| 第1回 指導者に本当に必要なことを考える |
|||
| [コーチングフィロソフィーとは?] コーチを目指そうと思ったら、バスケットのテクニックだけでなく、まず選手たちの人生の指導者になる、というぐらいの心構えが必要なのではないでしょうか? 事実、コーチとは選手の将来に大きな影響を与える仕事です。選手たちが将来、バスケットをやっていたために、きちんと物事を考えられるようになるのか、きちんと生活していくことができるか、何があっても強く立ち向かっていく勇気を持つことができるか、ということを教えることがコーチの一番の大きな仕事だと思っています。そして、バスケットも人生も成功するために、いかに強く前向きに努力するか、ということが大切なのです。 バスケットがスポーツであり、勝敗を決するものである以上、勝利は大きな目標になります。勝者に対する賞賛は惜しみなく送られるべきでしょう。しかしながら、ただ単に「勝つこと」のみを追求するコーチの姿勢というのは、必ずしも選手たちにプラスに作用するわけではないのです。どういう目標を持ち、その目標に向かって、チーム一丸となっていかに努力を重ねたのか、というプロセスを重視してほしいのです。 目先の勝利にこだわり過ぎると、どう練習するのか、どういうオフェンスでどういうフォーメーションを使うのか、ということのみに関心が集中してしまいます。それらはほんの目先のことに過ぎません。選手たちをしっかり育てるということを大きな目標として頑張って欲しいのです。 また選手が小学生でも中学生でも、相手は同じ“人”であることを忘れてはいけません。子どもとして扱うのではなく、同じ“人”として接することが大切でしょう。そのためには、常に自分も勉強し、考え、反省し、教え、教えられながらコーチとしてのキャリアを積み、ともに成長していかなければなりません。 私の監督生活を思ってみた時も、「あぁ、生きている“人”を相手にしているんだなぁ」と改めて考えさせられ、選手たちから教わる場面がずいぶんありました。子どもたちのほうがこれから先、自分よりもより長い人生を歩んでいくわけです。ですからバスケットを通して、子どもたちと接する限られた期間の中で、コーチの哲学が、子どもたちの将来の可能性を育てると考えることのほうが、勝敗よりも重要なのではないでしょうか。大げさでなく「“人”を育てる」ということが一番の仕事であり、そこに喜びがあると思います。そしてそこには、何よりもバスケットが好きで、バスケットに対する情熱があってこそ、伝わるものがあるはずです。 これらのことが基本であり、ピラミッドの土台だと思ってください。つまり土台が無ければ、その上に何も積み上げていくことはできないのです。自分のフィロソフィーがそのままチームを作り、その教えが選手の人生に大きな影響を与えることを忘れずに、コーチも選手も前向きに頑張ってください。 [何が重要なのか?] 難しいことかもしれませんが、初心を忘れず、自分を見失わずに、自分のベース(フィロソフィー)を守って教えていくことが大切です。また勝ったから優秀なコーチであるとは限らないということもことも覚えておいてください。例えばアメリカの有名なコーチ、ディーン・スミス(ノースカロライナ大)、ボビー・ナイト(インディアナ大)の両氏は、しょっちゅう勝っているわけではありません。しかし、コーチとして高く評価されているのは、しっかりしたポリシーを確立しているからなのです。両コーチの下で育ち、NBAで成功した選手の数を考えると凄いものがあります。それは単純に自分のチームが勝つことだけに執着するのではなく、選手の将来性まで考えて、基本に忠実に育てているからではないでしょうか。 野球を例にすると、小学生の頃から勝つために執着し、変化球を投げさせ、選手の肩を壊してしまうのではなく、大リーグまでいく可能性と素質を考えて、直球で勝負しながら基礎体力を育てることが必要なのではないでしょうか。選手の個性やキャラクターを生かし、長所を多く引き出してあげることが大切なのです。そして勝つためだけではなく、自分がチームを作る時に掲げた目標をいかに達成するか、ということ忘れないでください。大きな目標を達成するために、目の前の小さな目標を達成し、それを積み重ねていきながら、常に努力していくことがコーチに与えられた課題です。コーチとして成功を収めることは、また人生において成功することと同じなのです。 指導を始めたら、目先の勝敗ばかりに気を取られないようにし、長く続けていくことによって、「あのコーチが育てた選手は素晴らしい」と後々言われるようになるほうが、ずっと価値があり、貴重なことだと思います。勝敗は瞬間的な結果に過ぎませんが、目標を達成するための努力を惜しまない選手、そしてチームを育てることは、その勝敗以上に重要なコーチの役目ではないでしょうか。 |
|||
|
|||
|
All copyrights reserved by BASKETBALL-ZINE CONSORTIUM |