月刊バスケットボール6月号

NBA

2022.01.27

渡邊雄太への「スペーサー」にとどまらない期待

 Gリーグ公式戦に出場した翌日の試合で、渡邊雄太(トロント・ラプターズ)が久しぶりに3Pショットを1本成功させた。125-113でシャーロット・ホーネッツに勝利したこの一戦で、3Pショット2本中1本成功の3得点に5リバウンド。まだ不安定な印象もあるものの、日本時間1月3日の対ニューヨーク・ニックス戦以来のフィールドゴール成功には本人もホッとしたのではないだろうか。

 

 

 

 成功させたのは第2Q残り7分15秒すぎの最初のアテンプトで、OGアヌノビーからのパスを受けてのキャッチ&シュートだった。Gリーグで40分近くプレーした効果で、調子が上向いていることは間違いない。この試合が終わった後の会見で、ニック・ナースHCは渡邊のオフェンスについて以下のようなコメントをしている。

 

「まず、彼が出場して最初のアテンプトを3Pエリアから決めてくれたのが素晴らしかったですね。何よりもオフェンスでは、彼がプレーするラインナップの中で“スペーサー”になってもらいたいと思っているので、その形になって良かったです」
“First of all, it was great to see him come in there and hit the first attempt from three, right? I think first and foremost at the offensive end he still gonna have to be a spacer for us in our line-up that he plays with. So that was good to see.”

 

ホーネッツとの試合後の会見でのナースHC(写真をクリックすると、試合前後のインタビューな映像が見られます)

 


これまでも渡邊はスペースを広げる役割を担っていたが、そうなるためにはショットメーカーであることが大前提だ。待望の1本が来たと同時に、この試合での渡邊はコーナーでボールを受けドライブを仕掛けてパスをさばくシーンもあり躍動的だった。そうしたプレーを見せられたことで、安全衛生プロトコル適用を脱した後としては最長の22分16秒の出場時間を得ることができた。


得意のディフェンス面では、ラメロ・ボールのレイアップに襲い掛かりミスさせるシーンもあり、ファウルが早い時間に3つに達したのは要注意事項だが、ナースHCはその点を意に介してはおらず、以下のように話していた。


「彼はディフェンス面では頑張っていました。ファウルがいくつかあったのは承知していますが、オーケーです。ハードプレーの結果ですよ。相手は本当に体制を低くして強いドライブを仕掛けてきていましたから。でもほとんどの場面で今夜の彼は立派に対抗していました。安心してみていられましたし、良かったと思っています。日本のファンも今朝は大丈夫だといいのですが…(笑)」
“You know I think he played really hard on defense. I know he got some…, a few fouls and that…, but it’s okay. That’s just coming through hard play. They were really putting their head down and driving the ball hard. But I thought he did an admirable for most of the night defensively and felt pretty good with him out there tonight, which is good. I hope everybody in Japan is okay this morning over there.”


試合終了までの最後の約3分間に時間をもらった際には、やや気負ったかマラカイ・フリンとのハンドオフプレーでボールを失うシーンもあり、フリースローを2本ともミスするなど、まだまだ本調子とは言えない。しかし3Pショットのもう1本のアテンプトもこの時間帯で、最後まで積極性を感じさせていた。


ディフェンス面とハッスルによる貢献は大前提として、27日のシカゴ・ブルズ戦以降で1本1本良いアテンプトをして高確率で決めることが、渡邊にとっては次のステップであり何より重要だろう。また、ファウルに関するコンセプトとルールが大きく変わった今シーズンに関しては、ドライブした際にペイントまで到達する前に、ミドルレンジでショットを決められることも、信頼を高める要素になるのかもしれない。

 


ブルズ戦だけではなく、これは毎試合の積み重ねだ。勝率5割でプレーイントーナメント圏内からさらに上を目指すラプターズのプレーヤーたちは、高確率のショットメーカーをパスのターゲットに選択して当然だ。現時点ではあまり回ってきていないボールが回ってくるようになるだろう。難しい仕事だが、我慢強くスペーシングを継続してパスを待ち、いざ来たときに1本1本決めていきたいところだ。

 

 安全衛生プロトコル入りする直前までの7試合では、3Pショット成功率が41.7%と高確率だった。その能力とGリーグ行き志願にも象徴される渡邊のバスケットボールへのアプローチに、ナースHCが期待を込めているのは明らか。だからこそ得られている機会の中で、20分以上の出場時間で2本にとどまっているショットアテンプトが増やせるように、チームメイトからの最高レベルの信頼を再び勝ち取るのが、ここからの渡邊の挑戦だ。


取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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