Hagiwara in WNBA

萩原すべての日記



1998/06/17 親愛なるTIAに捧ぐ

しばらく試合が無い。次の試合まで5日間空いているのだが、こういうことって 結構珍しい かもしれない。とりあえず私は故障者リストから出れたものの、次の試合でベンチ入りできる 保証は全くない。この間の練習が勝負になるだろう。 

昨日TIAがヴァージニアに帰ってしまった。TIAは昨年からのメンバーで、今シーズンも チームに残っていたのだが、故障者リスト入りを通告されたのを機に、チームを去る決意をし たのだった。

体は細くて、目がくりくりと大きくて、とっても可愛らしい顔立ちをしていて、私などは「日 本に来ればモデルで一稼ぎできるよ。」と常々言っていたほど。そのくせどっからそんなジャ ンプ力が出てくるんだ、と目を見張るほどの黒人特有の運動能力を持っていた。

そんな彼女は、かわいいだけではなく、とっても優しい性格の持ち主だった。私がトレードさ れてきた時も、何かと力のなってくれたのは彼女だった。私は彼女にくっついて色んな所に行 った。TIAの大好きな某ファーストフードショップ、映画館、カフェ、レストラン・・・。

ちょうど、私も左膝を傷めたため、右肩の手術を待つTIAと、シーズンが終わって誰もいな くなってしまったアパートで、当時の通訳だった松本泰子さんと三人で「GIRLS’ TA LK」(要するに過去の自分のボーイフレンド遍歴やなんかの暴露話でしょうか。)なるもの をしたりした。

明日は手術だというのに(入院とかはしないのであった。)夜中の3時ぐらいまで盛り上がっ た。TIAはよく私のシュートフォームのまねをした。東洋人独特の両手で打つシュートが珍 しかったらしく、試合前のウオーミングアップで真剣にシュートを打っている私の側へ寄って きて、真似をして見せては私を笑わせた。 

今回、フェニックスに来た時も、TIAと再開したのはもう練習が始まり、アップのためにコ ートを走り始める直前だったのだが、TIAはとっても優しい目をして、「元気だった?」と 私をHUGしてくれた。 

出会いもあれば別れもある。

特にここでは、昨日まで一緒に練習 し、明日の約束を交わし合ったチームメイトが、夜のうちにいきなり解雇されて次の日から姿 を見せなくなる、などということがしょっちゅう起こる。こういう時皆は、何も言わずに普段 通り振る舞うのだが、でも割り切れない感情だって確かに存在するのだ。TIAの部屋に、最 後のお別れを言いに行った昨晩、私は一時間かけて書いた英語の手紙を渡した。(それはまる で高校時代の英作文の授業を私に思い出させた。)もう少し話をしたかったのだが、TIAが 顔を歪めて、「もう行って。私を泣かせないで。」と言ったので最後にHUGして出て行っ た。 

最初、TIAはここにいた。私を迎えてくれた。

そして今、TIAは去る決意をし、私はここ に踏ん張ろうとしている。そういえば、3試合を見ただけだが、他のチームの顔触れもずいぶ んと変わってしまった。私のいたサクラメントでさえ知っている顔はごくわずかだ。幾人のプ レーヤーが挑戦し、夢破れ、去っていったことだろう。頂点に立てるプレーヤーというのは本 当にごく一握りの人たちだ。今日も新しい挑戦者たちと挨拶をし、握手をして、生き残りを賭 けて彼女らと闘う。ここはそういう所だけれど、こういう世界で得た友人だからこそ、TIA は私にとってかけがえの無い存在なのだ。

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