月刊バスケットボール5月号

祝!! 初来日記念!! カイリー・アービング ストーリー Part.3

祝!! 初来日記念!!

THE STORY OF KYRIE IRVING

カイリー・アービング ストーリー Part.3

  オールスター選出4度(2014年にはMVPを獲得)、NBAチャンピオン(2016年)、 そして世界大会2度の金メダル(2014、16年)と、25歳ながらすでに輝かしい功績を 残すNBA屈指のスコアリングガード、カイリー・アービングが7月21日(金)に日本へ やって来る。現役NBA選手さえも憧れる、その華麗なボールハンドリングや シュートのテクニックなどを目の当たりにできるクリニックは必見。ここでは来日を 記念し、5回に分けてカイリーのストーリーをお届けしていく。第3回は、NBA デビューから3シーズン、2014年までを見ていこう。 Photos by Yasutaka Ishizuka    

2011年のドラフトにて

全体1位でキャバリアーズに入団

  2011年のNBAドラフトは、キャバリアーズが全体1位でカイリー・アービング、 同4位で現在先発センターを務めるトリスタン・トンプソンを指名した。 なぜ30チームもありながら、キャブズが全体1位と4位指名権を持っていたのか? そこにはNBAならではのシステム――ドラフト指名権のトレード――が背景にある。   11年2月24日、クリッパーズとキャブズによるトレードがその発端だった。キャブズは バロン・デイビス(元ウォリアーズほか)とクリッパーズが持つドラフト1巡目指名権を 獲得し、クリッパーズはモー・ウィリアムズ(元キャバリアーズほか)とジャマリオ・ ムーン(元ラプターズほか)を手に入れた。するとシーズン終了後のロッタリー (抽選)で、クリッパーズの保持していた指名権が全体1位指名に。こうして キャブズは現在の主力2選手を、このドラフトで獲得することとなったのだ。   同年のドラフトにはケンバ・ウォーカー(9位指名/現ホーネッツ)やクレイ・ トンプソン(11位指名/ウォリアーズ)、カワイ・レナード(15位指名/スパーズ)が いたものの、カイリーのスコアラーとしての才能は頭一つ抜きん出たものとして 評価されていた。   当時のキャブズは10年夏にレブロン・ジェームズ(現キャブズ)がヒートへ移籍 したこともあり、10‐11シーズンはイースト最下位の19勝63敗。10年12月20日からは 屈辱の26連敗を喫するなどドン底で、スター選手を求めていた。 そこに現れたのがカイリーで、ルーキーシーズンはケガなどによって15試合を 欠場したものの、平均18.5得点、5.4アシストを記録し新人王に輝く。そんなカイリーが 残した1年目のスタッツで目を引いたのは、新人離れした高精度なシュート力。 フィールドゴール成功率は46.9%3Pシュート成功率も39.9%とルーキーとしては 上々の数字。当時ヒートに所属していたレブロンが「カイリーは年齢を超越している。 すばらしい選手だ。リーグにはすばらしいポイントガードが沢山いるけど、キャブズも ようやく手に入れたようだね」と絶賛するほどの選手だったのだ。   その後、12年夏にはロンドン・オリンピックに出場するアメリカ代表の練習相手の チームとして選ばれ、コービー・ブライアント(元レイカーズ)と1オン1を したカイリー。「今思うと、短い時間だったとはいえ、信じられないくらい充実した シーンだったよ」と当時を振り返っている。

シーズン中でもコービーと熱い戦いを演じたカイリー。チームが強くなかったため露出こそ少なかったものの、そのスキルの高さには定評があった     そして翌12‐13シーズンには、コーチ投票によってオールスターに選出されたカイリー。 試合では15得点をマークしてみせた。 だがこの年、カイリーが最も注目を浴びたのは、ライジングスターズ・チャレンジに おける“アンクルブレイク”だろう。試合時間残り約分、ブランドン・ナイト (当時ピストンズ)をレッグスルーやバックビハインドのクロスオーバードリブルで 揺さぶり、ステップバックジャンパーを鮮やかに決めたのだ。その華麗なボール さばきに観客は驚嘆し、ナイトは前に跳ぼうとしたものの、バランスを崩して倒れ 掛かってしまったほど。しっかりとショットを決めた後に、人さし指を口元にあてた 「これでおしまいだね」といったジェスチャーは、08年の北京オリンピック決勝の スペイン戦終盤にコービーが見せたそのものだった。

13年のオールスターで最も印象的なシーンの1つがこちら。カイリーのジェスチャーも相まって、世界中に広まった       翌13‐14シーズン。カイリーはファン投票でオールスターに先発出場し、31得点、 14アシストと申し分ない成績でMVPに選出される。様々なフェイクやムーブを 織り交ぜてドライブにジャンパーに3Pシュートにと暴れ回り、キャリア3年目にして オールスターMVPを獲得。「今夜は間違いなくスペシャルな日になりました。 リーグを代表する選手たちと一緒にプレイした中で、このような賞を頂けて光栄です」と カイリー。チームメイトとしてプレイしたレブロンは「カイリーはスペシャルな選手 だね。シュートに持ち込むまでの能力、リング付近におけるフィニッシュ、 そしてペリメーターからドライブするスキルなど、すばらしい選手。 とてもスマートだ」というコメントを残している。

今思えば2014年オールスターにおけるカイリーのMVP獲得が、レブロンのキャブズ帰還時期を加速させたと言っても過言ではない     順風満帆に見えるカイリーのNBAキャリアだが、彼への評価は大きく二分されていた。 確かにシュート力やボールハンドリングには目を見張るものがあるが、ケガもあって、 キャリア3シーズンのうち、全試合出場は一度もなかったのだ。そして何より、チームを 勝たせることができていなかった。カイリーが入団してからの3シーズン、キャブズは 78勝152敗(勝率33.9%)と勝率5割にも程遠く、プレイオフ出場は一度も果たせずに いたのだ。チームメイトの中には「(カイリーは)自分が目立つためだけにプレイして いる」といったネガティブな意見を言う選手もいたほどだ。 ところが、14年夏にNBAとキャブズ、そしてカイリーのキャリアは、1人の男の 決断によって、大きく好転することとなる。

得点面でチームをけん引するも、13-14シーズンまではなかなか勝利に結び付かなかったことで、チーム・ケミストリーも良好ではなかった       ※次回は7月12日(水)に更新予定

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