2007.08.22
誰のためのバスケットボール界か
■理事会執行部vs評議員反対派 長引く争いに何の意味がある?
徳島でのアジア選手権は、悲しくも、日本のバスケットボール界の現状が映し出された“歪”(いびつ)な大会になった。
徳島でのアジア選手権(北京五輪予選)を成功させるのは日本バスケットボール界の使命であり、北京五輪に出場することは大命題だったはずだ。だが、現在の日本のバスケットボール界は、統括すべきトップの立場が内紛中で機能しておらず、選手を育成するための強化策にも一貫したものがなく、こんな危機状態の中では結果など出るはずがなかった。現在、理事会執行部と反執行部派(世界選手権の赤字補填による補正予算案にGOサインを出さない評議員の反対派)が泥沼の争いを繰り広げているが、これほど醜い争いはない。
内紛の最中にいる人たちに問いたい。あなたたちは、この大事な五輪予選の時に、なぜ、一丸とならなかったのか。流会を続けていることが全員の本意とは思っていない。中には一丸となって大会を開きたかった人たちもいることだろう。徳島に尽力した理事や役員の方も知っている。だが、理事会執行部も評議員もすべて含めて日本バスケットボール協会。なぜ、“自分たちが”徳島で開催すると決めたアジア選手権において、違う方向を向いていることに平気でいられたのか。
理事会執行部は60万人の競技者から登録費を集め、赤字補填にはその登録費を充てるにもかかわらず、また、世界選手権にはチケットを買って多くの観客が訪れているのに、赤字の説明は一切ない。また、出してしまった赤字に対して、今後どうやって改善していくかの展望も示さない。これはあまりにもファンを置き去りにした行為ではないか。
反執行部派は理事会執行部に不信感があるからこそのボイコットだというのなら、流会を繰り返している発展性のなさも、やっていることは執行部と同じではないのか。予算案の対案も、トップに立つべき人選の選出もない。ボイコットを続けている様は、「赤字を盾に人事解散を迫っている」だけにすぎないのでは。
両者の争いは「世界選手権の赤字」が発端となっているが、今となっては肝心な予算案について話し合いをする意志はまったく見えない。両者の間には権力争いも垣間見える。まるで、パワーゲーム。泥仕合。この紛争にはバスケットボールは存在しない。バスケットボールが存在しているならば、何よりも大命題だった徳島のアジア選手権を一丸となって開催したはずだ。
アジア選手権のコートで、日本以外の国が見応えある試合を展開すればするほど、ホストカントリーとしてその場に立つこともできずに内紛を続けている事態が、悲しくもあり、恥ずかしくもあった。その一方で、大会の進行は運営サイドの努力と徳島のボランティアの力で着々と進行していった。それはFIBAの会長が褒めていたほどに完璧だった。だからこそ、その実、中身はバラバラだった日本バスケットボール界の実情に、余計にやりきれない思いが残ったのだ。
■勝負の年に完成されなかった日本代表。強化の継承はなし。
ホスト国でありながら強化の面でも手薄だった。
日本代表の敗因については様々なところで語られ、今後も追及されるべきことだが、ここでは自分も誌面に書いた「強化の継承」について述べたい。今大会の日本代表の戦いはあまりにもふがいなかった。なぜ、1年前にできたディフェンスが、向かっていく気持ちが今年は出せなかったのか。
その原因の一つには、昨年までジェリコ・パブリセヴィッチ氏が行った「フィジカルとメンタルを世界基準で鍛えた強化」の継承がなかったことにある。昨年の世界選手権が終わったあと、折茂武彦、古田悟、節政貴弘はこう語った。
「この強化を続けていけば、必ず日本が世界で通用する時が来る」と。
3人とも98年の世界選手権に出場し、世界に何も通用しなかった時代の日本を知る面々だ。答えは体を張って一試合ディフェンスができるようになった選手の体が示していたはずだ。身体能力に恵まれず、国内リーグにおいてタフな環境で戦うことのない日本人は時間を要して“鍛え続けて”こそ実になっていくもの。これこそが、日本が国際大会を戦う上での「一貫した強化のファンダメンタル(基本)」になりうるものだった。今年はこれまでの蓄積があると見なされていたのか、この継承がなかった選手の体と心が「世界基準」から遠のいていったことは、アジア選手権の戦いぶりを見ても明らかだった。
鈴木HCは昨年9月、指揮官に就任した時に「緻密な日本人の特性を生かし、一番確率のいいオフェンスとディフェンスをやりたい」と語っていた。そのコンセプトは明確だったが、鈴木HCのオリジナリティとは、そうしたフィジカルとメンタル強化の土台があってこそ、通用するものだったのではないだろうか。さらに言えば、大会前に「12人を使いこなしたい」との方針も聞かれたが、それをするには、あまりにも実戦で試す場が少なすぎた。そうした継承されなかった強化は「ハングリー精神が足りなかった」(鈴木HC)という、今さらながらの敗戦の弁につながった。時計は後戻りしてしまったのだ。
ジェリコHCが行った4年間の強化および世界選手権で「何が世界に通用して、何が通用しなかったのか、それをもって今後、どんなビジョンで進めていくのか」という検証が、いまだ、杉浦強化部長をはじめとする強化トップ陣からはない。また、日本代表のことを「意外と貧弱」と評価した石川専務理事。「貧弱」の部分は同感せざるを得なかったが、「意外と」という言葉は、自身が強化内容を把握せず、国際舞台における日本の位置を見極められずにいるからこそ、出てくる言葉ではないか。それは強化のトップが発言するものとしてはあまりに無責任すぎる。
日本はジェリコHC以前、いつの時代も、強化の継承なきまま、その時に就任したHCや現場に任せるといった付け焼刃な指導を繰り返し、同じ過ちを犯してきた。肝心の強化に携わる人たちが、確かな目を持っていなかったことも、これもまた日本バスケットボール界の歪んだ事実。
日本として、アジアに、世界に通じる「一貫した強化のファンダメンタル」を作ること。そして、それを実行できる人材確保が急務だ。
■日本バスケットボール協会に求めること
先に書いたように、徳島のアジア選手権を一丸となって開催しなかったことについては、理事会執行部も評議員も同罪だと、私個人は感じている。だが、これらすべての騒動は、すべて、日本のバスケットボール界のトップである幹部の統括能力・経営能力の欠如から起きた悲劇だ。
世界選手権の赤字問題にかぎらない。強化の問題、プロ化の問題、分裂したリーグ問題、すべて将来の展望が見えない。JBLの企業が「YES」と言わない現在、プロ化はすぐに踏み切れる問題ではないかもしれない。だが、すぐにプロ化できないのならば、ホーム&アウェイで試合数を増やして体力強化をすることもできた。チームが興行権を持つことで、チームが独自のアイディアで競い合い、観客動員数を増やしていくことも、もっと早くからできたことだ。これらは、bjリーグでは既にやっていること。プランが完成するまでに時間がかかっても、軌道修正してもいい。だが、そのプランはどこに向かって進んでいて、今どの過程にいるのか、そのゴールはどこにあるのか。将来の展望がまったく見えない、わからない、伝えていない。だから、ファンは憤りを感じている。
今、行われるべきは、前にも後にも進まない閉ざされた流会ではなく、将来ある意見交換と、世界に向けた目を持って動いていくことではないだろうか。そのためにはまず、①一刻も早く予算案を通すこと(競技者やファンに説明も忘れずに)。暫定予算でやっているシワ寄せは、さらなる赤字を生みかねない。②昨年の世界選手権と今年のアジア選手権の強化と運営について、検証・総括すること。ここから再スタートだ。それができない統括(協会幹部)など、今の日本には必要ない。
協会の内紛、一貫性のない強化。こうした中で起きた徳島の悲劇は二度と繰り返されてはならない。





