第7回 ディフェンスのフィロソフィー
(勝利を生むのはディフェンスから)
前回まではコーチングに入る前のコーチ自身の考え方、フィロソフィーについて述べてきました。今回から実際にコートに立ちチームを作るに当たって、どういうふうに組み立てていけば良いか、ということについて技術的な側面も含めて述べてみたいと思います。[チームのイメージ]
アメリカにはこんなことわざがあります。「オフェンスはショー。ディフェンスは勝利」。
ボールを持ったプレーヤーが、見事にゴールをゲットする姿は見ていてとてもおもしろいものです。しかしオフェンスは水物。その日のコンディションで大きく変化してしまうものなのです。例えば、バシッ、バシッとおもしろいようにシュートが決まることもあれば、脚が疲れているとか、ジャンプ力が落ちているなどの要素で思い通りに得点が入らない、ということもあるわけです。ところがディフェンスは、ボールを守のは一人ですが、他の4人がそれを助けることができるため、オフェンスよりもずっと安定し、より計算できるプレーなわけです。つまり、オフェンスでゴールをゲットするのは最後一人の力ですが、ディフェンスは5人が力を合わせて守っていくものです。
したがってディフェンスほど「チーム」を意識してプレーすることが大切なものはないのです。私もコーチ時代、チームを創る際にオフェンスに主眼を置いた時と、ディフェンスに主眼を置いた時の両方を経験していますが、後者の方がチームとして成功している、ということが結果としてはっきりと出ています。
確かに選手からみれば、相手の意志に従ってプレーせざるをえないため、ディフェンスの練習は非常にネガティブなものになりがちです。「辛く」「苦しい」ものかもしれませんが、そこを精神的に乗り越えることができれば、相手をうまく守ったとか、単にスチールということではなくボールが取れた時などには、選手同士が成功した充実感でまとまってくるのが目にみえてわかるのです。それはゴールをゲットした時に一人が良い格好で目立つオフェンスに比べ、ディフェンスは「5人で良い仕事をした」という、チームの力が最も問われるプレーだからでしょう。[マンツーマンとゾーン]
チームを作り始める時にゾーンが良いのかマンツーマンが良いのか、はたまたマンツーマンからゾーンに変更するタイミングを悩んでいるコーチの方も多いと思います。マンツーマンとゾーンの大きな違いは、多くの場合一人ひとりの責任が明確になっているか否かです。
マンツーマンの場合は、マークマンとボールを視野に入れ、しかも自分のマークマンを責任を持って守らなくてはなりません。さらにスクリーンをはずしたり、ボディーチェックをしたり、強い気持ちで、手足を目一杯動かして、相手のことを守らなくてはなりません。これはゾーンとはまったく反対の基本です。
つまりゾーンの時の多くは、消極的になりがちで、相手にやられた時の責任の所在が明確にならない時が多くなってきます。マンツーマンからゾーンに変更する際も、マンツーマンが積極的なディフェンスですから、相反する消極的なゾーンに変更することは、混乱の元になる怖れがあります。変更する際は、少なくとも同じ考え方のゾーンにするのが望ましいでしょう。ゲームの最中に考え方を変えていくということは、大変難しいことなのです。[ディフェンスの3つの要素]
ディフェンスには3つの大切な要素があります。
- プレッシャー
プレッシャーには二通りあります。一つはボールを持っているプレーヤーにプレッシャーをかけるもの、もう一つはボールをレシーブしようとするプレーヤーにボールを持たせないようにプレッシャーをかけるディナイです。例えば、いったんコートの右サイドにボールが入ったとしたら、簡単に左サイドにボールを移動させないようにし、相手のミスを誘うのです。
- ビジョン
ディフェンスはボールの位置によって自分のポジションが変わってきます。今自分はヘルプをしなければならないのか、ディナイをすべきなのかは、ボールの位置を常に念頭に置いておくことが必要です。つまりボールの位置でディフェンスの仕事の内容は変わってくるのです。常にボールと、マークマンと、ゴールを守っていなくてはなりません。
- コミュニケーション
スクリーンのコール、自分の位置を知らせるコール、ヘルプのコール、エンプティーのコールなど、プレーヤー同士でコミュニケーションすることによって「チームディフェンス」の意識が高まっていきます。次回はオフェンスのフィロソフィーでお会いします。
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