2008.10.28

ブレックス取材こぼれ話

 すっかり間があいてしまいました。早いもので、明日はNBA開幕。完全にNBAモードになる前にリンク栃木ブレックスの話の続きとして、Number714号掲載の記事では書ききれなかったことを、書き留めておきます。

■田臥の勧誘(加藤HCと田臥の関係)
 田臥がブレックスに入るというニュースが流れたとき、たぶん多くの人が、能代工高校の恩師、加藤三彦監督からの勧誘があったからだろうと想像したと思う。でも、実は加藤HCはブレックスのHCに就任した後、一度も直接、田臥には連絡を取っていなかった。実際、ブレックスHCに就任した少し後に田臥に取材したときも、「(加藤監督からは)連絡も何もないです」と言っていた。

 実は、ブレックスが田臥の代理人に契約オファーを出したときに、代理人から「本人とは直接コンタクトを取らないこと」と言われていたのだという。それでも、先生と教え子なわけで、直接的な勧誘でないにしても連絡取るくらいはしても不思議なような気もするのだけれど、それさえなかったという。最初から欲しくてしかたない選手だったのに、なぜ、直接連絡を取ろうともしなかったのだろうか。そう聞くと、加藤HCはこう言った。
「僕はけっこうルールを守るほうですね。彼(田臥)もルールを守るほうだから、たぶん、お互いにルールを守るから(直接)連絡を取れなかったんだと思います」

※余談だけど、長年アメリカで取材してきた中で田臥から加藤HCの名前が出ることはほとんどなくて、密かに「実は仲が悪かったりして」なんて勘ぐったこともあった(スミマセン!)。
 今回、田臥本人にそう言ったら、「そんなこと(仲が悪いなんていうことは)、ないですよ」ときっぱり否定されてしまった。「今までは先生と生徒という立場のほうが強かったので、正直、あまりコミュニケーションを取る機会もあまりなかった。新年の挨拶をメールでさせてもらったり、節目節目で挨拶させてもらうくらい」とのこと。
 高校生のときの先生(コーチ)と生徒って、そういうものかもしれないけれど、先生(加藤)が言うことを、生徒(田臥)が「はい、はい」と言って聞くような、言ってみれば一方的な関係だったのだという。
 それが、今回、こうい形でプロチームのプロコーチとプロ選手という関係になったことで二人の関係もだいぶ変化し、より対等な関係で、双方向の話ができる関係に発展しているのだそうだ。かつての教え子とこういう関係になれるのって、先生(HC)にとってはすごく嬉しいことなんじゃないかなと思う。

■チーム経営の側面から見た田臥獲得
 シーズン直前にいきなり田臥を獲得することになって、金銭的にブレックスは大丈夫なのだろうかと心配する人もいたのではないだろうか。あるいは、最初から田臥獲得を考えて資金繰りをしていたのかと想像した人もいるかもしれない。それを、山谷GMに聞いてみた。そのときの山谷GMの言葉。
「我々はプロのチームなので、企業のチームのように、『今年いくら使います』ということを決めて、それをどう分配していくかっていうか、割り振っていくかっていう考え方ではないです。先行投資をすれば、そこでどれぐらい回収できるんだろうとかということを考えていくわけなので。だから、よく『お金がすごくあったんですか?』みたいな話をされますけれど、いや、ないからこそ我々としては(田臥を獲得したかった)。プロのチームとして、初めてJBLに上がるチームとしてはやはりインパクトが欲しいですし、経営的には正直、そう思いました。だから、そこは先行投資という意味合いで。興行なども算盤弾いて…というところまではいってなかったですけれど、ただ非常に可能性はあると判断して、経営的には判断したつもりです」

 確かに、こういう話を聞くと、プロチームでないと今回のようにぎりぎりまで田臥の決断を待つということはできなかったのかもしれない。それが、決められた予算を変えることができない(変えにくい)実業団チームの限界ということなのかもしれない。

 それでは、実際に田臥がブレックスに入って、スポンサーが増えたり、チケットが売り切れ連続になって、支払った契約金(額まではさすがに教えてもらえませんでした)に見合うだけの収入が入るだけの見通しが立ったのだろうか。そう聞くと、山谷GMはこう答えた。

「ある意味、彼(田臥)が来てくれるという決断をしてくれた中で、それがペイできなければ、経営は何をやっているんだっていう話ですよね。だから、それぐらい彼が決断をしてくれたことに敬意を表していますし、それを生かさなきゃいけない(と思っています)」

(写真は、ブレックスのオフィス近くに置いてあった自動販売機です)


Posted by Yoko Miyaji at 12:37  Japanese players in USA】 , 【日本のバスケ