Hagiwara in WNBA

萩原すべての日記



1998/06/23 マリア。そしてミシェル・・・

今日の練習は9時45分から12時まで。ミシェル・テイムズが練習前にシューテイングをし よう、と誘ってくれたので、8時10分にクリステイーの車に乗って家を出る。

ロシア人のマリアも一緒だった。マリアは全く英語が話せない。分かるのは「Hello」と 「OK」ぐらい。余程、フラストレーションが溜まっていたのだろう。一昨日の練習中に、い きなり泣き出してしまった。あの気持ち、よーーーーーくわかるんだなあ・・・。去年私もサ クラメントで、おんなじことやったし。

例えば、何か決まったフォーメーションを動いている時に、自分にも自分なりの考えがあっ て、デイフェンスの裏をついたり逆を行ったりすると、フォーメーションの動きが崩れる。自 分にも考えがあってやったことなのだが、コーチが動きを止めて、流れが崩れた原因を探ろう とする時に、チームメイトが「彼女がこっちへ動いちゃったから。」みたいなことを言う。言 葉は分からなくても、そういうことって結構敏感にわかるもんで、「あ、私のことを言ってい そうだな。」と感じてしまう。すると、コーチも、チームメイトも「彼女は外国人だからしょ うがない。まだ、動きを理解していないのだろう。」というような反応を示す。

理解していないどころか、充分わかっていて、デイフェンスの裏をつく動きをしたのであるが わかってもらえない。コーチが「こういう時はこうダウンスクリーンに来るから、こう使っ て・・・」と説明に来る。そんなことは百も承知である。「デイフェンスが先回りしたので ・・・」と、言ってはみるのだが、コーチはうなずきながら「でもスクリーンはダブルスクリ ーンが来るからそれを使って・・・」と譲らない。そういうことが何回か続くと、コーチもチ ームメイトも最終的には、「彼女はシステムをまだ憶えていない。」とみなしてしまう。

この辺が、バスケットのスタイルの差であろう。日本や、および韓国のバスケットでは、こう いった柔軟性が評価される。決まった通りの動きをしない。相手の動きに対して臨機応変に対 処する。ところが、アメリカではある程度の柔軟性は評価されるが、あくまでシステムの中で のものに限られる。それゆえ、「裏を掻く」プレーも自ずと限定されてくる。わたしにはまだ その辺がよく飲み込めていない。どの辺まで崩していいのかの判断がまだ把握できていないの だ。 

前置きが長くなってしまったが、きっとマリアも似たようなフラストレーションを感じている のだろう、ということは容易に予想がつく。自分はできるのに、違うと言われる。何度かそれ が続くと、できないとみなされる。それを防ぐには、彼らの価値観の中で、できる、と証明し て見せなくてはならない。しかし、彼らのバスケットと真っ向から対決した所で私にどれだけ の利があるのか。なんとか私らしさを失わずに彼らの価値観の中で、私のプレーを認めさせる ことはできないものだろうか。  

ミシェルとクリステイーと30分ほどシューテイングをしたのだが、面白かった。ミシェルは すぐ、何でも競争したがる。肩を少し慣らした後、例によって「競争しよう」と来た。しかも 面白いことに、彼女は「競争」になると、めちゃめちゃ強いのだ。肩慣らしでは、リバウンダ ーを散々走らせるほどシュートを落としまくったくせに、競争、と言った瞬間ぴたっと決め始 める。驚異の集中力。 

私も「シューター」と呼ばれている限りは負けるわけにはいかないので、ちょっとムキになっ た。最終的には私の方がちょっと勝っていたようだったが、ここで一番大事なことは、「めち ゃめちゃ集中した30分間のシューテイング」が、期せずして終えられていた、ということ だ。なるほど、シューテイング競争ぐらいなら、私だって日本で何度もやった事がある。で も、例えばこれが、ただ30分間3人で交代してシューテイングするのと、競争しながら一本 一本集中して30分間うつのとはまるっきり効果の度合いが違ってくるだろう。勉強になっ た。ミシェル、という人は、万事が万事こういう人に違いない。だからきっとこんなに長く現 役生活を送れるのだろう。(ミシェルは今年33歳。)  

そして、この人は細かい気遣いも常に忘れない。私が3試合終えた時点で4試合目もまた故障 者リストに入らなければならなかった時、試合の準備で忙しくしているロッカールームの中で 一人暇そうにしていたら、通りすがりにポン、と肩を叩いていった。開幕戦に発つ前も、一緒 に行けない私に「気を落とさないで自信をキープしときなよ。あんたなら絶対大丈夫だから 。」と声を掛けてくれたのも彼女だ。(ちなみにもう一人のAUSSIE、ミシェル・グリフ ィスも「私たちの『バック・ドアー』を憶えときなよ!」と声を掛けてくれた一人・・・私と ミシェル・グリフィスはその日の朝の練習で見事なタイミングのバックドアープレーを決めた のだった。)まさに、「TANK・GIRL」。“戦う姉御!!”って感じ。

  今日は、最後に明日の対戦相手、ヒューストンのアジャストを軽くやって終わった。その後、 上半身のウエイト・トレーニング。練習中は、コートを何度も往復して走るようなメニューは あまりないのだが、ハーフコートでの攻防も、目一杯力が要るのでとにかく疲れる。これも、 バスケットスタイルの違いの一つ。一日一回の練習でしかもランニングのメニューはほとんど 無いのに、終わるといつもグッタリ。日本では人を吹っ飛ばして歩く私が、ここでは吹っ飛ば されて歩くのだからいかに力が要るかお分かりであろう。とにかく、今日も、終わった!帰っ て昼ご飯食べて、少しお昼寝でもしよう。

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