高木さんのコーチングフィロソフィー

第11回 モーションオフェンス
(パート1)

今回から数回にわたり、私自身の体験を交えて「モーションオフェンス」について述べてみます。

●モーションオフェンスとの出会い
 私が「モーションオフェンス」という言葉を初めて聞いたのは14〜15年前、アメリカのある大学のチームを見学させてもらった時のことでした。当時はまだ、3PTSルールやシュートクロックがなく、何分でもボールを持ってオフェンスをコントロールしていられる時だったと記憶しています。そのため両チームのスコアが23:24というようにかなりロースコアのゲームが多く、当然ボールを長く持っていたほうが有利になる試合展開でした。オフェンスの主流は「フレックス」など、連続性のあるフォーメーションでしたが、その翌年には各ディビジョンによってルールが異なってきました。それはシュートクロックが35秒や45秒とバラバラだったり、3PTSが採用されたりされなかったりと不統一になってしまったのです(これはバスケッボールをより面白くするために、どういったルールがよいのかをテストをしていたのかもしれませんが)。特に、シュートクロックが短くなった西部地域で「モーションオフェンス」が主流になりつつあった頃だと記憶しています。その動きを見ていると「フリーランス」に見えるのですが、当時、私自身もコーチになって経験が浅く(3〜4年)、どういった考え方でそのオフェンスができているのかは、なかなか理解できませんでした。

その後、毎年のように(日本の)シーズンオフに入るとアメリカへ行っては多くの大学を訪ね、コーチからいろいろな話を聞いて持ち帰り、じっくり考えてみるということをやっていました。また、その都度ブックストアに立ち寄ってはコーチたちが書いた技術書を探したものです。余談ですが、これを必死に翻訳していたことが、現在も非常に役立っています。

 その頃、ディーン・スミス氏(ノースカロライナ大)の『マルチプル・オフェンス&ディフェンス』という本を見つけました(今では翻訳されたものが日本で出版されています) 。その中に「フリーランス・パッシングゲーム」という章があり、それが「モーションオフェンス」と同じ意味であるというのが、かなり後になって理解できました(私にとって“翻訳”というのは神がかり的なことで、実に長い時間がかかりました……) 。

 アメリカのコーチたちの話を聞いていくうちに、なぜ「モーションオフェンス」が考え出されたのか、というような背景がおぼろげながらも理解できるようになってきました。われわれ日本人コーチは、どうしてもアメリカから入ってきたものに何の疑問も持たず、マネするところからスタートしていきます。しかし、アメリカのコーチたちは“コーチング”を職業として成り立たせてており、少しのルールの変更であっても、どうすれば上手にそれを利用できるか、ということを真剣に考えているのです。改めてその姿勢に驚かされたものです。

 次回(パート2)「試行錯誤、そして失敗」でお会いしましょう。

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