不測の事態に陥った千葉がA東京との連戦を五分で乗り切る
千葉にとっては痛いアクシデントの中、序盤からA東京に2‐12と先行され、テクニカルファウルも宣告される不穏な立ち上がりに。ただここで「気持ちを切り替えられました」と#34小野が振り返ったように、大野ヘッドコーチが常に掲げている“エナジー”を全選手が表現。激しいディフェンスからA東京のミスを誘い出し、高さのアドバンテージがある小野、#21エドワーズが果敢にアタックをすることで、A東京のファウルを誘い出すことに成功した。 さらには#8ライオンズの2本の3Pシュートで1Q終了間際に逆転。その後は、強固なディフェンスとセカンドユニットの活躍もあり、一度もリードをA東京に渡さなかった。 「僕たちがコート上で表現できるのは“エナジー”しかない。メンタル的なところを変えないといけない。40分間ハードワークしてくれた結果が今日の勝利につながったと思います」と振り返ったのは大野ヘッドコーチ。 中でも大きかったのは正PGが阿部のみという状況の中、2年ぶりのPG起用となった#27石井、ボールハンドリングに自信のあるライオンズが司令塔役をこなし、乗り切ったことだ。終盤は石井とライオンズがうまく役割分担をして、試合を運んだ。 石井は「練習中から何回かPGはやっていたので、今日の文男さん(西村)の足の状態を見て『あるかな?』と思って来ました。自分の中では特に慌てることなく、準備して試合に入れたので良かったです。不測の事態としてはうまく対応できたかなと思います」とコメント。
東地区首位のA東京に対し、こうした苦しいゲームを勝ち切ったことで、傍から見ればチーム力の高さを感じさせる千葉。しかし、大野ヘッドコーチとキャプテンの小野の口からは「もっとできたのは?」という意味合いのコメントが発せられた。 大野ヘッドコーチは「アクシデントがあった中で戦ってくれたことは評価できますし、自分たちの収穫だと思います」としながらも、「オフェンスはうまくいっていません」と話す。 小野も「うちは一人欠けると強くなりますね(笑)。でもこういう事態になったから頑張るのではなく、昨日もっと頑張れたんじゃないかな、と。それがうちの弱い部分でもあり、今日みたいな試合を勝てるのは強みでもある。上に上がるためにはそこをうまくしていかないとダメじゃないかなと思いました」と厳しい発言。 ただ裏を返せば、どんなメンバー構成でも勝たなければいけないという強い“エナジー”と、勝利に貪欲だということが感じられる。 特に千葉は昨シーズン、チャンピオンシップで栃木に大逆転負けを喫した苦い経験がある。その試合ではコート内でチームが空中分解しただけに、今シーズン、小野はコミュニケーションの大切さを選手に伝えてきた。ハドルを組む回数も増え、数字では計れないチーム力の高さは、選手たちが満足していないとはいえ上がってきており、それが勝利の貪欲さにつながっている。 これこそケガ人が出ても勝利を積み重ねている千葉の持ち味であり、最大の強みなのだ。 (月刊バスケットボール)