2009.08.29

【FIBAアジア2009】アジア王者からの苦言〈2〉

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決勝戦、イラン×中国。マッチアップをするハメッド・ハッダディとワン・ジジ


 前回の続き。

 マティッチHCの記者会見での発言は、中国バスケットボール界への苦言というよりは、中国の国民性を批判したことになるのかもしれない。実は、このマティッチHCが中国に対して苦言を呈するのは準決勝後の記者会見に続き2度目。準決勝のあともマティッチ節が炸裂していた。

(※ちなみに、試合後は敗者と勝者が一緒に記者会見をするが、中国だけはいつも単独でやっていたので、マティッチ節が炸裂した決勝後の会見はイランと中国は別々で行われていた)

 中国メディアが試合のことよりも「ヤオ・ミンのことはどう思うか?」「イランにはハッダディ、今の中国代表には3人のNBA経験者がいるが彼らをどう見ているか?」など、中国のスター選手および中国のことばかり質問するものだから、キレてしまったのだ。

「バスケットボールはスター選手だけがするもんじゃないし、身長が高けりゃいいってもんじゃない。身長の小さいガードの良さを理解しているかい? バスケットボールはチームプレイだ!!!」

 中国メディアはそれでも懲りずに「準決勝では私たちがレバノンに勝つと思うか?」(中国の準決勝がこの後に行われるため)と矢継ぎ早に質問。これにはさすがに頭に来たのか「私は賭けをやっているわけでもないし、解説者じゃないのでわからない」とピシャリと質問を跳ね除けた。

 そして、記者会見の最後には翌日の決勝で対戦する可能性があるにもかかわらず、マテイッチHCはこのように言い放った。

「ヤオ・ミンだとかハッダディだとか、スターを活躍させるためにチームがあるわけじゃない。今はNBAの試合をしているわけじゃない。代表が戦うアジア選手権だ。

 だいたい、今日の試合でうちの6番がヨルダンの5番(エースガードのラシーム・ライト)を守ったファインプレーは見なかったのかい? 2次リーグでヨルダンやレバノンが中国に迫った事実をまったく伝えないとは、中国メディアはどうなっているのだ!

 中国はスター選手を持ち上げ、自分たちが正しいと思う“自国を誇る”やり方を追求しすぎている。こういった部分を中国の人が改善したらワールドゲームでもっと強くなれるのではないか」

 マティッチHCの言う通り、今大会の中国はワン・ジジとイ・ジャンリャンといった、インサイドのスター選手を頼りすぎた結果になった。故障によってヤオ・ミンを欠いたことを差し引いたとしても、中国人HCに変わった今年は、チーム作りがあまりにも無策すぎた。


 そして、マティッチHCの言う中国の「自分たちが正しいと思うやり方」はバスケットボールだけでなく、国際大会の運営面にも表れていた。今大会は多くの苦情が各国チームやメディアから出ていたのだ。

 試合後にスコアおよびスタッツがなかなか出なかったこと(公式サイトにはアップされていたが、現場ではなかなか出なかった。通常の国際大会ではありえないこと)、体育館の冷房が効かなかったこと、選手村ホテルの食事時間が限られていて、試合時間が遅いチームは試合後に食事にありつけなかったこと……。
 
 これらは各国から出た苦情により大会序盤には改善されたが、最後まで改善されなかったのは、外国人メディアへの対応。

 特にひどかったのは最終日。決勝には中国メディアがいつも以上に大挙して、プレス席が先着順のチケット制になった。「何のために取材ADを取得したのか!」と怒る外国人メディアが多数。しかも告知なし。大会運営に変更点や注意点などのインフォメーションが一切出ないのだ。そして、変更を知っている中国人記者ばかりが何もかも優先される。まるで、「中国人による中国人のための中国式の大会」に、各国メディアやコーチたちは辟易してしまったのだと思う。

 記者会見の内容は英語から中国語に訳されていたが、あまりにも短い訳だったので、すべてが訳されていたかは不明。だけれども、中国語に訳されたあと、中国メディアであふれかえっていた記者会見場は一気にシラケムードとなった。特に決勝後は大敗したあとだったので、中国メディアは黙るしかなかったのだ。

 そういえば、大差がついた決勝の4Qの途中に帰り出す観客や、コートに物を投げ入れる観客も随分といたが、これは「強くはなかった中国の現実」を受け入れたくない現われなのだろうか?


 これまでの中国はアジアの中で抜群の人材を抱えて、ダントツの強さで勝ってきた。「我々の国~」と誇らしげに押し切るやり方でも通用した。しかし、北京五輪でベスト8となり、さらに世界のトップクラスを目指すとなれば、もはやこれまでのやり方だけでは、バスケットボールも、国際大会の運営も、世界的には通用しない。そしてイランのように世界を知るコーチが就任した国にも敗れた。中国がアジアの中で鼻高々と君臨する時代は終わったのだ。

 
 決勝での記者会見の去り際、マティッチHCに最後の質問が出た。この問いかけには誠実に答えてくれた。

――近年はアジアで中近東勢が台等し、そしてついにイランが中国A代表を破って2連覇を果たしました。イランが真のアジアチャンピオンになったことがもたらす意味は?

「今大会イランがアジアで優勝した意味は大きい。イラン代表はイラン人のみで構成されていて、自国の選手を育成していくことに力を入れている。それが正しいやり方だと思う。イランはプロリーグが盛んで、多くの外国人選手と対戦することで国内の選手が上達してきたのだ。レバノンやヨルダンはたくさんの帰化選手を入れて強化をしている。これがいいか悪いかは別として、結果を残した国は何かしら投資をしている。努力をしたからこそ、ここまでの結果が残せた。投資と努力によってのみ、結果が得られる」


Posted by yota at 23:51  FIBAアジア選手権