2007.07.11
ホームで恥をかくということ
先日、女子代表キャプテンのキコ(榊原紀子)と話す機会があった。取材ではなかったのだけど、キコの口から出てくるのは「アジア選手権での後悔」ばかり。そこには、閉会式で満面の笑顔でいた姿は微塵もなかった。
「今思えば、目の前の敵に勝ちたいという思いで戦っていて『オリンピック予選を戦う!』という自覚に欠けていた。オリンピック予選とは、本当に勝ちたいと臨んでいるチームが勝つ大会だった」(榊原)
勝負事に惨敗して、笑っていられるほど能天気な選手たちでないことは、私だってわかっている。わかっているからこそ、どうして閉会式で満面の笑みでいられたのか、その光景を見た女子代表OGと首をひねってしまったのだ。彼女たちにしてみれば、五輪予選というプレッシャーを真正面から受け止めるだけの準備ができてなかった。惨敗したあとに気持ちを切り替えて3決に勝利したことで、いいムードで世界予選につなげたいとの笑顔だったと解釈している。
でも、辛い現実から目を逸らしてはいけないと、キャプテンは気がついた。キコは来年の世界予選に向けてこう言った。まだ誰が出るかわからない、としたうえで。
「来年の世界予選は、また大会前に召集がかけられるのでしょうか? リーグ中はなんとかならないかもしれないけれど、大会前だけの強化だけじゃ足りない。遠征にしても、自分たちで立て直すことが経験できるような、勝つのが困難な相手ともっと試合がしたい!」
アジア選手権の敗因は数多くあるけれど、一番にあげられるのは「対応力のなさ」だった。アジア選手権では、これまで遠征で対戦したチームより一段階上の“駆け引き”が待っていた。唯一、5年間負け続けていたチャイニーズ・タイペイに関しては、万全のスカウティングをして臨んだから倒すことができた。だが、いきなり中国に対応されては何もできなかった。練習でやってないものはできるはずがない。試合で格闘して乗り越えることでしか、対応力は身につかない。だからこそ、格上の相手と戦って苦労を味わいたいという、キャプテンの訴えは切実だ。
確かに女子代表が遠征する春先という時期は、各国の代表が活動をしていないため、毎年、対戦相手を選ぶにも苦労している。今回のオーストラリアU-21代表も明らかに格下だった。そんな格下相手でも、海外遠征は異国の地で慣れない生活をしいられることでタフになれる場。もちろん今後も継続してほしいが、今の日本に明らかに足りないのは、プレッシャーを経験できる場ではないだろうか。
ニュージーランドとの壮行試合。代々木第2体育館は満員の観客で埋め尽くされた。その光景を見て選手たちは「海外遠征のどの試合よりも緊張した」と口にした。案の定、ミスの応酬。この試合を見ていた女子代表OGは「実はアウェイより、ホームで戦うほうがプレッシャーがかかる」と言っていた。ホームコートで試合をすることは、声援がパワーとなる“地の利”がある反面、国民の前で成果を発表するため、評価の声がついて回り、余計なプレッシャーを感じなくてはならない。プレッシャーの中での戦いは人を成長させる。国民の前で恥をかけば、それを克服しようと努力もする。恥をかきたくない、と準備もする。女子はここ数年、日本での国際親善試合が少ない。キコが言う「自分たちで立て直すことが経験できる」格上の相手と、“ホーム”で試合経験を積む強化がもっと必要だ。
そして、ホームで日本代表の戦う姿を目の当たりにすることで、支援する側(ファンやメディア)は活動内容を理解し、時には檄を飛ばしながらも、一丸となって大会に送り出してあげることができる。
アジア選手権前、日本は一丸となって女子代表を送り出せてあげていただろうか。そうじゃなかった。その頃、日本のトップを司る日本協会は、理事会執行部と評議員の中で“バスケットボール不在”の権力争いの真っ最中だった(それが本意な人たちばかりではないにしても、今も続行中)。アジア選手権に臨んだ現場のスタッフと選手だけが(見えない)世界と戦っていたような気がしてならない。
来年6月の世界予選に向けて、ぜひ、日本中を転戦する壮行試合を開催してほしい。今回は敵地でパニック状態になってしまった選手たち。日本で世界予選を行う意向があるならなおのこと、国民の前でプレッシャーの場を与え、それに打ち克つ経験を積んでほしい。もちろん、世界予選を日本に招致する前に、「世界を目指した強化体制」を整えるのは言わずもがな。そうじゃなければ、今度はホームコートの本大会で、かきたくない恥をかくだけだ。
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男子のアジア選手権は目前。男子はその壮行試合ですら中止となった。これもまた、対戦相手とのスケジュールがあわなかったと聞く。これから日本で大きな戦いが待ち受けているというのに、ホームというプレッシャーの中で戦う経験をしておかなくて大丈夫なのだろうか? 恥をかくなら今のうちなのに。今回の男子代表は公開練習も少ないし、取材も制限されているぶん、なかなか情報が下りてこない。ヨーロッパ遠征の成果はどうだったのか? そして、本番に向けて快く送り出してあげる場はないのだろうか。そこで選手とファンが一体となることで「日本で五輪予選を戦う」のだと、今一度、両者が気持ちを引き締めることができる。それが、ホームで戦うということなのでは。





