月刊バスケットボール5月号

【中国インターハイ2016記者の目】ディフェンス+αの力

大会前から本命不在だった群雄割拠の男子を制したのは、福岡第一。 2009年以来、7年ぶりの頂点に立ち、代々継ぎ足している応援旗には「インターハイ16優勝」という輝かしい成績が書き加えられる。   そんな福岡第一の勝因は何と言っても強固なディフェンス、そして速さを生かしたオフェンスだ。 ④重冨周希、⑤友希の前線からの激しいディフェンスに全員リバウンド、そして朝練から走り込むことで鍛えられた脚力。 初戦から6試合を戦いながら「あと1試合はできます」(重冨周希)と言う。 また彼らに引っ張られる形でほかの選手も成長し、新チーム当初の“重冨兄弟”のチームから総合力が格段に上がり、夏を制すに相応しいチームに変貌を遂げた。   全国大会のレベルで、「攻撃が武器だ」というチームは少なく、程度は違うもののどんなチームもディフェンスから活路を見出していく。 ただ当然ながらディフェンスだけで勝てるほど、全国は甘くない。 勝ち上がっていくためには、ほかのチームを圧倒する+αの力が必要になる。

シックススマンとして、大会を通して貴重な働きを見せた福岡第一⑥松本   福岡第一で言えば、その+αは重冨兄弟の精神的な強さ、速さ、そして井手口コーチの起用に応えた控え選手の適材適所の活躍だろう。 決勝では最大15点差を6分でひっくり返す要因となった速攻、そして⑥松本、⑪小野の2年生が要所で外角シュートを沈め、決勝では東山が掌握していた主導権を奪取。 前半消極的だった重冨兄弟も最後までリングにアタックし、特に相手の接触を受けながらダブルクラッチでシュートをねじ込んだ4Qの得点シーンは圧巻だった。 これは3位に入った東北勢、山形南と福島南にも同様のことが言える。 山形南は伝統のディフェンスの激しさとルーズボールに加え、NBAなどからセットプレイを参考にし、自分たちで考えながら展開するオフェンスとシュート力が例年になく精度が高かった。 初出場ながらベスト4の福島南はディフェンスはもちろん、練習の積み重ねで築き上げられた緻密な合わせのプレイと⑥木口、⑧半澤(凌)の1対1の強さが光った。   特にこの2チームは県内選手のみで構成された県立高校。 高さに恵まれない中、今夏は+αの力を伸ばしたことで躍進を遂げたのだ。   それでもこれは例年以上に混戦になったからこそ言えることでもある。 圧倒的な個の力を誇るチームがないからこそ、オフェンスよりもディフェンスが重要視され、ベスト8が決まった3回戦だけを見ても、最後に守り切ったチームがゲームを制したケースが多かった。 それだけに、ここ近年はウインターカップに向けてチーム作りを進めているケースが多く、個の力とチームとしての組織力が上がる冬に勝負を懸けることで、インターハイ以上に混戦となる可能性が高い。 この夏に+αの力を発揮したチームが上位を維持するのか、はたまたここ数年上位を維持していたチームの逆襲があるのか、夏同様新興勢力の浮上があるのか。 新時代の到来を予感させたインターハイだが、早くもウインターカップの開幕が待ち遠しい。 (月刊バスケットボール編集部)

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