月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2022.01.20

琉球ゴールデンキングスが初の天皇杯4強入り

 1月19日に沖縄アリーナで行われた第97回天皇杯全日本バスケットボール選手権大会準々決勝で、琉球ゴールデンキングスが信州ブレイブウォリアーズを91-67で下し、クラブ初の天皇杯4強入りを決めた。ベスト4の顔ぶれは昨シーズンのBリーグチャンピオンである千葉ジェッツ、昨年の天皇杯の覇者である川崎ブレイブサンダース、宇都宮ブレックス、そして琉球となった。琉球は2月9日(水)に、船橋アリーナで行われる準決勝で千葉ジェッツと対戦する。

 

マッチアップする大崎裕太(左)と並里 成(右)。両チームとも万全とは言えなかったが、この2人をはじめ出場したプレーヤーたちは随所に好プレーを見せていた(写真/©JBA)


琉球ゴールデンキングス91-67信州ブレイブウォリアーズ
琉球 91(29 21 25 16)
信州 67(17 15 19 16)

 

 

 

琉球を勢いづけた今村、岸本の3Pショット


この試合に臨んだ両チームは、新型コロナウイルス感染拡大の影響を強く受け、琉球が9人、信州が8人のベンチ入りでティップオフを迎えた。当初予定の1月5日から2週間遅れで、会場は無観客。熱狂的なブースターで客席が沸く普段の様子とは異なる沖縄アリーナで、それでも序盤から良い流れに乗ったのは琉球だった。ジャック・クーリーのフリースローで先制すると、今村圭太の3Pショットと速攻でのレイアップ、さらには岸本隆一の3Pショットが炸裂し、開始から2分半で10-2と優位に立つ。


信州はヤン ジェミンがアグレッシブなリバウンドでチャンスを作るが得点を伸ばせない。逆に琉球は第1Q残り1分41秒、アレン・ダーラムが並里 成からのパスでアリウープを決めたところで27-9と一方的な展開に持ち込んでいた。信州は三井利也と井上裕介の3Pショットなどで、このクォーター終了時点で12点差まで追い上げるが、序盤の劣勢が最後まで響く展開となった。

 

Bリーグの12月度の月間MVPに選出されたアレン・ダーラムは、この試合で16得点、5リバウンド、4アシストと2スティールとオールラウンドな貢献ぶりだった(写真/©JBA)

 

 琉球は特に前半、岸本と今村を中心に3Pショットが好調で、ハーフタイム時点での成功率が43.8%と高確率。また、試合を通じてトランジションでフロントラインのプレーヤーたちが思い切りよく攻め上がり、並里からのタッチダウンパスを受けて得点する場面もたびたびあった。パンデミックの影響で練習をできずに迎えた試合とは思えないほど、本来のキングスらしさが随所に見られる内容だった。


50-32の琉球リードで始まった第3Q序盤には、クーリーのダンク成功かと思われたボールがネットの底から飛び出し無得点という珍事もあった一方、信州が前田怜緒のドライビングレイアップなどで加点。またこのクォーターの残り4分過ぎからは井上、熊谷 航、井上と3Pショットが3本連続で決まり、信州が良い流れを作りかけた時間帯があった。しかし普段とは異なるメンバーでの戦いは不安定さを払しょくできず、最終的に点差を24点まで広げられて試合終了となった。

 

11得点、7アシスト、1スティールを記録した熊谷 航。健闘及ばず6強で敗退となった(写真/©JBA)

 

 琉球はこの試合で、クーリーが18得点に14リバウンドのダブルダブルを記録したほか、ダーラム16得点、今村14得点、岸本12得点、ドウェイン・エバンス11得点と5人が得点を2ケタに乗せた。並里は7アシストが信州の熊谷と並ぶゲームハイで得点も7。信州ではジョシュ・ホーキンソンの17得点を筆頭に、井上と前田が12得点、熊谷は前述の7アシストに加え11得点、1スティールを記録した。アジア枠のヤンは、得点こそ6にとどまったが14リバウンドで大いに気を吐いた

 


☆試合後コメント

 

©JBA

桶谷 大HC(琉球)
チームとしてなかなか練習ができなかった状態で、インサイドとアウトサイドのバランスなどよりも、選手の疲労やコンディションを考えながらのローテーションになってしまったので、選手も本当にやりにくい、いつもと違うリズムでやらなければいけなかったと思います。その中でもしっかりこうして結果を残してくれる選手たちを、本当に頼もしく思います。
欠場者もいた中で、今こそ自分たちがやらないといけないというメンタリティーを持った選手がキングスにはたくさんいて、それが今日みたいなゲームにしてくれたんじゃないかなと思います。
ゲームの内容は、なかなか点数以上に厳しい部分もあったと思います。それでも久しぶりの試合で勝ち切ってくれたこと、天皇杯でベスト4に入ったことを素晴らしいと思います。このしんどい状況でつかんだベスト4を無駄にしないように、次の天皇杯もしっかり戦いたいなと思います。


――3Pショットが特に前半好調だった要因
やっぱり沖縄アリーナのホームで試合をできるということです。ここで選手たちは今シーズンずっと試合をさせてもらっている。この大きな空間の中で試合をするというのは、相手チームにとってはすごく難しいことで、自分たちはそこで慣れているからこそ、個の力が発揮できたんじゃないかなと思います。


――トランジションでの動きも良かった理由
なんですかね?(笑) 休み明けで試合勘がないので、正直3Pショットが入らない、トランジションも走れない想定をして、そういうゲームになる可能性があると考えてゲームプランを組まなければいけないと思っていました。しかし本当に3Pショットも入ったし、相手に3Pショットを3本連続で入れられましたが、そこからディフェンスでストップでき速攻につなげられた。本当に選手たちが、なんというか、自分たちの勝ち方をわかってきたのかなと思います。
3Pショットも、ボールが回ってインサイド・アウトサイドのパスが出てのものなので、シューター陣も打ちやすいのかなと。本当に休み明けなのでどうかな…と思っていたんですけど、キングスのバスケットボールを思い出しながら、選手たちが自己犠牲を払いながらプレーしてくれたなと思います。

 

 

©JBA

勝久マイケルHC(信州)
8人で挑む非常に厳しい状況で、8人でよく頑張ったともちろん言いたいです。とても頑張ったシーンもいくつもありました。でも反省点もとても多く、人数に関係なしにやるべきことをやれないといけないというところがたくさんありました。反省しながらも、すぐ次のレギュラーシーズンの試合に切り替えたいと思います。
我々としては初めて天皇杯でここまで勝ち上がって、全力で戦えなかったことは非常に悔しいです。また来年チャレンジしたいという気持ちです。
ただ今回の8人は、少人数だからこそやらないといけないという思いを強く持って、準備段階からいつも以上にオーナーシップと責任感を持って中でしゃべっていたり、リーダーシップのポテンシャルを持っている人間がステップアップして、試合の中だけではなく準備段階からリーダーシップをとったりとポジティブな要素もあったので、シーズンの後半戦につなげていければと思っています。


――第3Qの展開について
一時的に良いプレーからしっかりチームでクリエイトし、遂行力を発揮して3Pショットが決めきれたというのがありましたけど、ゲームを通してチームでシュートを作る際に1対1が多かったり、ドライブ&キックが少なかったり、ボールムーブメントが少なかったり、サイドバイサイドが少なかったり。遂行力が決して高くなかったです。
ゲームを通してあの場面の遂行力だったら、シュートが入ったり入らなかったりはあっても安定してよいシュートが生まれると思うんですけど、一つの場面、ちょっとしたタイミングでしか続かなかったです。
それと今日はタイムシェアを絶対に守りたかったので、勢いを引っ張ってくれていた熊谷選手を交代させたことも関係があると思います。


――年明けからのパンデミックについて
コロナ禍での対応に関しては、普段は皆気を付けてリーグの指示通りの検査や行動に気をつけながら過ごしていますけど、今回に関しては本当に難しかったです。誰もが初めてな状況の中で、ガイドラインなどありません。チーム内で話してベストだと信じることを自分たちで決めて、進んでいくしかないと思っています。今回この人数で挑んだというのも悔しいですし、残念ですけど、さまざまな理由でこうなりました。チームが一つとなって物事をやっていくのもチームだと思いますし、個々の思いや家庭の事情、家族の健康など一人一人のいろんなものをリスペクトするのもチームだと思います。
なので今回は本当にいろいろと難しくて、それぞれの思いを尊重する。ガイドラインがないので、自分たちが信じていることを話し合ってやるしかないという考えで物事を進めてきました。
※信州には陽性者は出ていないとのコメントもあった。

 

 

©JBA

前田怜緒(信州)
――天皇杯準々決勝進出について
僕自身プロキャリア2-3年ぐらいで、天皇杯のベスト6まで来たことはなかったので、ここまで来られたのをうれしいと思います。レギュラーシーズンと天皇杯を一緒にやってきて、違った雰囲気でやる試合も多々ありました。一人一人の意見は本当に尊重しますけど、優勝を目指してやってきたので、悔しい気持ちがすごくあります。

 

©JBA

岸本隆一(琉球)

――特に前半、チームとしても自身としても3Pショットが入った要因
試合の入りでオフェンスが思いのほかスムーズでした。個人で打開してというよりも、きちんとノーマークを見つけてオープンショットを作り出したということが、今日は良かったと思います。オフェンスに関していえば、そこが今日勝てたポイントだったんじゃないかと思います。試合が空いた中でも、レギュラーシーズンに積み重ねてきたものが生きる試合だったなというのを、今振り返ってすごく感じています。


――試合がなかった期間の様子
一般的に言われている感染予防がはやり一番先でした。僕の場合結構いい方に捉えるタイプなので、家にいてもちろんもどかしさはあるんですけど、逆にふいに訪れた休みだと思って、家族とできる範囲で家の中で過ごしていました。

 

 

©JBA

今村圭太(琉球)

――特に前半、チームとしても自身としても3Pショットが入った要因
本当に準備する期間が短かったので、個人的にもなかなかシュートは入らないんじゃないかと予想していたんですけど、やはりシーズン中やこれまでのバスケットボール人生で、シュートは僕が意識してやってきたことでもあったので、そういう積み重ねがあったからこそ今日それが生きたかなと。家でボールを触ったり、イメージトレーニングをするぐらいしかできていなかったんですけど、自分が大切にしてきたことが今日こうして結果として出たんじゃないかなと思います。


――キングス初の天皇杯4強入りについて
僕が入団する前からなかなか天皇杯で結果を出せていないという状況だったと思います。でも、初の4強入りを僕もチームもあまり深く捉えていないと思います。レギュラーシーズンも一発勝負の重みがある天皇杯も、1試合を通して自分たちのバスケットボールができればおのずと結果がついてくるということを、選手もスタッフも全員が共通認識としてできているのが今のチームの強みです。4強入りは本当に素晴らしいことだと思いますが、深く考えずに同じマインドでやれていることで、良いバスケットボールを生み出しているんじゃないかと思います。

 

取材・文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)



PICK UP