2009.05.21
沈黙
ナゲッツのヘッドコーチ、ジョージ・カールは他のコーチにはないくらい人間的な面を見せてくれるので、取材する者としてはとても興味深い人だ。きのうのナゲッツ対レイカーズ第1戦後の記者会見で、まさにジョージ・カール、という一シーンがあった。
終始主導権をとりながら最後の最後でレイカーズにビッグプレイを決められて負けた、言ってみれば手の中から勝利がこぼれ落ちたような試合。試合後すぐ、まずフィル・ジャクソンが記者会見をして、その後少ししてからジョージ・カールが会見場に出てきた。もともと、負け試合の後の落ち込みが激しい…というか、その落ち込みを隠そうとしない人なのだけれど、このときも見るからに落ち込んだ表情をしていた。
そして、最初の質問。
「レイカーズを追い詰めていたかのように見えた試合で、なぜ最後がああいう結果になってしまったのでしょうか」
質問を聞くと、表情を変えないままに目の前に置かれたボックススコアをじーっと見つめたまま長~い沈黙。10秒以上してから答え始めようとして、"You know...."(日本語にすると「えーっと…」)と言い始めたのはいいけれど、そのまま再び沈黙。会場に重~い空気が漂っていた。
何を言うか考えているようでもあり、何か言おうとしたことを飲み込んだようでもあり、あふれ出そうな感情を抑えているようでもあり…。さらに10秒くらいしてからようやく、「分析はしない。レイカーズはすばらしいチームだし、すばらしい試合を戦った。この競技で一番のクローザー(最後に勝負を決することができる選手)もいる。私たちは、試合を勝つのに十分なことをしなかった」と搾り出すように言った。その後はふつうに質問に答えていたけれど、この、最初の質問に対する長い沈黙は第1戦での負けのショックの大きさを表していた。
質問に対してこれだけ長い沈黙というのは珍しかったこともあって、一夜明けても印象強く記憶に残っていた。…なので、きょうの練習の取材のときに、その沈黙についてカールHC本人に聞いてみた。感情を表に出すことは恐れていないのだろうか。それとも、逆に感情を隠そうとして、ああいう沈黙になってしまったのだろうか。他のコーチ相手だったら囲み取材でこんなことは聞けないし、聞いても本音で答えてくれるとは思えないのだけど、常に本心をさらけ出して答えてくれるカールHCなら…と思ったのだ。
以下が、その問いかけに対するカールHCの返答。
「つらい負け試合が終わって10分後に、ああやって質問に答えなくてはいけないというのは、まったくクレイジーなことだと思う。誰でも間違いは犯すものだ。だからあのときは、言葉の上の間違いも、感情面でも間違いもおかさないようにしようとしていた。感情的になるときではなかった。すばらしい試合を戦い、チャンピオン(レベルの)チームに、勝つのが大変な彼らの建物で負けただけのことだ。だから、チーム(選手たち)に対して怒っていたわけではないけれど、あのときは自分に、いくつかの判定に対して、すべてのことに怒っていた。罰金を取られるようなことや、あとから後悔するようなことを言ってしまうかもしれない。そう思って、自分を落ち着かせようとしていた。自分のことはノン・エモーショナルな人間ではないと思うけれど、試合中ではノン・エモーショナル・コーチになろうとしている。試合では、あまり多くの感情を見せるべきだとは思っていない。感情は、時として弱点の表れになりえるからね」
ノン・エモーショナル・コーチになろうとしている、と言いながらも、取材に対して(それも、番記者のように気心が知れた取材者でもないのに)、自分の弱いところまでさらけ出して話してくれるカールHC。この人間的なところはコーチとして時に弱点になることがあるかもしれないけれど、だからといってそのことを簡単に批判できないな~。
このあと、さらにコーチとして感情を出す、出さないということについても聞いたのだけど、それはまた別の機会に…。





