月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2022.01.18

公立学校教員のBリーグチャレンジ – B.DREAM PROJECT 2022 Special Feature

 1月10日にアリーナ立川立飛で開催されたB.DREAM PROJECTに、コーチ志望者の一人として参加していた高岡コーチ(仮名)は、公立学校に勤める30歳代の教員だ。外国語を専門に学ぶ大学を卒業した英語教師であり、バスケットボールを始めたのは高校生から。初任の学校でたまたまバスケットボール部の副顧問を引き受けたことで、青春の1ページをくれたバスケットボールへの愛情が少しずつ、そして以前よりも大きく膨らんだ。


公益財団法人日本バスケットボール協会公認B級コーチの資格にたどり着き、更なる夢はBリーグでのコーチング。B.DREAM PROJECTの価値を体現する挑戦にどのような情熱を燃やしているのか、話を聞かせてもらった。



B.DREAM PROJECTではプレーヤーだけでなくコーチの立場でも、若々しいチャレンジャーがエントリーしていた(写真/©B.LEAGUE)



向上心からJBA公認B級資格獲得


――志望動機の中に、「私のようなキャリアの者が…」という記述がありますが、具体的にはバスケットボールとどんなかかわりを持って生きてこられたんですか?


Bリーグにかかわる方は、バスケットボール界の有力大学出身者とかトップ選手が中心ということだと思うんですけど、私がバスケットボールを始めたのは高校から。普通の公立高校でキャリアとしても足りないし、コーチも教員になってから始めたので、エリートの世界は縁遠い存在でした。そこから著名コーチのクリニックにいくようになり、今に至るという感じです。


――B級公認の資格をお持ちですね。取るのは大変だったと思います。


そうですね。若い頃はさまざまな道を考えたこともありました。でも最近は年をとったこともあり、より良いコーチになりたいなというような思いが強くなっていました。その結果として自然にこの資格が取れました。地元の協会の方々にも、これまで練習を見させていただいたりクリニックで教えていただいたコーチの方々にも、大変感謝しています。


――教員としてコーチになったきっかけはどんなことだったのですか?


初任で勤務した学校で、バスケットボール部の副顧問を任されたのがきっかけです。そこからコーチングを通じて、バスケットボールのおもしろさを再発見しています。


――コーチングの良いところ、素晴らしいと感じるところはどこですか?

 

 昔、同じような質問を先輩のコーチにしたことがあります。やっぱり、自分の考えとかを選手に伝えていくことによって、選手が変わっていく、自分の何かがチームに伝わっていると感じられることがおもしろいですね。


――成長を感じられるような…?


そうですね、そのとおりです。


キャリアの引け目を払しょくし、Bの舞台を目指して邁進


――外国語を学ぶ大学のご出身とのことですが、当然語学が専門ですよね?


そうですね、第二言語は英語で、学校でも英語の教師です。人生は本当にわからないものですね。


――バスケ一筋の方々とちがうチャレンジがコーチとしてあるように思うのですが、いかがですか?


やっぱりこういう機会に初めて参加したときに、最初はすごく緊張しました。自分のキャリアに自信がなかったために、初対面で接する選手たちにも逆に高圧的になってしまったりしたのではないかと、申し訳ない気持ちにもなりました。


でも、強豪校の方々が多くいらっしゃるのは事実なんですけど、今日参加されている方々もそうですが、キャリアがさまざまで必ずしもバスケットボール一筋の方々ばかりではないことがわかってきました。皆さんと知り合い、仲良くさせていただくうちに、心にゆとりを持ちながらこういった機会に参加させてもらえるようになりました。

 

――プロになるために何かしていることはありますか?

 

 プロバスケットボールの世界は、私にとって以前より近い存在になりましたが、まだまだ遠い存在でもあります。だから今は、より良いコーチになれるように著名なコーチの方々がやっているたくさんのウェビナーなどの機会に参加したり、それが近くで開催されるなら実際に足を運びながら、ユースレベルからプロのコーチとつながりを持つようにして、バスケットボール界のいろんな方々とつながれるようにしています。


――いつかBリーグで取材できることを楽しみにしています。


頑張ります!

 


プロコーチとして地元を元気にしたい。さまざまなカテゴリー、さまざまな環境を横断し、豊かな経験を持つコーチになりたい。日本のバスケットボール界を一つにつなげたい。高岡のB.DREAM PROJECTへの志望動機をまとめた資料には、この3点が書かれていた。

 

 B級資格取得に向けた講習会では、出会った人々が皆、カテゴリーや所属と無関係にバスケットボールへの愛情を表現していると感じた。その一方で、教育現場でのコーチングを通じて体育連盟、クラブチーム、Bユースという異なるカテゴリーの連係がさらに良くなれば、魅力的なタレントの育成がより促進されるだろうという肌感覚を持っている。


自身のこれまでのキャリアにプロを目指す経験、実際にプロでチームを率いる経験を加えることで、日本のバスケットボール界が一つのファミリーとしてさらに強くなる助けができるかもしれない。結果として地元のコミュニティーを元気にできるに違いない。そうしたい。


夢を語り、力強く追いかける教員コーチ。その姿が、指導する立場でかかわる若者たちにさらに大きな夢を語ることだろう。


取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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