月刊バスケットボール8月号

渡嘉敷来夢の“今の想い” Vol.1

 ここ3年、Wリーグ後、日本のオフシーズンに当たる期間は、シアトル・ストームの一員としてWNBAに参戦していた渡嘉敷来夢(JX-ENEOS)。しかし今年は、「日本代表活動に専念する」ということがWNBAでの所属先であるシアトル・ストームから発表された(日本時間2月6日)。    女子日本代表は今年、9月末に女子ワールドカップ(スペイン開催)を控えており、当然渡嘉敷本人もその大会へ出場したいという思いは強い。WNBA参戦を回避してまで日本代表活動に懸けた想いとは。真相を伺うべく、渡嘉敷選手に取材を敢行した。    そこで出てきたのは、今年の女子ワールドカップだけでなく、2年後の東京オリンピックまでも見据えた話――。これから2回に渡り、日本のエース・渡嘉敷の“今の想い”をロングインタビューでお届けする。   WNBAには参戦せず、日本代表活動に専念 「今よりもっと世界に名を馳せたい」   ――WNBAのシアトル・ストームより『2018シーズン、渡嘉敷選手は日本代表活動に専念する』という発表がありました。その経緯、理由を教えてください。    今年は日本チームとしても、女子ワールドカップという大きな大会が控えているので、2018年のシーズンもシアトルでベンチにいるだけになってしまうのなら、その大会に出た方が自分をアピールする場があると考えました。ベンチにいることは3年やったし(笑)、そこでいろいろと経験できたので、もういいかなと。    もちろん、日本代表候補選手はまだ発表になっていないのですが、(Wリーグでの今季のパフォーマンスで)このままいけばケガなど何か大きいことがない限り(候補選手に)選ばれる自信があったので、そう判断し、シアトル側に伝えました。    シアトルは、2018シーズン、ヘッドコーチやアシスタントコーチなどがガラッと変わるので、チームのフロントからは『過去のチームとは違うから、残ってほしい』とは言われたのですが、それでも試合に多く出られる保証はないし、(同じポジションでエースの)ブリアナ・スチュワートがいる限りなかなか使ってもらえないかなと。決して彼女に負けていると思わないのですが、いろいろ考えると、今年は『試合に出たい』『日本代表として世界にアピールしたい』と思いが強く、そのこともシアトルには伝えました。
  ――では、最終的にはシアトルが渡嘉敷選手の意志を尊重してくれたのですね。    そうです。そこはアメリカ、やっぱりプレーヤーズファーストなんですよね。ほかにもベルギー代表でもあるエマ( Emma Meesseman/ワシントン・ミスティックス)も代表活動に専念するようですね。   ――やはり試合に出たいという思いが強かった?    試合に出ることもですが、もっと自分をアピールしたいということもあります。それこそ、2、3年前ぐらいから『世界の渡嘉敷になる』と考えていて、『もう世界の渡嘉敷だよ』と言ってくれる人もいるのですが、私の中の基準があって。今よりもっと世界に名を馳せたいと思っています。    アジアだとすでに私のプレーを知っている人は多いですから、女子ワールドカップでどれだけ自分を表現できるか、そのことに時間を使いたいですね。    WNBAと日本代表の両立という選択もあったのですが、(一昨年と3年前の)2シーズンで両立をしましたが、すごくしんどいんですよ。特にWNBAでは試合に出られない中で、日本では私がエースとしてチームを引っ張らないといけない。そのモチベーションをアメリカで戦っている間、どこでどう出したらいいか…。    実際、WNBAのシーズンが始まったら(日本代表での大会を見据えての)練習をみっちりできるわけではないし。かといってWNBAでの試合に長い時間出ているわけでもない。やれることといったらちょっとした時間を見付けて軽くシューティングやランニングをするぐらい。だけど、私に必要なのはそういうことではなくてゲームの経験値。だからこそ、『今年は自分を表現する場を作らないといけない』という思いが強かったですね。
    ――意地悪な聞き方をすれば、スタッフも変わり、今年はシアトルでも試合に出られるチャンスはあったかもしれません。    今回の判断には、(2年後の)東京オリンピックというのもあるんですよね。女子日本代表ヘッドコーチが昨年からトム(ホーバス)になりましたが、そのトムのチームに私も加わって戦いたい。そして自分たちの力がどんなものなのかを女子ワールドカップで知りたい。今のレベルを知っておかないと『東京オリンピックでメダルを獲る』とか言っていられないですから。    まずは今年の女子ワールドカップでのメダル獲得を目指すこと、そしてその大会を通じて見える課題や今の自分に何が通用するのかということも知りたいし、感じたい。それに言ってしまえば、シアトルの新ヘッドコーチよりもトムとの方が付き合いも長い。JX-ENEOSに入ってからずっと教えてもらっていて、こうしてアメリカでプレーできるまでに育ててくれたのも、トムのお陰だと思っています。   ――渡嘉敷選手は、これまでも選択を迫られたときは自らが成長する、前進する方を選んでいます。    そうですね。その中で今の私があるのはトムがいたから。でもまだ自分自身には満足していなくて、さらに成長するにはトムの力が必要だと思っています。だからこそ、今年は『トムの下で一緒に』という思いが強かったですね。  

WNBAデビューは2015年   ※Vol.2は、9月に控える女子ワールドカップへの意気込み、そして2020年の東京オリンピックに向けての想いを掲載します。   (月刊バスケットボール編集部)

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