2010.07.24
ウィスマン代表、スタート2か月での位置

カギを握るのはディフェンスであり、司令塔・田臥からの速い展開(7/7、東莞レオパーズ戦より)
5月20日にスタートを切ったウィスマン率いる男子代表について、現時点までの活動報告。
■活動開始時点の記事
「ウィスマン日本代表」スタート~アジア10位から復活へのプロセス (Web Sportiva)
■密度が濃い練習。選手たちの口からは「充実して、楽しい」
昨年のホッブスHCの時もそうだったが、ハードに練習をすることを求める外国人HCの気質がそうさせるのか、選考段階のこの時期はとても緊張感がある雰囲気で練習が行われている。ただ今回は昨年とは少し違って、ウィスマンHCが日本人選手と顔なじみのせいか、緊張感の中にもみんなで盛り上げていこうという姿勢が感じられ、声がよく出ていて活気もある。
ウィスマンHCの基本的な考え方やスタイルを浸透させるために、男子にしては1回の練習時間が2時間半から3時間と長く、ずいぶんと詰め込んでやっている(ウィスマンHCはリンク栃木でもハードにやっていた。女子の世界では練習を“やり込む”ことで精度を上げているので、これくらいが男子の通常になってほしい)。トランジションの速い展開の中で、約束事を徹底させるディフェンス・ローテーションの確認、マンツーマンとゾーンを併用したチェンジング・ディフェンス、シューターを生かすフォーメーションなどもやっていた。
「確かに、最初からかなり多くのことをハードにやっています。どういう選手がいるのか見たいので、できる限りの選手を集めたし、(セレクション段階で)自分のコンセプトを多く伝えて、そこでどれだけのことをピックアップして学べるかも代表選手の資質だと思っています。もしかしたら、選手にはゲームで使うこと以上のことを教えていることもある。そういった中で、誰がその練習のスピードについてこれるか見たいというのもあります。実際のゲームではもっとシンプルにしていくので、選手が成長した時点でいくつかのことは削っていくと思います」(6/22、ウィスマンHC)
セレクションの段階だからこそ、コーチの意図することに対して、どれだけの適応能力があるかテストしているというわけだ。
「色々なことを取り入れて練習しているので頭で考えないといけない。集中力が求められる。やりがいがあって充実している。2番は競争が激しいポジション。自分は日本代表でもJBLでも、常に競争していきたい」(6/22、岡田優介)
「トム(ウィスマン)はいろいろな知識を持っている人。今までと違ったバスケを勉強するのは楽しい。トムのゾーンを教わったとき、これで俺らは(セミファイナルで)やられたのか! と思いましたもん(苦笑)」(6/22、木下博之)
■初お披露目はコンセプトの伝わらない試合
約1か月半の強化ではじめて公開試合をしたのが、7/7に行われた中国CBA(プロリーグ)東莞(ドングアン)レオパーズ戦 。ここではディフェンスがまったく機能しないことで、シュート確率も悪く、ロースコアの試合になってしまった(55-71)。最初の試合ということもあり、エントリー全員を起用して試したために、リズムがブツ切れで、チームを盛り上げる選手もいなかった。
比較的多くエントリーされているリンク栃木組、パナソニック組の組み合わせでコートに立つことも多かった。そのことについて質問すると「今は選手全員をプレイさせて様々なコンビネーションを見ていきたいというのがある。信頼できるコンビネーションを作っているところ」(ウィスマンHC)
セレクションを兼ねているとはいえ、チームコンセプトがあまりにも伝わらなかったデビュー戦。このチームの“肝”となるのは何か。それはディフェンスだ。ウィスマンHCは常に「自分たちのスピードという優位性をコートで出すには、ディフェンスがより強くなくてはならない」と話す。
求めていることは激しいプレッシャーから相手のミスを誘い、足を動かしてリズムを作ること。フルコートで当たる体力も必要。リンク栃木がファイナルで見せた運動量の多いディフェンスは主にゾーンだったが、マンツーマンとゾーンのチェンジングを用いていた。ディフェンス・ローテーションの約束事はあるものの、時に個人の判断や創造性も光り、長く練習を積んできた者同士が出せる呼吸の良さもあった。ディフェンスを徹底させるためには時間が必要だし、始まったばかりの今、完璧にできるわけがない。だからディフェンスが機能しないと、各個人が何をしていいかパニックになる恐れがある。それがデビュー戦で出てしまった。
■アーリーオフェンスの理想論
「目指すバスケットはアップテンポなリズムでファーストブレイクを出すスタイル」とはウィスマンHCが就任当時から言っていること。理想論を踏まえてではあるが、さらに、わかりやすくウィスマンが説明した。翌日に東莞レオパーズとの試合を控えた7/6の公開練習でのことだ。
「24秒というショットクロックがある中でその半分、12秒くらいの早い時間で攻撃することが好ましい」
12秒で攻めることの意図は身長の低さをカバーするためだ。速く攻めることで自分たちのリズムが出てきて、オフェンス・リバウンドに入りやすくなること。相手が対応できない速い時間帯でゴールにアタックすることで、(ファウルによる)フリースローをもらいやすくなることが挙げられる。ディフェンスとオフェンスはどちらかだけが良くてもだめだし、ディフェンスを頑張ることでオフェンスへの相乗効果が出てくるもの。
ジョーンズカップで4勝2敗の成績を収めてチームが上昇してきたのは、目指すディフェンスが少しずつ機能してきたことと積極性が出てきたことが要因。
ここまでが現段階の日本代表だ。今日、7/24からのレバノンとの親善試合では、日本のファンの前でお披露目することによって、強化の第一段階でどこまでできているか、確認するいい機会になる。
■このチームの目標は何か
日本協会は常々、「オリンピックや世界選手権に出るのが目標」だと言う。掲げる目標が壮大なわりには、これまでの強化はすべて現場に任せっきり。ヘッドコーチになった人の哲学と練習法に頼るしかないのが現状。本気で2014年までの任期をウィスマンに任せるのであれば、長い目で見て強化を継続してほしい。
ケガ人が続出し、ヘッドコーチが変わり、大会前に十分な練習ができずに心身のバランスが崩れて惨敗に終わった昨年のアジア選手権。身長が、技術が、という前に、やれることすらやらずに“戦わなかった”チームの姿勢に怒りが込み上げてきた。残念ながら、日本という環境の中にだけいても戦う意識や意欲は自然と出てくるわけではない。意識を高めていくためには、試合や実戦の機会を多くして、そのつど出てきた課題を修正し、自信にしていく作業が必要なのだと思う。8/7からのスコビッチカップでは世界選手権を前にしたチームと戦って何を試すのか、11月のアジア大会では何位に入る、といった具体的な目標を立てて臨んでほしい。
ウィスマンHCが掲げる今年度の目標は「チームの基盤を作ること、チームの風習を作ること、アジアの中で権威ある存在として見られるようになること」
具体的に示すことが難しい目標なだけに、来年のアジア選手権までに、それらを判断するための試合・遠征機会をたくさん作ることが、今、日本協会のいちばんすべきことだと思う。
【参考】他国の強化
※2年後のロンドン五輪出場を目指すヤング・フィリピン代表(SMART Gilas=今回のジョーンズカップに出たメンバー)。昨年度、ライコ・トローマンHC(07年アジア選手権でイランを優勝に導いた)が就任してから半年間で行った遠征先は日本、セルビア、ジャカルタ、デュバイ、オーストラリア、アムステルダム(昨年5月の日本代表との試合は非公開で行われた)。
※7/7に日本と対戦した東莞レオパーズは、09-10シーズンはリーグ11位。今シーズンは、06年世界選手権と08年北京五輪でオーストラリア代表を率いたブライアン・ゴージャンHCを迎えた。シーズンは12月開幕とまだ先だが、「優勝することが目標」(ゴージャンHC)と、早くもスタートを切っている。すでにフィリピンとヨルダンと試合をしてから来日。日本との試合後には「リトアニアでトレーニングをする」とヘッドコーチは言っていた。





