2008.08.27

北京五輪〈2〉アメリカvsオーストラリア

アメリカとオーストラリアの一騎打ち!

女子バスケットボールは、今大会もアメリカ、オーストラリアの2強の構図は変わらなかった。両国のファイナルでの顔合わせはシドニー、アテネに続き3大会連続。ともにエントリー全員を使ってタイトなディフェンスを展開する穴のないバスケット。さらに、相手がどこであろうと最後まで手を抜かずに、確実なリバウンドから(今大会、オーストラリアはリバウンド1位、アメリカはリバウンド2位)タフに走りまくるので、どこの国も太刀打ちできなかった。両国のタフさに付き合っているうちに、対戦相手は戦意喪失してしまうのだ。

ただ、スピードとパワー、選手層といった総合力ではアメリカが上回っている分、決勝ではオーストラリアが何かを仕掛けなければ難しいと思っていたが……。オーストラリアが仕掛ける前に、アメリカがインサイドで主導権を握り、ガッチリと守ることで、オーストラリアは何もさせてもらえないままに終わってしまった。結局92-65で27点もの大差をつけてアメリカが優勝。アトランタ大会から4大会連続となる金メダルを獲得した。

選手層、個人能力に死角がない女王アメリカ

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アン・ドノバンHCのもと、総合力で戦うアメリカ

スーパースターを揃えながら、あえてスター不在のバスケットを展開するアメリカ。オーストラリア以上に選手を満遍なく交代させるスタイル(一番出場時間が長いのは#11ティナ・トンプソンで一試合平均21.75分、控えの#15キャンディス・パーカーは16.5分)で、インサイドを主体に外角あり、速攻ありと多彩なオフェンスを展開する。そして何よりも光るのがディフェンス。#6スー・バード(176㎝/G/27歳)、#12ダイアナ・タラシ(182㎝/G/26歳)、)、#14ケイティ・スミス(180㎝/G/34歳)、#11ティナ・トンプソン(183㎝/F/33歳)、#9リサ・レスリー(196㎝/C/36歳)らベテランを中心としたスタメン組が激しいディフェンスを仕掛け、どんなメンバーの組み合わせになっても対応でき、誰もが出た時間帯をしっかりと仕事する。決勝戦での気迫はテレビ画面からも伝わってきた。

4年前のアテネ五輪までベテラン選手を引っ張っていたため、世代交代により2年前の世界選手権を落としているが、今大会は若手の台頭も目立った。ダイアナ・タラシは着実にアメリカの中心選手へと成長し、22歳のキャンディス・パーカー(193㎝)のようにダンクができる身体能力ある選手も出てきた。

アメリカの選手は個人能力が先行するスタイルのWNBAで戦っていながら、ナショナルチームでは総合力で戦っており、星条旗のもとに集まるとこうも戦い方が違うのか、という印象。まさしく12人の力でつかんだ金メダルだった。大会直前の7/28までWNBAのリーグを戦い、合宿期間は一週間にも満たなかったと聞いている。それなのに、ここまで見事にナショナルチームへと切り替わり、チームが融合できるものなのか。だからこそ、スター不在のバスケットを展開しているのかもしれないが、その点はぜひとも取材してみたかった。

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アメリカのディフェンス力にどこの国も手が出なかった。ディフェンスに定評がある#14ケイティ・スミス

決勝以外は完璧な出来だったオーストラリア

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オーストラリアはアメリカ戦以外は自分たちのスタイルを貫き通した。唯一、予選リーグのロシア戦だけ前半ビハインドを背負ったが(25-37)、終わってみれば75-55で20点もの差をつけていた。オーストラリアの誰が出ても終始タフに向かってくるスタイルに、ロシアは我慢できずにイライラし、散漫な動きになってしまったのだ。

オーストラリアといえば、世界選手権MVPの#15ローレン・ジャクソン(195㎝/PF/27歳)が目立つが、このチームの魂は162㎝の司令塔、#10クリスティ・ハロワー(33歳)。若いうちからWNBAでプレイし(98年には、日本代表のアシスタントコーチである萩原美樹子と同じフェニックス・マーキュリーでプレイ)、現中国のアシスタントコーチ、ミシェル・ティムズのあとを継ぐガードとして育成されてきた。がっちりした強い体から繰り出すドライブインと、前向きなメンタルでオーストラリアを束ねてきた。準決勝の中国戦では34分出場、14得点、8リバウンドと大暴れ。

今大会ブレーキになってしまったのは、WNBAプレイヤーである#7ペニー・テイラー(185㎝/F/27歳、今シーズンはWNBAでプレイしていない)。準々決勝で右足を痛めてしまい、準決勝は欠場。決勝はスタメンに復活したが何もできず、それ以前に予選リーグから動きがピリッとしなかった。アテネ五輪や2年前の世界選手権では大活躍していただけに、物足りない印象。だが、テイラーが不調でもその分はフォワードの#12ベリンダ・スネル(182㎝/SG/27歳)が気を吐いた。ローレン・ジャクソンは規格外のオールラウンダーだが、アウトサイドのプレイに偏る傾向がある。もう少しインサイドにポジションを取れば、チームが楽になると思うのだが。

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準々決勝で右足を負傷したオーストラリアの得点源#7テイラー


ピークを持ってくるのが難しかった世界最終予選組

今大会に言えることは、6月の世界最終予選(マドリード)を戦ったチームは、このオリンピックに照準を合わせるのがかなり難しかったということ。やはり、3か月の間にピークを2回持ってくることは至難の業なのだろう。世界最終予選に出なかったアメリカ、オーストラリア、ロシア、中国がベスト4だったのはもちろん実力があるからこそだが、それ以上に世界最終予選組はチーム力が噛み合わず、踏ん張りきれなかった印象。韓国にしても厳しい組み合わせにいながら、的を絞ったゲームに全力を出してベスト8入りすることができたのは、オリンピックにピークを合わせて調整できたからだろう。世界最終予選組のスタミナ不足が目立ったため、大会全体の勝負として見ると、淡白な試合が多かったのは残念。

世界最終予選を戦ったあとのオリンピックをどう戦うべきか。FIBAは「世界最終予選をオリンピック、世界選手権と並ぶ3大イベントにしたい」とインタビューで言っていたが(月刊バスケットボール9月号参照)、世界予選直後のオリンピックでは、ピーキングの難しさと、スタミナ不足からくる試合の淡白さが浮き彫りにされた形となった。とはいっても、まずは出場権獲得ありきなので、難しいところ。

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準々決勝の注目カードとなったロシアvsスペインは、ヨーロッパ1、2位の対戦。
スペインはロシアに前半リードしていながら、後半にスタミナが切れて尻すぼみ。
予選リーグでも中国に3点差で敗れ、いつものキレのいい走る展開ができなかった


Posted by yota at 16:22  取材の現場日記