2009.08.27
【FIBAアジア2009】負のスパイラル
FIBAアジア選手権レポート
「戦う以前のチームだった日本代表」

■指揮官交代に調整不足…
■心も体も壊れた日本代表
6月の東アジア選手権でようやく新しい一歩を踏み出したばかり日本代表が、たった2か月後に崩壊してしまった。中国・天津で行われたFIBAアジア選手権(8月6日~16日)は、過去最低の10位という成績もさることながら、その内容は目もあてられないほどの惨敗だった。
7月に再集合した日本代表は完全に方向性を失ってしまっていた。東アジア選手権後、ホッブスHCの体調不良が告げられ、倉石平HCに指揮官が交代。アメリカ遠征で叩きのめされ、台湾で開催された国際招待大会・ジョーンズカップでは多くのケガ人を出し、大会運営側の責任とはいえ食中毒事件まで起きて、選手のコンディションは最悪のまま本大会を迎えることになる。
天津入りしてからも災難は降りかかる。司令塔の柏木真介が足首に慢性疲労の痛みを抱え、突破力で流れを変える桜井良太も腰を痛めて戦力にならず。センターの伊藤俊亮は発熱のため順位決定戦に欠場。今大会新たに招集された正中岳城に至っては、日本協会とFIBAアジアとの選手登録における認識の違いで、メンバー登録できないという前代未聞の事態に陥った。そして極めつけは、キャプテンであり得点源の折茂武彦が急性胃腸炎で開幕から3試合の欠場。
戦う体ができていない日本はディフェンスから崩れ、一つのミスが出ると歯止めが効かなくなるほどズルズルと後退していった。選手間で何度も立ち直ろうと話し合いの場を持ったとは言う。だが、自分たちのプレイができない苛立ちから心まで折れてしまい、戦うコンセプトが見えない覇気のない姿をコートでさらけ出しす体たらくぶり。決勝トーナメント進出をかけて戦ったチャイニーズ・タイペイとは体力、気力面で差をつけられて20点差の大敗。天津のコートにいた日本代表は心も体も壊れた戦う以前のチームだった。
唯一、勝負になったのは9位決定戦のカザフスタン戦。だが、最後の最後で失速。最後にエースが攻めたカザフスタンとの差が出て、これまでの日本を象徴するかのような逆転負けを喫し、過去最低の10位で大会を終了した。

ディフェンスから崩壊した日本
■責任転嫁の中で起きた
■負のスパイラル
今大会は中国の牙城が崩れ、イランが優勝。3位にヨルダン、4位にレバノン。この数年、強化を続けてきたフィリピンもベスト8入りし、着実に台頭してきた。特に帰化選手の加入やバスケットボール先進国からの外国人コーチを招聘して力をつけてきた中近東の勢力が押し寄せていることは、2年前“ホームコート”徳島で行われたアジア選手権や、2006年のアジア競技大会(カタール・ドーハ)でも肌で感じ、痛い目に遭っていたはずだ。
倉石HCは今大会の惨敗を「負のスパイラル」とみずから表現したが、ここ近年、まさに進化するアジアの中で日本だけが、低迷するスパイラルから抜け出せないでいる。
そして、この“負のスパイラル”を改善しようと、今年度からデイビッド・ホッブスHCを招聘し、日本独自のバスケットボールの構築を求めた改革を進めていくはずだった。なのに、そのホッブスが「体調不良」を理由に退いてからは、まるで別人のようなチームになってしまった。たった2か月前、東アジア選手権ではやろうとしていたリバウンドやディフェンスの意識がまるでコートに反映されていない。
今回、もしホッブスがヘッドコーチを続けていたとしても、たった4か月の強化では、アジアでの日本の位置は変わらなかったかもしれない。それほど、フィジカルにしても、連携プレイにしても、アジア上位と日本は力がかけ離れていた。
だが、強化を継続していく方針であれば、今回たとえ結果が出なかったとしても「いつの大会までに、どんなスタイルで、どの成績を目指す」といった方向性を見つけ出すことはできたのではないだろうか。
今回ショックだったのは成績そのものより、ようやく始まった強化体制が、またもや崩れてしまったことと、あまりにも戦う姿勢がない日本代表を見せつけられたことだ。なぜ、ここまで心が折れてしまい、戦う姿勢が出せなかったのだろうか。
チームが崩壊した原因は一人一人の自覚のなさからくる「責任転嫁」に他ならない。天津で会った選手たちからは「指示が明確ではなかった」「どんなバスケをするのかわからなかった」とヘッドコーチが示す方向性が不透明だとの声が出ていた。当の倉石HCは強化部長から急遽、采配をふるう立場になり、「ホッブスのやってきたことを受け継ぐ」とチーム作りを進めたものの、時間のなさから「チームを掌握できずに無難に戦ってしまった」と打つ手がなかったことを大会後に露呈している。
天津に出発する前からキャプテンの折茂は「コートに立つのは誰でもない選手自身。ヘッドコーチが変わったってやるのは選手たち。自分自身がやるべきことをやらなきゃいけないんだ」とチームの和を訴えてはいた。しかし、その折茂も大事な1次リーグを欠場したことで、キャプテンとしての求心力を失ってしまっていた。リーダー不在、信頼という絆のないチームは脆くも崩れた。

何度も話し合った。けれど、戦う体ができていない日本は心まで折れた
■バスケットボールに携わる人々が
■危機感を持つことから再建
もはや、長期的な展望に立って日本代表を再建しなければならないのは、バスケットボールファンなら誰もが思う願いだろう。だけどその前に、今すぐに心を入れ替えるべきことは、今大会で醜態をさらした「日本代表の在り方」から考え直さなくてはならないこと。
選手やスタッフたち“現場”が責任転嫁していたのも、ある意味、現場の能力だけで戦うことが限界に来ているからだ。今の日本代表は、国際大会で戦う術を知らずに放り出された現場だけが、難敵と格闘しているのが現状。
若手選手や指導者の育成、体格差を埋めるためのフィジカル強化や技術力の向上、国際情報の入手やスカウティングの完備といった「日本独自のバスケットボール」を構築するために必要なすべてをひっくるめた“協力体制”を作らないかぎり、そして目標設定をしないかぎり、急変するアジアの速度にはもはや置いていかれるばかりだ。
アジアで惨敗しようが、世界選手権の切符を取ろうが、日本代表はこれからも永遠に続いていく。また次はあるかもしれない。だけど、今回のような日本代表はもう誰も二度と見たくはない。見せてほしくない。ここでバスケットボールに携わるすべての人たちがやるか、やらないか。これからの日本代表の在り方は、バスケットボールに携わる人たち一人ひとりの危機感から再建していかなければならない。
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※この記事はある媒体に掲載される予定でしたが、掲載が不可能になったため、遅くなりましたが、ここに転載しました。成績がふるわないと媒体で記事が採用されなくなってしまう(他に優先する記事があるため)現実を突きつけられ、残念な思いです。
しかし、堕ちてしまった今だからこそ、声をあげていかなければならない。「今後、日本は何をしていくべきか」を考え、実行していかなくてはなりません。この記事には続きがあります。2次リーグの途中から天津に行ってきました。そこで見たこと、起こったこと、アジアの今を様々な角度から伝えていくことから始めます。





