高木さんのコーチングフィロソフィー

第2回 選手の長所をのばす

[選手の資質を見抜く]
 バスケットボールを教えていく上で、陥りやすい間違いとして、「小さいからガード、大きいからセンター」といった先入観を持ってしまうことが上げられます。確かにバスケットボールは大きい方が有利であり、大きければ「センター」=「レーンの中で頑張る」といった図式を思い浮かべがちです。しかし、ゴール下で体を張って頑張るということは精神的にも、肉体的にも大変な強さを要求されるのです。タフに鍛える方法はいくらでもあるのかもしれませんが、体が成長途中の選手に強さを無理じいすると、逆にそれが負担になってしまう、ということもまた事実なのです。人間は自分の体が大きくなれば、自分の幅というものを自然に理解し、意識していくはず、自分の体の容積でポテンシャリティーを発揮するものなので、無理じいをしてはいけないことを覚えておきましょう。大きくてもボールハンドリングが良ければ、ガードにしてもいいじゃないですか、短所を無理に修正しようとしてはいけません。選手の資質を考え、長所を伸ばしてあげることがとても大切なことなのです。

 例えばシュートはめちゃくちゃ入るけど、ディフェンスがザルという選手がいたとします。そういう場合にディフェンスがだめだから使えないんだよね、という判断を簡単にしていませんか? もしくは徹底的にディフェンスをたたき込もうとする。そうするとその短所を直すのに時間がかかって、やっと少し直った頃にはすっかりシュートも入らなくなっていて「なんだただの選手だったの?」といった評価や判断を勝手に下してしまいがちです。そうではなくて、短所を補うくらい長所がぐんと伸びてくれば良いという考え方をするのです。  ディフェンスがザルで良くシュートが入る選手には、それはそれでいいと考えるんです。「シュート入れるのがお前の仕事なんだから絶対決めてこい!」と教える。ディフェンスの弱いところは、「バスケットボールってチームスポーツなんだからみんなで守ろうよ! 」と教える。そうすると自分でもいくらシュートが入ってもあんまりやられたらみっともないからと考えて、少し頑張るようになるかもしれない。でこぼこしている各々の選手を全部平均にしてしまわないように気をつけましょう。自分でバスケットボールはこういうもんだと思い込んで、その型に押し込めてはいけないのです。こういう子供たちだから、こういうバスケットボールなんだと臨機応変に考えられる視野の広さを養ってください。

選手の資質というのは、何もバスケットボールに関することだけではありません。人間としての長所だって、そのいくつかがコートの中で反映されることだってあるのです。物怖じしないとか、何かあるとすぐけんかに行ってしまうとか、それだって長所かもしれません。例えば、今年のチーム元気ないんだよなぁっ、ていう時にやたらつっかかっていくやつがいる。その選手を使っているうちに何となくチームが元気になって、ゲームに活気がでるかもしれない。バスケットボールはすごく上手だけど、生活態度がいまいちなってない、そういう時も簡単にこいつはこう、と決めていませんか? 「いいんだよ、お前バスケットボールで一流になれば、それでいいよ。でも学校の中でバスケットボールをやっている以上、とにかく学校だけは出てこないとしょうがないぞ」と指導していく。何が長所で何が短所か、それは一概に決められるものではなく、また選手の資質も可能性も無限なのです。選手の人間としての長所もきちんと見つけられるような視野と、人間としての幅を自分自身が養ってほしいものです。


[選手も指導者もOKで]
選手が努力して少しずついろいろなものを築いてくれば、それはいずれ必ず結果に反映されるもの。もちろんその時にはきちんと褒めてあげなくてはだめです。そこまでたとり着いたのは選手がきちんと努力をしたからなのです。選手が努力して得たもを、自分のことのように喜んで評価をしてあげてください。勝った時でも負けた時でも必ず得るものがあるはずです。I am OK. You are not OK.(俺はいいコーチ、お前はだめな選手)ではなく両方がOKでやっていくこと。選手を認めて俺もいっぱい勉強していい指導者にならなければ、という状態が強いチームの要因です。

いかがですか? チームの選手たち全員の人間性を考え、各選手の個性を把握していくだけでも指導者は大変な仕事です。コーチも勉強が必要なのは言うまでもありません。クリニックに出たり、講演会に参加する、雑誌ひとつを読むにしても自分なりのアンテナを張っておく。スポーツ選手だけでなく、いろいろな人の話を聞いて自分の中に吸収していく。それを自分流にそしゃくして選手に話してあげる。練習は興味が持てるよう、色々な方法を考えてあげるけど、自分の信念を曲げてはいけない。コーチとしての切り札を何枚持つことができるか? それが指導者にとって最も重要なことです。

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