高木さんのコーチングフィロソフィー

第3回 やる気にさせる

 やる気==選手の誰もがそれを必要不可欠なものだと知っていながら、時として行方不明になってしまう厄介な存在です。やる気になる、やる気にさせる為には、いったい何が必要なのでしょうか?

[気持ちの上でやる気にさせる]
 まず最初に言えることは、選手たちがやる気になるためには、成功体験が一番いいのではないか?ということです。成功した嬉しさを実感する事で必ず「よし!」というウキウキした気持ちが生まれます。反対に、自分のプレイがうまくいっていないと、失敗したらどうしようという気持ちに支配され、プレイも気持ちも消極的になってしまうのでは?

 そこで選手たちが一つの成功を体験をするまで、指導者の“我慢”が重要になってくるのです。

 例えば、極端な話ですが、五つプレイして四つ失敗してしまった場合。単純に比較すれば圧倒的に失敗が多いわけですが、指導者がその四つの失敗の方ばかり指摘したとすれば、選手たちは萎縮してしまいます。一つ成功したときがさあチャンスです。選手たちをやる気にさせる大きなポイントです。

「それがお前の全てなんだ!」

と思い切り褒める。ちょっぴり恥ずかしいかもしれませんが、選手がワンスッテプアップする入り口にさしかかっているんだと考えれば、指導者としても恥ずかしがっている場合ではありません。

 また、練習でも、試合でも、「俺がコーチだぞ」と一歩ひくのではなく、「自分も選手たちと一緒にやっているんだ」という前向きな姿勢が、選手たちに安心感を与えます。もちろん色々なタイプの指導者がいると思いますが、陣頭指揮に立って、「みんなでやろう」という雰囲気を出すことも信頼感に繋がる大切な要素です。練習中でも試合中でも、前向きに望むことが必要でしょう。信頼し、頼りにしている指導者に褒められると、気持ちが高揚して「やる気」が出てくるでしょう。

[やる気の出る練習]
 やる気が出るような練習も大切です。つらい練習ばかりではなく、選手たちが興味あるものを察して取り入れていくことも必要です。選手たちにとってつらい練習も、強くなるためには必要うなことかもしれませんが、むしろ面白い練習をアレンジしていく事が、選手たちのやる気を引き起こすことも有るのです。

 ゲームライクな練習も選手たちが最も興味をもつ練習でしょう。例えばそこで余りにもディフェンスが弱かったので、ディフェンスの練習をするとします。ここで大切なことは、そのディフェンスの練習を「どうやるか」ということを教えるのではなく、「何故これをやるのか」を教えることが大切です。やみくもに「ディフェンスが弱いから練習するんだ」とか「絞ってディフェンスを強くするんだ」と指導するのではなく、具体的に選手たちに明確なイメージを与えてあげる。例えば、「ここまで頑張れたんだけど、あと30センチ足が出れば、守り切れるからやってみろ」とか「あと5センチ膝が曲がっていたらいいディフェンスになるぞ」等といった具合です。更に噛み砕いて言えば、“何故膝が曲がっているといいディフェンスなのか?”腰が低くなり、腰が低いと守る幅がひろくなる…・・といったように、“何故そうしなければならないのか?”ということも明確に伝えたいものですね。

 練習というとつい、どうやるのか、ということに意識が執着してしまいます。同じ練習でも選手たちが納得しながら練習すれば、一気に視野が開け、バスケットボールそのものにも、より興味を抱くことになるのでは? まさに“やる気”への近道でしょう。基本を理論的に理解させることも、選手達が成長していくためには大切なことではないでしょうか。

[叱ることがたいせつなときも…]
 今までお話してきたように、選手たちをやる気にさせるためには、興味をもてる練習をする、成功させたときはしっかり褒める、ということに尽きますが、気をつけなければいけないのは、選手たちがやってはいけないことをした時には、きちんと“叱る”ということです。選手たちに媚びることなく、指導者は正しいことを厳しく指導しなければならない、ということが基本に有る筈です。バスケットボールはチームスポーツです。その中で、チームでやらなくてはいけない事をきちんとやり遂げたり、チームの為に良い仕事をした場合は、本当に心から褒めてあげると良いでしょう。そのためには、「やってはいけない事」の指導者の基準を、選手たちに日頃から理解させ、伝えておくのも大切ですね。それは日々の練習や試合の中で養ってっていくもので、その基準は、場合とか、場面とか相手によって絶対に変えてはいけないものです。自分の基準に信念を持って選手たちに接し、その基準を選手たちが理解してくれば、チームのベースは殆どでき上がったと言っても過言ではありません。

 難しい事のようですが、指導者は選手たちを育てる上で、プレイに対しても、選手たちに対しても正しい判断することが、とても大きな要素になってくるのです。

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