところを私たちがしっかり伝えていけたらいいなと思います」と、意識の持ち方が変わってきた。

 

東京2020オリンピック決勝戦での赤穂(写真/©fiba.basketball)

 


さらなるレベルアップに向けた挑戦意欲も強く、さまざまなワークアウトに楽しみながら取り組めているようだ。プレーに余裕ができて自分らしさを出せるようになったことを実感しており、それに伴って「はじめのうちは限られた時間で言われたことをやりながら、ミスをしないように頑張ろうという意識でやっていたんですけど、今はどちらかというと、どのくらい自分のプレーが通用するのかなというのも楽しみながらできている」のだという。「どのポジションでもできるというのが私の強みでもあると思うので、どこでも誰よりもチームに必要とされるような選手でありたいと思います」


こうした赤穂のコメントを聞き、東京2020オリンピックでのプレーの中で、特に2つのシーンが思い起こされた。どちらもアメリカ代表との決勝戦でのものだ。


そのうちの一つは第1Q残り7分12秒のプレーで、ミドルポストで身長193cmのパワーフォワード、ブリアナ・スチュアートを背にポストアップして勝負したシーンだ。ボールを受けた赤穂は、力強いバックダウンドリブルから1歩押し込んでターンし、左手でベビーフックを狙った。スピードもあり、相手を背負ってうまく体を預け、ふわりと柔らかくゴールを狙うナイスプレーと思われたこのショットだったが、高さも俊敏さも備えたスチュアートの長い腕がボールの軌道を阻む。


リズムなのか、体の預け方や押し込みが甘かったのか、ジャンプした方向なのか…。いずれにしても、このプレーはワールドクラスとは言えないのだということをスチュアートのクリーンブロックは示していた。

 

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もう一つは前半終了間際の残り4秒に、アメリカ代表の勢いを断った思い切りの良い3Pショットだ。このショットまでの約4分間、日本は7-14のランを食らい36-50と14点差を引き離されていた。しかし苦しい場面で、町田瑠唯のドライブ&キックからのパスを受けて放ったキャッチ&シュートのボールがみごとゴールを射抜いた。


200cm前後のフロントラインのプレーヤーたちにとって、終始素早い動きで終始ペリメーターに引っ張り出され続ける日本代表との対戦は非常に厳しいチャレンジとなる。これはスチュワートも含め、アメリカ代表のプレーヤーたちがそろって口にしていた日本代表に対する印象だ。このエリアを赤穂が強みにできれば、そのまま世界に通用するプレーヤーということだろう。


赤穂がこの試合で成功させたフィールドゴールは、実はこの1本だけだった。しかしこの1本は、世界に通用する自分を実感させたのではないだろうか。「オリンピックで銀メダルを獲ったことによって、世界が相手でも日本は戦えるということが証明されました。ワールドカップでもしっかり結果を残していかないといけないと思います」と赤穂は今回の代表活動に対する抱負を語った。高い意識にも実際に世界で戦って掴んだ自信が現れている。

 


文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)

東京2020アメリカとの決勝戦

赤穂のシュートはスチュアートにブロックされる

©fiba.basketball

 

 

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