月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2017.10.06

【B.STARS Vol.2】折茂武彦(レバンガ北海道)

リーグ最年長、47歳のスコアラー! 前人未到の1万得点も見えてきた!!   レバンガ北海道#9/190cm/SG/1970年5月14日生まれ/日本大  

    日本のリーグ変遷を知るレジェンド    野球の山本昌広(元中日/2015年に50歳で引退)、サッカーの三浦知良(現横浜FC/50歳)といったように、スポーツ界にはそれぞれのジャンルで活躍するレジェンドがいるが、バスケットの現役レジェンドと言えば、今年で47歳になる折茂武彦だ。この折茂、昨年、歴史的な開幕を迎えたBリーグでもレバンガ北海道の主力として活躍(チームの日本人選手の中では最多得点をマーク)。1993年にデビューして以来、日本の全てのリーグ変遷(日本リーグ→JBL→NBL→Bリーグ)を知る唯一の男となった。    レジェンドと言われる選手は、幼少の頃から天才と言われてきたというパターンがほとんどだが、この折茂、埼玉栄高校時代はインターハイには出場したもののグッドプレイヤーの一人で、それほど注目される選手ではなかった。その後、日本大学に進学し、キャプテンとして臨んだ4年時にインカレで優勝。このときは4連覇を目指す日体大との決勝戦で、残り1分を切って6点のビハインドだったが、それを逆転しての栄冠獲得。折茂はその決勝で20得点をマークし、大会MVPに選ばれている。  

日本大時代    そんな折茂の持ち前のシュートセンスが完全に開花したのが、1993年にトヨタ自動車に入ってから。自チームをタイトルに導く活躍を見せただけでなく、男子日本代表としても94年アジア大会を皮切りに、2009年東アジア大会まで実に16年間もプレイ(1998年にはギリシャでの世界選手権にも出場)。以前、折茂は「何年プレイしても、バスケットボールは難しいと思います。自分の思いどおりにはいかない。まだまだ自分ができないことに『悔しい!』と思ってしまうのです。それがなくなって『もういいや』と思ったときは終わりです」とコメントしているが、その飽くなき探究心が、これまでの折茂の栄光の軌跡となり、現在も現役を続けるモチベーションとなっている。    といっても今年で47歳。これまでも現役継続についてたびたび質問をされているが、それについては「自分が満足できなかったり、納得のいくパフォーマンスができなかったりする以上、現役の舞台にいてはいけないと思っています。自分自身で、ある程度一定のものがそれ以下になったときはコートを去るべきだと考えています」と言い、それだからこそ「『折茂さんができなくても、そこにいることに価値がある。皆はそれを望んでいる』というような言い方をされると、正直迷ってしまいます」(折茂)というのが本音だろう。その上で「でも、この歳になってもそれ以下になっていないから現役でいるというのもあります。その部分を自分がどう捉えていくのか。自分とよく相談し、自分自身と語り合わなければならないと思っています。去るのは簡単です。『辞めた』と言えば終わりですからね。でも、ここまでプレイを継続してくると、辞められない難しさというのも感じています。現役のうちが華ですよ」と語っている。   若さや身体能力だけでは止められない いぶし銀のプレイ    そんな折茂、昨シーズンは全60試合出場(1,158分/1試合平均19.3分)する鉄人ぶりを見せ、規定試投本数には届かなかったが、3Pシュート成功率は44.4%、フリースロー成功率は82.4%とリーグ屈指の高い数字を残した。そうしたスタッツを見る限り、まだまだ気持ちに衰えはなさそうだ。    さらに、国内トップリーグ日本人プレイヤー初の通算9,000得点を達成し、前人未到の1万得点も見えてきた。その折茂、シュートタッチに関しては、微妙な「爪の音(中指でボールを引っ掛ける)」で調子の善し悪しを聞き分けるという。また、シュート練習も極力しないという珍しいプレイヤーで、「普通のシュート練習は1本打てば感じがつかめる」と豪語する。これは、“1本しか打たない”ということではなく、“集中して打つ1本から多くの情報を得る”ということらしい。    そしてプレイスタイルとしては、身体能力の高さを生かしたものではなく、スピードの緩急と味方のスクリーンを巧みに使った“いぶし銀”のプレイでディフェンスを翻弄するのが特徴だ。相手ディフェンスの位置や意図を感じ取り、タイミングや一瞬の隙でシュートやパスを繰り出す老獪さは、相手にとって厄介な存在。そこには、若さや身体能力だけではストップできないものがある。また“究極の負けず嫌い”というのも、折茂の根底を支えている。47歳といってもコート上では年齢は関係なく、自分よりも若いほかのリーグ屈指のスコアラーたちにも負ける気は全くないはずだ。    そんな折茂は、レバンガ北海道では選手兼オーナーという立場のため、スケジュールは多忙で、ストレスも半端ではないだろう。だからこそ、リーグで戦う姿は、世の40~50歳台に勇気を与えている。  

    折茂&川村のスコアラー対決に注目    その折茂率いる北海道は、昨シーズン、東地区で23勝37敗の4位。B1残留プレイオフへの出場は回避できたが、3位とは20勝以上の差で5位とは5勝差の紙一重。だからこそ、今季チームがジャンプアップするには、折茂の活躍が不可欠となる。    だが、現実は厳しい。東地区は昨シーズンの上位4チーム中3チーム(栃木ブレックス、アルバルク東京、川崎ブレイブサンダース)が所属し、他の2チームもサンロッカーズ渋谷、千葉ジェッツという激戦ブロック。それだけに、開幕から地道に1戦でも多く勝利を重ねていくことが求められる。    そんな状況の中、注目なのが、第2節で対戦する中地区の横浜との一戦だ。昨シーズンの横浜は、B1残留プレイオフという苦い経験をしているだけに、北海道同様気合が入っているはず。そして横浜には、天性のクラッチシューター川村卓也がいる。チームの得点源である川村は折茂に負けず劣らずの負けず嫌いだけに、試合は2人のシュートの入れ合いになることが予想され、マッチアップのズレが起きれば2人の直接対決もあるかもしれない。ディフェンスをかわして華麗にシュートを決める折茂に対し、タフショットをねじ込む勝負強さのある川村。折茂のバスケットボールを知り尽くした動きか、川村の生まれ持った点取り屋の嗅覚か。Bリーグのスコアラー対決から目が離せない。   ▼月刊バスケットボール編集部員が語る“折茂武彦”のここに注目!! https://sports.mb.softbank.jp/vod/player/14758?rc=cf_featured_basketball  

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