月刊バスケットボール8月号

【南東北インターハイ2017記者の目】明暗の分かれた1回戦

  福島県福島市を舞台に、いよいよ開幕を迎えた南東北インターハイ(7月28日〜8月2日)。初日の今日は男女1回戦が行われ、全国で1勝を挙げられるか否か、無情にもゲームの勝敗が明暗をハッキリと分ける形となった。   「全国って舞台は、そう簡単には勝たせてくれませんね。勝たせてあげたかったですけど…」   試合後、ほほ笑みながらこう漏らしたのは、地元・福島県代表で全国初出場を果たした安積黎明の薄コーチだ。1回戦で当たることになった相手の埼玉栄は、今大会に2年連続8回目の出場となる強豪校。地元の声援を受けた安積黎明も、なかなか持ち味のディフェンスを出させてもらえず、初めての夢の舞台は45-87で敗れ散る形となった。県内有数の進学校なだけに、全国出場の快挙を成し遂げた3年生たちも進学の準備のため今大会で引退。だからこそ薄コーチの「勝たせてあげたかった」という一言は切実なものだったが、試合後の集合写真の撮影では、選手たちは涙をぬぐい、やり切ったようなすがすがしい笑顔を見せていた。  

  この安積黎明のほか、初出場チームの戦いぶりを見てみると、男子は羽黒(71-86/vs.桜丘)、倉吉総合産(73-83/vs.和歌山工)、女子は東海大付静岡翔洋(71-88/vs.市前橋)、座間(70-89/vs.足羽)、白鷗大足利(69-77/vs.松江商)と、いずれも健闘したものの初戦突破はならず。女子のアレセイア湘南(61-56/四日市商)と佐世保南(92-73/徳山商工)だけが、全国初出場&全国初勝利を手にする形となった。   こうした初出場校が慣れない大舞台で力を発揮するためには、まず立ち上がりから硬くならずに普段どおりのプレイが出せるかが重要となる。その点、”初戦の入り方を大事にする”ということに関しては、大会6連覇が懸かる全国常連校・桜花学園とて同じことだ。   今年は東海大会準優勝のため久々にノーシードからの出場となり、1回戦で鹿児島女と対戦することに。すると序盤から攻防にわたって高い集中を見せ、前半で65-16と相手を圧倒。後半はベンチメンバーを起用しながら、結局109-46で快勝を収めることになった。例年シードで2回戦から登場する桜花学園にとっては、ある意味“久しぶりの1回戦突破”である。   この集中の要因の一つは、井上眞一コーチのベンチでの振る舞いだろう。この試合、「直前の練習ゲームを見ても選手たちがピリっとしていなかったので、私だけでもやる気を出そうと思ったんです」と、井上コーチは試合開始から全くベンチに座らず、1Qと2Qは終始立ったまま檄を飛ばして指導。そんな熱い姿勢に鼓舞されるかのように選手たちも奮起し、前半で大差を付けることができたのだ。後半はベンチメンバーを起用できたため、「(ノーシードの今年は例年より)1試合多いので、今日のようになるべく控えを使いながら戦っていければいい」と、井上コーチも合格点を与えていた。   一方、こうした最高の入りができなくとも、”意地”で立て直して勝利をもぎ取ったチームもある。例えばその一つが、男子・福島東稜だ。県2位の地元枠で出場となった同校は、チーム初の“全国1勝”を挙げるべく初戦に臨んだが、「前半は硬かったです」(山本コーチ)と序盤から追う展開に。だが、「後半のスタートは3年生で固めました。『自分たちのやりたいことをやって来い』と話して、それがうまくいきました」と、最上級生に託した山本コーチ。すると後半に一気に巻き返す形となり、最後は59-55と接戦を制してうれしい全国初勝利となった。   福島東稜の3年生たちは、中学時代にジュニアオールスターに選ばれた選手が一人もおらず、いわば無名の選手たち。昨年も全国大会には不出場で経験は浅いが、「うちはチャレンジャーなので、一生懸命やるしかない」(山本コーチ)と、開き直った思い切りの良さが勝利に結び付いた。未知の世界となる2回戦の戦いぶりも注目である。   接戦も多く、些細な差で明暗が分かれた1回戦。明日の2回戦には男女シード校が登場し、さらに一段とレベルが上がる。明日も熱戦は必至だ。  

(月刊バスケットボール編集部)

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