2006.06.17

皆が“世界”を知る大会がやって来る

 この1か月間はインタビュー月間だった。世界選手権公式サイトWJBL公式サイト、そのほかの取材で30人近く。インタビュー内容は続々とホームページ上にアップされているのでぜひ読んでほしいのだが、その中で「魂の叫び」ともいえるインタビューがあった。折茂武彦選手である。ヨーロッパ遠征前日のインタビューでのことだった。

 今の日本男子代表は真面目でおとなしい選手が多い。当然、今までのインタビューではありきたりの答えが多かった。それが、昨年、一昨年に比べ、今年は随分と話すようになっているのを、公式サイトのインタビューから感じていただけるだろうか。今まではうまく状況を説明することができない選手が多かった。それはきっと聞かれたことについて“考えてなかった”から。いや正確に言えば、そこまで考えるに至ってなかった。目の前のことに精一杯で。

 それが今年は違う。一歩突っ込んで聞くと、選手も「たとえば~」とか「具体的には~」と話が続く。もちろん、最初からそれができる選手がいたが、今年は全員が全員、一歩突っ込んだコメントが返って来るようになった。周りも見えてきているのだろうし、自分の置かれている立場も理解しているのだろう。インタビューひとつをとっても成長の階段をのぼっていっているのが分かる。

 前置きが長くなったが、そこで、折茂武彦だ。折茂や佐古賢一、節政貴弘たちの世代は、こちらが一言質問しただけで10くらい返してくれるような選手が多い。それは単に話し好きなのかもしれないけれど、若い時からチームの中心選手になっただけあって、自分の置かれる立場がわかっていたし、この世代はお互い刺激しあっていた“個性派”が多いから、仲間うちでよくバスケットの話をして分析力が備わっている世代なんじゃないかと。さらに経験を経て、言うことに深みが増してきている。

 その個性派世代を代表する折茂武彦が「世界は甘くない」とインタビューで叫び続けた。でも「恥をかきたくない」とも。それにはどうしたらいいか。「強い気持ちを持って、折れない心で臨むしかない」と。「気持ちでは負けない」と言う若い選手は多い。でも、折茂のそれは、8年前の世界選手権で、世界に打ちのめされた苦い経験からくる言葉で痛切な叫びに聞こえた。

 だからこそ今、折茂武彦は、人一倍練習に真剣だ。

 インタビュー中、折茂の言葉を聞きながら考えた。この叫びは誰に向けられているものなのかを。これは日本代表だけに訴えられたものではない。これは世界選手権にかかわる人、世界選手権を見る人、日本のバスケットボールファン全員に訴えた魂の叫びだと思った。

 今回の世界選手権は、選手もさることながら、メディアにとっても世界初体験の人が多い。エラソーなことを書いている私だって、取材のフィールドはアジアが主で、2年前のアテネ五輪で男子のバスケットを生で見て打ちのめされた一人だ。「日本はこんなのと戦うのか」と。日本中が世界を知る大会。それが今回の世界選手権。バスケットにかかわる人たちすべてが、世界の中に置ける日本の立場が分かってこそ、バスケット界が変わることができるのだと思う。それくらい世界選手権の持つ意味は大きい。そのことを肝に銘じて臨みたい。プレイする側も、発信する側も、応援する側も。

 折茂武彦の魂の叫びを聞いて、私自身も身の引き締まる思いがした。


Posted by yota at 13:25  日本代表