2007.03.20
先手のトヨタ、後手の三菱

雪の中行ってきた。JBLスーパーリーグファイナル1、2戦@秋田。
雪が降ったり、吹雪いたりしたかと思えば、パァ~ッと晴れたり、曇ったり。
着いた時は「そんな寒くないな」と思ったけれど、ゲームが終わって夕方体育館を出る時は、
それはそれは寒くなっていて、夜には雪が積もってジンジンと堪える寒さ。
秋田のタクシー運チャンが言うには
「1、2月はそうでもなかったんだけど、3月になったらすごい“しばれる”寒さになってな」
ああ、“しばれる”という言葉を3月中旬に聞くとは思わなかった。
そんな中で行われたスーパーリーグファイナル。
ファイナル1、2戦。テレビには映らなかった情報(テレビ見ていないので、
解説者がどこまで話しているか、どこまで映しているか分かりませんが)と、
ファイナルの裏側を書いてみます。決してコラムではありません。感想文に近いけど、
あまりにもファイナル情報が少ないので、スーパーリーグファンのために。
メディアの中では、ファイナルではトヨタ優勢の声が多かった。
優勝を経験しているトヨタと、初ファイナル進出(正確には17年ぶりだが、選手たちは初)の三菱。
いくらリーグ戦で3勝1敗と勝ち越ししている三菱でも、
簡単に“ファイナルで3勝”することはできないだろう、と。
その通り、トヨタが連勝し、早くも王手をかけた。
でも、今年の三菱だったら、面白いシリーズになるのでは…という期待もあった。
だから、ここまでハマってしまう姿を見るのは…ちょっとキツイ。
トヨタの勝因は“ファイナル・シリーズ”としての戦い方を心得ていて、それを実行していること。
第1戦の重要さを知っていて、出足からダッシュしたこと。まずは、ここにある。
三菱は「5戦あるうちの3戦勝てばいい」と思っていたのだろうか。それは違う。
ファイナルは「先に3勝」したほうが優勝するのだ。
リーグ戦だったらともかく、1戦目のファーストクォーターを様子見で入ってしまった。これがすべて。
でも、これはある意味しかたなかった。三菱の誤算の一つは松島ウォルターブラウンの欠場。
持病のひざの痛みが悪化したのか「体調不良」(藤田HC)とのことで1戦目はDNP。
この穴を埋めたのがルーキーの佐藤託矢。
出足から幅を生かしたポストムーブでガンガン攻め、ミドルシュートのタッチもいい。
三菱にとって、いや日本の未来にとっても大収穫の23得点。
1戦目が終わったあとの記者会見でトヨタ側からも敵ながら「絶賛」の声があがったほどだ。
が、オフェンスではよくても、松島の穴はディフェンスに出てしまった。
三菱は今年からディフェンスを意識するようになったチーム。
ようやくチームで守る意識が出てきたところに、リバウンドとブロックに強い松島の欠場は痛かった。
チームとしてのディフェンス・ローテーションがうまくいかないためか、ちょっとしたところで穴ができる。
そこをトヨタは見逃さない。三菱がこんなにスコスコ抜かれることはリーグ戦ではなかったはず。
この布陣でのスタメンが決まったのは当日の朝だという。
三菱はセミファイナルを一試合多く戦って練習期間がなかったうえに、
ファイナルを戦う準備ができていなかったわけだ。トヨタとはこの差がハッキリ出てしまった。
三菱の誤算2つ目(これは特に2戦目に言えることだけど)。
攻撃の起点であるPG柏倉秀徳が、渡邉拓馬-桜井良太の長身ラインナップに抑えられていること。
また、得点源のハニーカットが古田悟の渾身のディフェンスの前にイマイチ乗り切れないこと。
さすがは世界バスケで世界のセンター陣に体を張った男、古田悟。本当に頼りになる存在だ。
それが古巣の三菱相手なら、なおさらだろう。
「僕が一番、三菱に勝ちたいと思っている」と宣言するだけある。
ディフェンスからリズムを作るトヨタは、相乗効果でオフェンスのリズムも良くなり
(というか三菱のディフェンスがプレッシャーをかけていないせいもあるけれど)、
拓馬、オバノン、キャンベルのシュートが入る、入る! 脚が動く、動く!
一戦目、桜井良太は躍動感あふれるダンクを2本も決めた。こうなると、トヨタはもう止まらない。
三菱が勝つなら1戦目だった。あれだけ内容が悪くても3点差まで追い上げる地力があるのだから。
でも2戦目のトヨタはファイナルの鉄則「勝てる試合はきっちり勝つ」べく、一気にたたみかけに来た。
1戦目のトヨタにはつけいる隙があったのに、2戦目はつけいる隙はまるでなし。
三菱が追い上げを見せると、ロイブルHCが絶妙なタイミングでタイムアウトを請求し、
三菱の流れをピシャリと止める。実に試合巧者だ。
先手のトヨタに対し、何もかもが後手の三菱。そんな感じの1、2戦だった。
これが、“3勝”しなければならないファイナルなのだ。
相手が仕掛けてきたことに対して、どう対応するかの駆け引き。一発勝負とは違うところ。
では、三菱はどう打開するか。ここが3戦目のポイント。
三菱の一番の問題は司令塔の柏倉のところ。試合後に聞いた話を総括すると、
本人もチームもそんなに「抑えられている」という意識は持っていないような気がした。
身長差約20㎝ある拓馬や良太にオールコートでマッチアップされても、
ハニーカットが拓馬や良太をブロックしてくれてボールを運んでいることもあり、
ボール運びをミスしているわけではないから。
三菱にとっても、柏倉に拓馬や良太がつくことは予想の中にあっただろうし、
柏倉は、高校や大学、国際大会でいつも自分より大きな相手とマッチアップしていて、
その辺はイヤというほど対策を考えてきている。その課題を打破できるようになったからこそ、
スーパーリーグというトップリーグでスタメンを張れるようになったわけだし、
チームをファイナルへと導く選手へ成長を遂げたのだ。
でも、このファイナルでは、自分より大きい選手が“オールコート”でついているのがポイント。
ゆっくりとボールを運ばされていることが、オフェンスの入りでリズムが狂う原因になっている。
柏倉は速く運んで、ボールをよく回して、いいテンポでゲームを作るタイプ。
ゆっくり運んできて「さあ、セットですよ」という展開は三菱(柏倉)のリズムじゃない。
そこからして、攻撃のリズムがワンテンポ遅れているのだ。
リーグ戦では「チーム」で攻めていたのに、今はハニーカットとヘールの「個人技」に走りがち。
なんだかんだいっても、三菱は柏倉とハニーカットで勝ってきたチーム。
この2人の活躍なくして勝利はない。または、「ビックリ玉手箱」の策を出すとか。
時々、大野篤史をビッグガードとして使うオプションを作っておいてもよかったかも。
大野篤史はここ最近は自分のプレイに迷いがあるというが、試合後にコメントを聞くと
チーム状況をよく判断できていて、何とか打開したいと静かなる闘志を持っている。
これが起爆剤にならないだろうか。
最後にもう一つ。秋田は会場が寒かった……。
秋田県協会の運営は良かったし、係員を務める能代工の選手たちの行動はテキパキして
完璧だったんだけど、ただ会場が寒かったことが残念。
秋田市立体育館はドーム型。これが厄介で暖房が入っていても暖気が下まで降りてこない。
観客席はあまり感じなかったかもしれないが、フロア上にある報道席やコート上には
スースーと風が吹いてくる。これが選手に影響していた。
1戦目、梶山信吾と折茂武彦の両シューターはコートに立つたびに手にハ~ッと息を吹きかけて、
手をこすりながら温めていた。走るたびに風が手の甲に当たって冷たかったとか。
2人とも手が温まらないため、最後までシュートの軌道がおかしかった。
シューターはボールに触れる時間が少ないから、その辺は繊細なのだ。
試合後に2人に話を聞くと、かなり泣きが入っていた。
2戦目は会場が満員だったから寒さは和らいでいたが、
梶山は前日の反省からか、ベンチにいる時には手袋をして、カイロで手を温めていたほど。
それでもシュートタッチは戻らなかった。ボールがうまく回っていないから余計に手が温まらない。
トヨタの場合は折茂がなんとかしなくても他の選手の調子がいいから問題ないが、
三菱にとって梶山の不調は大誤算だろう。
とにかく、3戦目までの2日間、三菱は悩んで、修正して、出直してファイナルに挑んでほしい。
3戦目は“ホームコート名古屋”なのだし、意地を見せてほしい。
トヨタは本当に強いが………
はたから見てる者としては、もっとバスケットボールシーンを熱くする戦いになってほしいと思うのです。
ファイナルはまだ終わってない!





