2007.08.03
日本の北京行きがなくなった長い1日〈3〉

■最終試合には勝ったが…
日本にとってはグループ3、4位をかけた試合。ヨルダンにとっては、勝てば1位、負ければ4位という、まさに天国か地獄を味わうことになる試合だった。そして、日本が勝てば、カザフはグループ1位が決まる。韓国だけは、日本が勝とうが負けようがグループ2位が確定していた。
すでに準決勝進出の道がなくなった中で、モチベーションを保つのは難しかった。「韓国戦では緊張してしまい、自分のプレイができなかった」と悔やんだ竹内公輔の場合は、韓国対カザフの試合をホテルの部屋で一人で見ていたという。
「テレビを見ながら韓国を応援していたんですけれど、韓国が負けしまい、北京に出られないと決まってからは、(気持ちが)かなり落ちました。でも、ミーティングで佐古さんが盛り上げてくれた。最後まで頑張って5位になろうと目標を切り替えてからは吹っ切れてやれました」
韓国に敗れたあと「明日(ヨルダン戦)は最初からディフェンスで前から当たり、攻撃もガンガン飛ばしていきたい」と悔しい気持ちをぶつけていた桜井良太。韓国とカザフの試合をやっている時はホテルの部屋にいたが、テレビのスイッチは入れてなかった。
「あまり、ハラハラしたくないんです。でも隣の部屋から声が聞こえてきて、あーと思ってテレビをつけたら韓国が負けていました。気持ちを切り替えるのは難しかったけれど、でも韓国に負けた時点できついかなと感じていたので…。やっぱり自分たちの力で勝っていかないと、オリンピックというのは出られない。韓国が負けたことを知って落ち込みましたけど、佐古さんから『これからの試合、気持ち入れてやるかやらないかは、自分しだい』という話があって、次は自分たちがやらなきゃいけないと思いました。これからは、もうどんな試合も無駄にしたくないです」
ヨルダン戦はこれまでの2次リーグの硬かった試合とはうって変わり、出足から飛ばして一時は20点のリードを奪う。あとがないヨルダンは終盤に猛チャージをかけてきたが、勝負所でシュートミスもあり、日本が71-68と3点差で接戦を制した。日本は2次リーグ初勝利。ヨルダンは勝てば1位だったが、負けたためにグループ4位へと転落した。
「大観衆の中で日本と戦うことはプレッシャーになり、それが20点という差になった」と、ヨルダン・パルマHCはガックリと肩を落とした。日本がカザフ、韓国戦で受けた「勝たなくてはならない」というプレッシャーを、今度はヨルダンが受けていたのだ。カザフを執念で逆転したヨルダンでさえ、大勝負となると硬さが見られた。急速に成長を遂げているアジアは今、試合ごとにどのチームがライバルになってもおかしくないほどの混戦になっている。オリンピックとは、こうした全てのプレッシャーに打ち克つチームしか手にすることはできない。

■「強化」の継承、「プライド」の継承を
目標を見失っていたチームを立ち上がらせたのはキャプテンの佐古だった。

「自分たちがどういう立場の人間なのかを考え、やるかやらないかは自分で決めろ。ここでやれない人間に将来はないだろうし、ここでやれる人間が経験を積んで次のステップを踏める。プライドを持って戦おう」
日本は大事な場面で力を発揮できなかったが、まだ戦いは残っている。佐古自身の言葉も、これまで多くの失敗を繰り返してきたからこその重みだった。そして鈴木HCは2次リーグ敗戦を受けて、今の日本に何が足りなかったのかを述べた。
「国際大会で戦うには精神面が弱かった。ハングリーさが足りなかった。そこを指導できなかった。負けたことは全部自分に責任があります」
毎度大会が終わるごとに、指揮管が変わるたびに聞いているこの言葉。何度同じ言葉を聞かなくてはならないのか。世界と戦うハングリーさを養うためにジェリコの厳しい追い込み指導があったにもかかわらず、そのジェリコが更迭されて就任したのは、国際大会で戦うハングリーさの度合いを知らなかったコーチ。そしてコーチ自身も「勝負」が終わった今に気付くことができた。日本が国際大会で戦えない一番の原因は「指揮管が変わるごとに“強化の継承”をしてこなかったこと」にある。いいかげん、このことを改善していかない限り、日本は進歩していかない。
世界選手権、五輪予選という大舞台の両方に出た若い選手は多くいる。佐古の言葉を借りれば、選手間で「プライドの継承」を続けていくことが、今後、日本が強くなっていくことにつながる。だからこそ、5-8位決定戦は、必ず前を向いて試合をしなくてはならない。





