月刊バスケットボール5月号

今月の逸足(CLASSIC KICKS)Vol.11-2

  JORDAN MELO M8 ADVANCE OLYMPIC ジョーダン メロ M8 アドバンス オリンピック   文=岸田 林   (つづき) そんな矢先、9月下旬にウェストブルックがジョーダンブランドと10年間の契約延長に合意したことが報じられた。金額は明らかにされていないが、今回の契約で、彼はジョーダンブランド史上もっとも高額の契約金を手にする選手となるようだ。報道によれば、この契約には引退後のブランドアンバサダーとしての活動なども含まれるという。ひとまずウェストブルックは今季「エア ジョーダン32 PE」でプレーし始めるが、いずれ、これまでのジョーダンブランドのシューズとは全く異なるシグニチャーモデルが登場する見込みで、ナイキとしては、28歳のウェストブルックをジョーダンブランドの新しい「顔」にしていきたいということだろう。   おりしもナイキは、北米を中心に昨年からビジネスの曲がり角を迎えているといわれている。証券会社モルガンスタンレーのレポートでも、全米有数のアパレル数を扱うフットロッカーのCEOが「特定のジョーダンモデルの消化率が過去と比較して著しく悪い」と言及。ファッショントレンドの変化により、ボリュームのあるバッシュよりもスリムなシルエットのシューズのほうが人気を集めており、製品ラインナップの刷新が急務となっている。ブランド設立から20年、メロが契約してから14年を迎えるジョーダンブランドも、これまで通りであるという保障はどこにもないのだ。   それでも、メロが残してきた実績を見過ごしてはならない。キャリア14シーズン全てで平均20得点以上を記録している生粋のスコアラーで、12-13シーズンには得点王にも輝いている(平均28.7得点)。また12年のロンドンオリンピックでは、僅か14分29秒の出場となったナイジェリア戦で37得点をマーク。この37得点はアメリカ代表選手が記録した1試合における最高得点記録となっている。その点で、今回紹介している「ジョーダン メロ M8 オリンピック」は、メロにとってもお気に入りの一足と言っていいだろう。また、ウェストブルック、ジョージと豪華なチームメイトがいる中、NBAにおける1試合最高得点ではメロの62得点(14年1月24日のホーネッツ戦)がトップで、得点力、そして爆発力はいまだにリーグ有数だと言える。   この夏、パーカーのフードを頭からスッポリかぶって練習する様子が注目され『フーディメロ』の愛称が定着したメロ。入団会見やオフィシャルフォトの撮影時にもフードをかぶるサービスぶりでメディアをにぎわせ、SNSでは#HoodieMeloが「自分の目の前のことだけに集中する」といったニュアンスのスラングとして拡散した。選手として、またジョーダンブランドを背負ってきたアスリートとして正念場を迎える今季、メロは目の前のことだけに集中し、チームメイトとケミストリーを構築できるのか。メロにとって、勝負の年であることは間違いない。 (おわり)   写真=山岡邦彦 (月刊バスケットボール)

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