2005.10.21
シャーロットに再びエクスパンションチーム【HOOP2003年1月号掲載】
>>リーグにチームが増えるたびに「レベルの低下」という批判がでるが…
今夏にホーネッツがニューオリーンズに移転してNBAの地図からいったん消えたシャーロットに、2004年秋、再びNBAチームが戻ってくる。といっても、ホーネッツがシャーロットに再移転するわけではない。全く新しいNBAチームが新設されることになったのだ。ホーネッツがシャーロットを離れる直接の原因となったのは新アリーナ建設と使用に関する合意が交わされ、それを基にNBAオーナー陣はリーグにエクスパンションチーム(新設チーム)の追加を承認し、シャーロット市は市の資金でアリーナを建設することを承認したことで問題も解決。12月には新チームの経営陣が決定する見通しだ。現在2グループが新チームのオーナー候補に名のりを上げており、ラリー・バードをチームの顔として擁するグループが有力と見られている。
このエクスパンションが実現すると、NBAは現在の29チームという中途半端な数から、ようやく30チームのリーグになる。前回NBAのチームのチーム数が増えたのは95年秋、カナダのバンクーバーとトロントにチームが新設されたときだったから、9年ぶりのエクスパンションということになる。(ちなみに、NBAコミッショナーのデビッド・スターンはこのエクスパンションを機に、ディビジョン分けを一からやり直すことを示唆している。現在の2カンファレンス、4ディビジョンを、東西の2カンファレンス、4ディビジョンを東西の2カンファレンスはそのままで、各カンファレンス内を3ディビジョンずつに分け、各5チームずつの6ディビジョン制にしようというわけだ)
ところで、エクスパンションでチームが増えるたびに出てくる批判がある。チームが増えた分リーグのレベルは下がり、リーグをつまらなくするというのである。88年、89年に合計4チームが増えた頃によく聞かれた批判だ。なかには、少数派ながら、レベルを向上させるために今はリーグの数を増やすよりは減らすべきだと主張をする人もいる。
確かに、単純に考えて23チーム(80~88年のNBAチーム数)が30チームに増えれば、NBAに入れなかったはずの84選手がNBA選手になれるわけで、その分水増しされてレベルが落ちると考えるのは自然なのかもしれない。でも実際のところ、チームが増えたことが原因で、実際に目に見えて違いがわかるほどリーグのレベルが落ちているのだろうか。
今のNBAが80年代前半に比べてレベルが下がっている面があるのは、確かにそうだと思う。例えば個々の選手を比べたら、20年前より現在のほうが格段に運動能力の高い選手が増えているのだが、その一方でリーグ全体を見たときの基本的なスキルや、バスケットボールに対する理解力は落ちている。しかしその一番の理由は、エクスパンションで選手が増えたためというよりは、NBAに入ってくる新人の年齢が下がっていることにあるのではないだろうか。
実際、高校を卒業してすぐ、あるいは大学1、2年でアーリーエントリーする選手は10年前と比べ物にならないほど増えている。具体的に数字をあげてみよう。
10年前の1992年ドラフトでアーリーエントリー宣言をして、ドラフトまでに宣言を取り消さなかった選手は16人、そのうち実際にNBAチームにドラフト氏名されたのはわずか4人に過ぎなかった。それに対してことし、2002年のドラフトでアーリーエントリー宣言をして、ドラフトまでに宣言を取り消さなかった選手は合計47人。その内訳は高卒4人(うちドラフト氏名1人)大学1年6人、(うちドラフト指名2人)大学2年13人(うちドラフト指名6人)、大学3年19人(うちドラフト指名12人)、海外選手5人(うちドラフト指名5人)だった。これだけ多くの若く、バスケットボール経験が浅い選手が増えれば、それだけ全体のスキルレベルが下がるのも当然だ。
仮定の話で考えてみよう。現実には今のNBAではありえない話なのだが、もしも今、NBAを29チームから25チームに減らし、48選手がNBAのロスターからカットされたとして、リーグのレベルは目に見えるほど向上するのだろうか。
現ニュージャージー・ネッツGMのロッド・ソーンに意見を求めてみた。1963年ボルティモア・ブレッツに1巡目2位でドラフト指名され8シーズンNBAでプレイ、引退後はアシスタントコーチやGMを経験、さらに2年前にネッツGMとなるまで14年にわたってリーグ・オフィスで働いていたという経歴の持ち主、約40年間NBAと深くかかわってきた人だ。
先の仮定の質問をすると、ソーンからは次のような答えが返ってきた。「4チーム減らしたとしても、それでリーグが向上するのかどうかはわからない。チームを作ろうとするときには若い選手を育てようとし、彼らがいい選手に育ってくれるようにと願うわけだからね」
つまり、今の時代に強豪チームを作ろうとすると、どうしても若手の育成が必要だというわけだ。となると、たとえチーム数が25になったとしても、ドラフト上位で指名されるような将来有望なアーリーエントリー選手たちがNBAロスターから外れることは考えられない。結局、NBAのレベルが落ちているいちばんの原因はチーム数がかわっても解決しないということなのではないだろうか。さらにソーンは言った。「今のチーム数はちょうどいいくらいだと思う。チームがいくつあったとしても、たとえ15チームしかなかったとしても、下の4、5チームが弱いチームであることは変わりない。
確かに、今のレイカーズがシャックとコービが健康だったとして、マジック・ジャバー時代のレイカーズに勝てたかどうかと聞かれたら、私としては疑わしいと答えるだろう。あの頃のレイカーズは、今のレイカーズよりもいい選手が多かった。バード、マイクヘル、パリッシュのセルティックスもすばらしいチームだった。それからジョーダン、ピペンのブルズもグレートチームだった。ただ思い出してほしいのは、そういった時代にも、弱いチームはあったということだ
強いチームばかり注目を集めるけれど、弱いチームはいつの時代でもある。私はあの頃リーグ・オフィスで働いていて、そういった弱いチームのことも毎日見ていたから、そのことはよく知っている」
もう一つ、NBAのエクスパンションと並行して起こった出来事もある。海外選手の増加だ。マイアミとシャーロットのエクスパンションチームが設置される直前、NBAがまだ23チームのリーグだった1987-88シーズンの開幕ロスターの中で、アメリカ国外出身の選手は14人いた。これに対して今シーズンの開幕ロスターにおける海外選手の数は67人、53人の増加だ。単純計算だが、この間に増えたエクスパンション6チーム分、72人のロスター枠は海外からの選手でほとんど埋められていることになる。しかも、海外からNBAにやって来るのは単にベンチの端に座るだけの選手というわけではない。ダーク・ノビツキー、プレドラグ・ストヤコビッチといったオールスター選手や昨シーズン新人王のパウ・ガッソルなど、リーグを代表する選手が増えている。「外国人選手はNBAにものすごく大きな影響を与えていると思う」とソーンも言う。「特に海外から来たサイズの大きな選手が与えた影響は大きい。ほとんどの外国のビッグメンはパスができ、シュートができ、ドリブルの仕方を知っている。ヨーロッパなどの外国ではそういったオールラウンドなスキルを教えている。アメリカの若いビッグマンに欠けている部分だ」
最後に、ほんとうにNBA選手のレベルは落ちているのだろうか。
メンフィス・グリズリーズのヘッドコーチに就任したばかりのヒュービー・ブラウンが、コーチ就任記者会見で興味深いことを言っていた。16年前、ブラウンが最後にコーチをしたときからNBAは何がいちばん変わったと思うかと聞かれたときだ。
「みんな今のNBAにはシューターがいないと言っている。でも、以前と比べて何がいちばん変わったかといったら試合に向けての準備だ。バスケットボールを変えたのはビデオ、ファックス、コンピューターだ。87年まではアドバンス・スカウティングをしたスカウトがコーチに電話してくるか、チームが宿泊するホテルに資料を預けるか、あるいはスカウト自身が次の街にやって来て口頭で何を見たか伝えるという作業だった。
当時のプレイオフのディフェンスが、今ではシーズン中に見られるようになり、試合の間に一日のオフが入るプレイオフの準備は全く新しいレベルになっている。試合の準備は以前の100倍も向上している」
ビデオやコンピューターを駆使したスカウティングは、選手の弱点をまる裸にする。昔の選手がそんなスカウティングの対象となったときに、はたして同じようなプレイができていただろうか。
仮説の話で過去のスター選手の実績を貶めるつもりはない。ただ、そういったさまざまな要素を考えれば考えるほど、時代を越えたレベルの比較というのは、あまり意味がないことに思えてくる。





