勝利への道。 1999年5月1日〜9日
勝利への道。
第18回女子アジア選手権、静岡ABC(オリンピック予選)
大会観戦記

5月9日:記者の目 ==静岡ABC 閉会式人間模様==
韓国三人娘 韓国“3人娘”が一緒にプレイするのはこれが最後の大会だった。 センター#15チョンウンスンは来年のオリンピックに出場するが、 #5チョンジュオン、#8ユーヨンジュは引退を表明している。表彰 台で最も高い位置に上った3人は終始笑顔を浮かべながらも感慨 深げ。決勝ゴールを沈めたキャプテンの#15チョンウンスンは、 金メダルを何回も愛しげにその感触を確かる。#5チョンジュオン、 #8ユーヨンジュは、花束の香りをいっぱいに吸い込む仕草。 続く準優勝の日本は、皆押し黙ったまま怒ったような表情を見せ ていたが、メダルと花束を受け取った瞬間、こらえていたものが 堰を切った。キャプテン#7加藤はそのまま号泣。 もう一人の主役は3位の座だった。大陸(中国)を破って、初め て表彰台に上がった中国台北の選手たちは、韓国、日本の選手た ちとハイタッチをかわしながらグルリと一周するセレモニー付き。 エース#5チェンウェイチェンは、そのルックスと鮮やかなプレイ で今大会でも人気の選手だが、メダルを手にしてこれまでに見た ことがないような光り輝くブルースマイルがこぼれていた。
ミチ すべての式典が終わったあと、日本#6村上が囲まれた。多くの報 道陣のカメラが並ぶ中、サプライズ・引退式だ。全日本、シャン ソン化粧品のチームメイト、中川監督、恩師、父、川村社長夫妻 から花束を受け取るミチ。飛び入りで、アジアのライバル韓国の 3人娘、中国台北のチェンも村上と抱擁を交わす。ミチの涙は止 まらない。 「精一杯やったと思います。本当はオリンピックの切符を取れれ ばよかったんですが…。でも、バスケット人生に悔いはありませ ん」(村上)途切れ途切れに鳴咽を漏らしながらも、ミチはファンに向けてラ ストメッセージを送る。 “村上選手、夢と感動をありがとう”の垂れ幕を背に、会場を一 周。有終の美を飾ることは叶わなかったが、“小さな巨人”全日 本の指令塔ミチに大きな拍手が送られた。 星城高を選抜準優勝に導いて以来、クレバーなミチのコメントに いつも助けられた。そのたぐいまれな運動能力のみならず、努力の 人だった。どんな状況でも臆することなく立ち向かい、ここ一発 の3Pシュートにはいつも度肝を抜かされた。そんなミチの取材 も今日が最後。シャンソンの駐車場で、“もう一度やることにし ました”と聞いた時どんなにうれしかったか。本当に今まであり がとう、そしてお疲れさまでした。 来月号にはそんなミチの心境がレポートされるので、お楽しみに。
(清水広美:月刊バスケットボール)

5月9日:記者の目 ==決勝:日本vs韓国==
 残念だ。最後の最後まで勝敗の行方は読めなかった。本当にほんのちょっとの差で勝利の女神は韓国に微笑んでしまった。草薙運動公園体育館は、最終日になって、最高の盛り上がりを見せた。静岡学園高バスケットボールのメンバーによる応援を筆頭に、最後の瞬間まで日本チームをサポートした。異様とも思える雰囲気の中、自分を見失わない、特に韓国#5錢、#15鄭のプレイは敵ながらあっぱれだった。体調と崩していた#8劉も気迫のプレイで日本ゴールを襲った。「多少なりともプレッシャーはあったかもしれない」日本#8山田が出場した選手の気持を代弁してくれた。韓国の30秒をゆっくり使ったオフェンスとスキあらば仕掛けてくる速攻に対し、日本はペースをつかめなかった。前半は最大で15点ものビハインドを追うことになった。後半に入り、日本がじわりじわりと韓国を追い詰めていった。残り2分46秒、#12がオフェンスリバウンドをねじ込み、ボーナススローを決め、この試合、初めて日本がリードを奪った。しかし、息詰まるような攻防は、#15鄭が気迫のポストプレイでシュートを決め、決着を迎えることとなる。残り22秒、3点のビハインドを追って日本は攻撃を仕掛けたが、ついに力尽きてしまった。 日本チームは最高のコンディションで大会を迎えた。しかし、緒戦の中国台北戦でリズムを崩し、一転してどん底に落ちてしまった。そこから這い上がり、予選最終戦で韓国を破り、準決勝では中国台北に力の違いを見せつけてくれた。チームの建て直しには、スタッフをはじめ、選手のチームワークによるものが大きかった。残念ながらシドニーへのキップはゲットできなかったが、最後まで僕たちに感動的なプレイを見せてくれた全日本に拍手を贈りたい。みんな、ご苦労様。ゆっくり休んでください。
(入江美紀雄:月刊バスケットボール)



5月8日:記者の目 ==準決勝:日本vsチャイニーズ・タイペイ==
 同じ過ちは二度と犯さない。 予選ラウンドの緒戦で苦しんだ中国台北に対し、日本は出場した選手がそれぞれの仕事をまっとうした。そうなれば、やはり中国台北よりも力は1枚も2枚も上なのだ。その中で今日は特にジェット#7加藤が切れのあるプレイを見せてくれた。日本刀のようにスパっと切れるシュートに、芸術的なゴール下でのステップ、それに隙あらば果敢に襲いかかるディフェンス。後半の出だしの3連続ゴールは正に絶品だった。キャプテンがチームを引っ張った。予選の序盤、不振に苦しんだマック#11浜口もおとといの韓国戦で完全に吹っ切れ、インサイドで暴れまわり、持ち味を発揮。エース#12大山はディフェンスだけでなく、攻撃でも10ポイントも獲得し、存在感をさらにアピール。みんなの調子は右肩上がりだ! 途中退場したミラ#15の右足首の状況が気になるところだが、きっと元気にコートに戻ってくれるはず。さあ、明日は韓国戦。全日本のみんなはこの日を目指して練習に励んできた。マジックは1。表彰式で日の丸が揚がり、君が代を大合唱する日が近づいてきた。
(入江美紀雄:月刊バスケットボール)

5月8日:記者の目 ==準決勝:韓国vs中国==
990508会見 やはり韓国の“3人娘”が決勝にやってきた。中国VS韓国の試合を両国で見るならば、その結果はおのずと知れている。ニュートラルな日本でやるからこそ、この両国の戦いは面白い。日本が決勝進出を決めたあとだけに、観客数こそ減ったが残ったファンはアジアの戦いを十二分に堪能した。中国は、一度負けた相手に同じ戦いはしない。予選で韓国に大敗を喫したが“正念場”の準決勝では、前半から見違えるような気迫をほとばしらせていた。試合は中国ペースで進んだ。しかし、韓国は前半残り4分を切ってお家芸のチェンジング・ディフェンスで流れを変えた。わずか1分間で3つもの変化を見せる。さらに後半、韓国はディフェンスのタフネスさを見せつけた。とりわけ、韓国の“3人娘”の一人#8劉永珠の目の輝きが違う。これまでの不調が嘘のような執念のドライブで、中国ディフェンスを切り裂いていく。中国も、#6柏華が3Pラインはるか後方からズドンと3Pシュートを沈め、観客からどよめきが起こる。「勝ったと思えた瞬間が何回かあった」(柏華)のも無理はない。しかし、シドニーへの切符はただ一つ。ここで負ければオリンピックの道は閉ざされる。韓国ディフェンスは終盤圧巻だった。中国のガード陣を困惑させ、フリースローさえ落とさせるほどだった。 記者会見で、中国・柏華はコメントを言い終わると同時に机につっぷした。勝った韓国のエースセンター#15鄭銀順も「あきらめかけた時、今までのやってきた過程がフィルムのように思い出された」と告白。鄭銀順の頬を涙が伝う。韓国の“3人娘”#5銭周媛、#8劉永珠、#15鄭銀順は、今大会で負ければナショナルチームからは引退を噂されている。思えば、90年の名古屋アジアジュニア以来、日本でもおなじみのこの3人。日本のエース、加藤たちは以来後塵を拝している。残りあと1試合。明日喜びの涙を流せるのは“3人娘”それとも、ジェットとミチ?
(清水広美:月刊バスケットボール)



5月6日:記者の目 ==日本vs韓国==
990506会見勝った!やったぁ!韓国戦勝利だ!日本は大会に入ってから、ずっとリズムが悪かった。 それを何としても断ち切りたかった。それが大一番、韓国戦で吹っ切れたようだ。 本当に良かった。今日は試合の入り方からして良かった。”静かなる闘志”とでもいおうか。各自がしっかりやるべき事をやり、仕事をこなした。日本が勝つ時はいつもそう。ディフェンスをタイトについて、走った時が勝つパターンだ。今日の試合はまさにそうだった。今までリズムを崩していたミチ(村上)やマック(浜口)が1本目のシュートから入り、落ち着いていた。「やっていて気持ちが良かった」とはミチのコメント。ジェット(加藤)も気合が入っていたし、ミラ(永田)もミラらしいすごいドライブインがあったし、みんな持ち味を出せた。ヒラリ(桜庭)の3Pもきいたしね。陰の功労者はエース(大山)だ。相手チームのキーマンである#5チョン・ジュウォンを執拗にマーク。「エースのディフェンスはピカイチ」と中川ヘッドコーチも全幅の信頼を寄せている。 攻撃の起点を止められた韓国はリズムをつかめなかった。また、日本が前半に主力を温存させたことで、後半に走り出してから、韓国はガタッと体力が落ちてきた。シュートが全く入らないのだ。昨日の中国戦の疲れもあるだろう。エースセンターの#15チョン・ウンスンも切れがなくなった。こんな韓国をみたのは久しぶりだ。選手層なら日本の方が厚い。これで日本は1位になった。準決勝は最初の予定通りチャイニーズタイペイだ。しかし、タイペイが侮れないことは4年前のABCや今回の予選で百も承知。大会はこれからが本番。選手たちも気を引き締めているはずだ。しかし、、、日本、韓国、中国のアジアの3強はいつも三つ巴になる。ABCのゲームはやってみなきゃわからない。スカウティングをしても裏の裏をついてくる。でも、日本は真っ向から勝負する。プレイスタイルは変えないだろう。とにかく悪いリズムは断ち切った。あとは上昇気流に乗って爆発するだけ!行こうシドニーへ!!試合後敗れた韓国のエース#15チョン・ウンスンは目に涙を浮かべ#5チョン・ジュウォンは口をキリリと引き締め、雪辱を誓っていた。韓国も中国もこのままでは終わらないはず。日本も日本らしさを忘れずに頑張っていこう。最後に、今日の中川さんの采配は冴えていた。ミチとヒラリの変えどころ、主力の休ませ方、タイムアウトの取り方。すべて思惑通りでした。
(小永吉陽子:月刊バスケットボール)



5月5日:記者の目 ==日本vsタイ==
 タイ戦ということでこれまで出ていなかった選手も全員出場。#5島田が19点とチーム最多得点、#9慶山、#14服部がダブル・ダブルの活躍で、中国戦での敗戦を引きずりそうな雰囲気を一掃してくれた。みんな、気持よくプレイできたことだろう。いい汗、かいていたぞ! さて、この試合を観戦していた元全日本のポイントゲッター、オーちゃんこと萩原さんの感想は……、「控えがのびのび試合して、いい感じだったと思います。イツ(島田)とダイ(服部)は明日の韓国戦でも使ってほしいですね」 さあ、明日は韓国戦。エースキラーの“エース”こと#12大山は今大会絶好調。韓国の司令塔#5チョン・ジュウォンをどう抑えるか、それにきっとマック#11浜口もやってくれるはず。ちなみに10点差で勝てば予選1位突破の可能性も残っている。とにかく明日の韓国戦での内容が、8日からの決勝トーナメントを行方を占うこととなるだろう。
(入江美紀雄:月刊バスケットボール)



5月4日:記者の目 ==日本vs中華人民共和国==
 これまでになく若いメンバーの中国。2002年世界選手権用に育てているメンバーと言われているが、やはり能力は高く、末恐ろしい。この若さあふれるメンバーたちが必死で全力で日本に立ち向かってきた。ディフェンスも激しく、マンツーとゾーンを併用している。これはかなり練習を積んできている様子。オフェンスもアップテンポで飛ばしてくるし、若さをいい方に全面的に押し出している。このリズムが最後まで続くか疑問だったが、最後まで集中力が切れることはなかった。それに今までの中国なら、大事な試合にも淡々とプレイしていたが、この若いメンバーはひとつひとつのプレイに一喜一憂。ベンチも大声を張り上げて、全員で盛り上げている。今までの中国とは違う。明らかにチームカラーが変わった。気合い十分で戦うこの姿こそ、日本が出すべき姿なのではないのだろうか。 今日の敗因は、オフェンスのリズムの悪さ。中国がどーのこーのというより、自分たちからリズムを崩している。とにかく、イージーシュートが多いし、フリースローも入らない(静岡、いや、草薙のコートには魔物がいるのか? 4年前のABCも最初の試合からそうだったっけ…)。これらが簡単に決まっていれば、前半で10点のビハインドなんて、ならなくてもいいはず。最大18点差が開いたが、これを、大山、岡里の3P、加藤のシュートで追い上げて、同点にすることはできたが、逆転には至らなかった。そこが痛い。 それにしても、相変わらず中国はでかい。#14マーと#12リャンのダブルセンターは経験あるものの、あとから出てくるセンターも若いながらも1試合ごとに何かをつかんでいる。若きエース#8ミャオも能力抜群。中国には、インサイドとアウトサイドを効率よく、バランスよく、気持ちよく攻めさせてしまった。 でもまだ1敗だ。気持ちを切り替えよう。どこかで悪いムードを断ち切ろう。大会は長い。まだまだこれから。次がまだある。後半はいい形で追い上げて、日本らしい攻めができた。この流れを忘れずに、自分たちから盛り上げていこう。とにかく、オフェンスが60点台じゃ勝てない。いいリズムを思いだそう。日本らしく戦えば勝てる!
(小永吉陽子:月刊バスケットボール)



5月2日:記者の目 ==日本vsチャイニーズ・タイペイ==
 静岡ABCの緒戦、組みやすいと思われていた中国台北に対し、苦しみ抜いて勝利をもぎ取った。内容云々を言うより、勝利が欲しかった。この勝利で今後の戦いに弾みがつくはずだ。厄払いは終わった。しかし、これだけ日本のシュートが落ちることは珍しい。3Pの確率は22.2%、フリースローは56%と、ことごとくリングに嫌われた感じだ。何かにとりつかれたようにシュートが落ちた。また、中国台北の内、外とバランスの取れた攻撃に対し、受け身のディフェンスになってしまって、相手にペースをつかませる要因を作ってしまった。ハーフタイムで中川ヘッドコーチからカツを入れられたメンバーは、後半、奮起。ペースを取り戻せば、やはり日本は強かった。内容を振り返れば満足できるものではない。しかし、今日、必要だったのは勝利のみだ。コンディションは良好。これまで合宿で築いてきたものを試合に出せば、自ずと結果はついてくる。次は中国戦。走って、走って、日本本来のバスケットが見られるはずだ。
(入江美紀雄:月刊バスケットボール)



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