2008.07.17

適応する力

 取材したことを雑誌記事の予告編のつもりで随時アップしていくつもりだったのが、結局それどころでなくなってしまい、10日ほど更新が途絶えてしまった。こうなったら、この間のことは後まわしと開き直って、まずは本当に予告編の写真を。この話が雑誌に掲載されるのは少し先、8月売りの月刊バスケットボールの予定です。

 このサイズだとわかりづらいかな(コンピューターから見ている人は、クリックするともう少し大きくなります)。写真の右のほうに、日本のバスケファンなら見覚えがある姿があるはず。そして、その横にはNBAファンなら見覚えがある姿も。ヒントは壁にかかっているバナー。月曜の写真です。

 種明かしは最後に。その前に、この2週間くらいの間で感じたことをひとつ。
 この夏、代表活動がないこともあって、日本人選手が何人かアメリカに出てきて、いろいろなところでバスケットボールをしている。寄せ集めのチームで、それぞれがアピールしようとしている中で、どうやって自分の持ち味を見せるのか。そういう経験って、実はすごく大事だと思うのだ。
 海を越えたこっち(アメリカ)から日本のバスケを見ていて思うのは、日本人選手の多くは、いつも同じチームで、いつも気心が知れたチームメイト同士、いつもきっちりと決められたフォーメーションの中で、整えられた環境の中でプレーしているということ。そうしないといけないという切迫感まであるような感じを受ける。夏のオフシーズンの間も何ヶ月もチーム練習を続け、確かにチームの連携はよくなるのかもしれない。でも、そうすることで、そういう環境でないと力を発揮できないようになってきているんじゃないだろうか。違う環境に適応する力が弱くなっているんじゃないだろうか。
 今回、日本人選手たちはボールの違いに慣れなかったり、英語がわからなくてコーチの指示がわからずに不安なままプレーしたり、チームメイトがパスをくれなくて思ったようなプレーができなかったり、相手の身体の大きさに戸惑ったりという経験していた。そういったいつもと違う環境、状況になったとき、すぐに力を出し切れないのは誰でもあること。大事なのは、そういった新しい環境にどれだけ早く適応することができるのかだと思うのだ。数日とかではなく、数時間、場合によっては数十分という単位で。
 これって、実は日本代表として海外に出たときにも役に立つ能力だと思う。海外の笛、海外のコート、相手チームに喝采を送る観客という、いつもと違う環境の中で、どれだけいつもの力が出せるのか。
 個人で海外に出てみると、そういう能力は自然と磨かれる。…というよりも、そういう能力がないと脱落していくような環境でもある。でも、必ずしも海外に出ないとそういう経験ができないわけでもないはず。
 そういえば、今回Dリーグのプレドラフトキャンプに参加した栗原祐太選手は、以前、「ストリートバスケットボールの中に自分が足りないもの、学ぶべきことがある」ということを言っていたけれど、それもひとつのやり方。「そんなところでやったことがない」と敬遠するのではなく、もっといろんな環境に飛び込んでほしいなと思うのだ。
(そんな話を、写真の選手ともしました)

 さて。例によって、ピントが甘い写真ですみません。速攻からのドライブインをしてきているのは、UCLA出身、現レイカーズのポイントガード、ジョーダン・ファーマー。それをディフェンスしようとしているのは…そう、北海道レラカムイの桜井良太選手です。UCLAのジムでのピックアップゲームの一場面。竹内譲次選手も、アトランタやLAの別の場所で、こうやってNBAやNCAA選手に混じってピックアップゲームをして、アメリカを身体で感じたと言っていた。
 ちなみに、写真を撮ることに必死だった私は、このあとどうなったのかを全然覚えていない(我ながらレポーター失格…)。たぶん、ファーマーが普通にレイアップを決めたんだと思うけれど…。ピックアップゲームで体当たりのブロックをするわけにもいかないしね。桜井選手に聞いたところ、本人も全然覚えていないらしい。…というか、これまでNBAをあまり見なかったという桜井選手、ジョーダン・ファーマーのこともあまり知らなかったというから、この場面でも相手がNBA選手だと気づいていなかったかも?

(正面からの写真が一枚もなかったので、最後に一枚。影ができてしまった失敗ショットでスミマセン)

【追記】
 日本では情報の先走り、混乱があるようなので、念のためにあらためて書いておくと、桜井選手が今回参加したのは、レイカーズのサマーリーグ前の練習(ワークアウト兼トライアウト)。結局、サマーリーグに行く前にカットされている。
 そして、このワークアウトに参加できたのも、某新聞に載ったように、「フィル・ジャクソンが水面下でオファーを出した」わけではない。レイカーズのスカウトの目に留まったというわけでもなく、はっきり言ってしまうと桜井選手自身の能力が認められたというよりは、間に入ってくれた人の推薦があったから参加できただけのこと。
 もっとも、当の桜井選手はそのあたりの現実はよく理解しているようで(あまり記事とか、まわりの評判とかは気にしないタイプらしい)、むしろ、今年はそこまでできるとは思っていなかったらしく、レイカーズの(サマーリーグの)トライアウトに参加できたことに驚いていたくらい。
 そんな話をしたときに桜井選手にも言ったのだけど、こういうチャンスって実は滅多に回ってくるものではない。挑戦一年目の今回参加できたからといって、次も同じチャンスをもらえるとは限らない。むしろ、最初の挑戦でダメと判断されてしまったら、二度とチャンスは巡ってこないことだってありえる。だからこそ、桜井選手にも、他の選手にも、こういう一回一回の挑戦を、二度と巡ってこないチャンスだと思って取り組んでほしい。そして、こういうチャンスをもらえたことがスゴイのではなく、この先、どれだけこの経験を生かして成長できるかで、選手としての真価が問われるのだということも忘れないで欲しいと思う。
 きのう話を聞いた感じでは、そのあたり、桜井選手はしっかり理解しているようだったので、次にまたアメリカで取材できる機会を楽しみに待つことにします。


Posted by Yoko Miyaji at 02:42  Japanese players in USA