高木さんのコーチングフィロソフィー

第12回 モーションオフェンス
(パート2)

前回に続き、私自身の体験を交えて「モーションオフェンス」について述べてみます。

●<試行錯誤、そして失敗>
 まだ日大のコーチをしていた1982年、ボビー・ナイト(正しくは、ボブ・ナイトだそうです)率いるインディアナ大学を訪問し、練習を見せてもらったことがありました。ナッシュビル(テネシー州、音楽の町)のバンダービルト大学を訪れた後、車で4時間ほどかけて移動したと記憶しています。フリーウェイを走ってインディアナ州に入りましたが、大学に近づくにつれ家が一軒もなくなり、周りはニンニク畑……。こんな所に大学が在るのか、というような風景になりました。さらに走り続けるとそれまでの風景が途切れ、忽然と大学の大きなキャンパスが現れ、本当にびっくりしたものです。

確か「アッセンブリー・ホール」という名前だったと思いますが、17,000人収容の体育館で、あの名将ボビー・ナイトとのご対面となりました。ところが、彼はとてもぶっきらな人物で、私たちを見下すように、「キミたちはどこから来たんだ? 何しに来たんだ!?」と言わんばかりの目でにらまれたのです。その瞬間、緊張感が走りました。続けて彼は、「1回や2回、オレの練習を見たって何も分かるはずがない」と言われてしまったのです。私たちは“固まってしまった”と同時に、「この男があの有名なボビー・ナイトか……」と妙に感激したものです。

さて、本題に戻りましょう。対面は果たしましたが、練習開始まで時間があったこと から、彼のアシスタントコーチが私たちに、「フィルムライブラリーがあるので、そこでフィルムを見ていてください」と案内して下さり、ゲームのフィルムを見せてもらうことになりました。そこに「モーションオフェンス」のフィルムがあったのです。それはボビー・ナイト本人が作った教材用だったのです。時間にして5分ぐらいのもので、 実に簡単に説明されているものでした。

 そのフィルムでは簡単なワンプレー、例えば「スクリーン・アウェイ」(図1、パスした逆にスクリーンをかける)が、一場面だけ流れるのです。説明書を見ても、ただ単に「パスして逆にスクリーン」とだけ書いてあるだけでした。

「ポストカット・ウィズ・スクリーン」(図2、ハイポストマンをスクリーナーにしてカットする動き)の画面に替わっても先ほどのようにまた一場面だけ……。

今なら分かっていることも、コーチになりたての当時は、その一場面が全体のどの部分なのか理解できませんでした。そこで、「モーションオフェンス」というのは、このように一場面一場面を繋ぎ合わせていけばよいのだ、とシンプルに考え、自分なりに納得することにしました。

ボビー・ナイトと話ができた感激を胸に、「これで一流コーチの仲間入りができる… …」と意気揚々、帰国の途についたのでした。ところが、それからが本題の「試行錯誤 、そして失敗」の始まりとなったのです。

 次回(パート3)から、私が苦労したお話になりますが、きっとみなさんのお役に立 つと思います。

【1つ前へ】 【目次へ戻る】 【1つ先へ】

All copyrights reserved by BASKETBALL-ZINE CONSORTIUM