月刊バスケットボール5月号

NBA

2022.01.24

渡邊雄太(ラプターズ)2試合連続出場も無得点 - 「1本決めることが何より必要」ナースHC語る

 日本時間1月24日(北米時間23日)にトロントのスコシアバンクアリーナで行われたトロント・ラプターズ対ポートランド・トレイルブレイザーズ戦で、渡邊雄太が2試合連続出場を果たした。前半最後の1分49秒間コートに立ち、フィールドゴールや得点はなく±が+2という結果だった。ラプターズは特に序盤に元気がなく、渡邊が登場した前半残り1分49秒時点でのスコアは30-62という大量ビハインド。前半の得点は今シーズン最少の34にとどまり、第4Qに一時4点差まで追い上げたものの、逆転勝利はかなわなかった。

 

 

 

 渡邊は、ディフェンスリバウンドを競い合ったシーンで相手のナシール・リトルがボールをつかみかけた瞬間にうまくプレッシャーをかけボールを取り返す好プレーもあった。しかし、このところ攻守に絶好調のクリス・ブーシェイや、ラプターズ905のメンバーとしてGリーグで26.9得点のアベレージを残して戻ってきたダラノ・バントン、要所での3Pショットとオフェンスリバウンドで堅実な貢献をもたらし続けているジャスティン・シャンペニーらバックアップが活躍したこともあり、後半は出場機会を得ることはできなかった。


ラプターズのベンチは、主力が新型コロナウイルスの安全衛生プロトコルから戻ってきた1月中旬以降、それまでと異なるローテーションになっている。特に渡邊が新型コロナウイルスの安全衛生プロトコル適用下に入った一方で、ブーシェイとシャンペニーの貢献ぶりが著しいことがその大きな要因だ。渡邊はスビ・ミハイリュクとともに出場時間を十分に得られない立場となってしまった。

 

 ただ、2日前のウィザーズとの試合で出場するまでの2試合で出場機会をまったく得られなかった状態からは一歩前進だ。ラプターズのニック・ナースHCは試合前の会見で、渡邊について「試合でリズムに乗って1本決めることが必要なだけです(I think he just needs to find an open shot in the game and knock it down)」と話した。全体としても以下のとおり、渡邊の復調についての期待感を語っている。


「ここしばらく彼と話しているのは、スペースを取り続けてボールが回ってきたら狙っていけ、それを期待している、現時点では何よりそれが必要だ、ということです。プレーメイクやカット、ドライブ以上に、スペースを取ってボールが来たら決めてほしいです。練習中、トレーニング中は調子が良さそうで、リズムよく高い確率で決めています。なのでそんなに遠くはありません。今夜にも決めてくれるといいんですが…。今夜くるかもしれないですよ」
“Because some of the discussions I’ve had with him over the last couple games is to continue to space and if the ball is swung around to him, make sure to shoot it. Because I said we’ve gotta have that from you. I mean at this point we need that more than we need his playmaking, or his cutting or his driving or anything and we just need him to keep the floor space to when he comes down to him, knock them down. He looks really good in training. You know he’s really shooting high percentage and making shots in a rhythm when we’re practicing and things like that so…. I’m sure it’s not too far away. Hopefully today…, Hopefully today.”

 

渡邊について「1本決まってくれれば…」というナースHCの言葉は本音だろう(写真をクリックするとインタビュー映像が見られます)

 


この日ナースHCは10人のプレーヤーを起用した。ウィザーズとの試合まで続いた遠征では7-8人程度の核(フレッド・バンブリート、パスカル・シアカム、OGアヌノビ、スコッティ・バーンズ、ギャリ―・トレントJr.、プレシャス・アチウワに、ブーシェイとシャンペニーまでを加えた顔ぶれ)が出場時間の大半を占めていたが、このメンバーに鼻の骨を折って欠場中ケム・バーチ、渡邊、バントンまでを加えた11人が、ナースHCが現時点で期待を寄せる存在であることが感じられる。渡邊とともに安全衛生プロトコル入りし、渡邊よりも速く復帰したミハイリュクは、直近3試合で出場機会がなく、ポイントガードの控えであるマラカイ・フリンは、直近10試合で2度しかコートに立っていない。


ブレイザーズとの試合ではブーシェイが11得点に9リバウンド、バントンが5得点と4リバウンド、シャンペニーも3Pアテンプト2本をいずれも成功させての6得点と、それぞれが存在感を示した。チームメイトとして喜ぶべきことであると同時に、渡邊自身も同じように、機会を生かしてスポットを奪い取りたい思いが当然あるだろう。厳しい状況なのは間違いないが、この状況を跳ね返してこそNBAにいる資格があるということも、本人が一番わかっていることだ。

 

 2日前の“日本人対決”後の会見で、渡邊は内面的にそわそわしたような状態ではないことを明かしていた。自信もありやることはわかっている。この日のオフェンスでも、指示通りワイドオープンで3Pショットを狙える状態は作れていた。待望のスウィッシュの瞬間は、ナースHCが言うようにそう遠くはないだろう。

 

日本人対決が実現した日本時間1.22対ワシントン・ウィザーズ戦後の会見映像


取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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