月刊バスケットボール6月号

NBA

2022.03.05

敵将が見る八村 塁(ウィザーズ)の脅威 - 「3Pシューティングでさらに怖い存在」ネイト・マクミランHC(ホークス)語る

 日本時間3月5日(北米時間4日)にワシントンD.C.のキャピタルワン・アリーナで行われた、ワシントン・ウィザーズ対アトランタ・ホークスの一戦に八村 塁が出場。試合には114-117で敗れたが、八村は19得点、6リバウンドにアシストとスティールも1本ずつ記録する活躍を見せた。フィールドゴールは10本中7本を成功、そのうち3Pショットは4本中3本成功の成功率75%という高確率だった。


八村はこの試合を含め、今シーズンは22試合に出場して平均9.5得点、3.1リバウンド、1.0アシストというアベレージ。シューティングに関してはフィールドゴール全体が47.6%と堅調なだけでなく、3P成功率が54.0%と絶好調だ。この項目の八村は3年間のキャリアで28.7%→32.8%→54.0%と著しい成長ぶりで、今や日本のファンを喜ばせるだけでなく、アメリカでも話題になっているほどだ。

 

 


試合前の会見では、ホークスのネイト・マクミランHCも八村の3Pショットについて、「50%以上の確率ということをもちろんよくわかっています。3Pエリアからたくさん打つわけではないですが、以前よりも狙ってきていますね。1試合に1-2本だと思いますが(Yeah, well, we’re well aware. I think his shooting over 50%. He hasn’t had a lot of attempts from behind the 3. But he’s looking to shoot those shots a little more. I think he’s taking one, maybe to in a game)」と警戒感を見せていた。ミドルレンジの強さを土台に3Pショットがこれまで以上の脅威であることを以下のように話している。


「しかし彼はミドルレンジで非常に効果的なプレーヤーなので、しっかり立ちはだかって止めないといけません。しかも外へのクローズアウトも素早く対応しなければ決められてしまいます。打ってきますからね。彼はプレーの幅を広げています。運動能力とフルコートを走る能力が素晴らしいと思っていますが、そこにスリーボール(3Pショットを決める能力)が加わることで、より危険なプレーヤーになっています」
“But we know he has that range. But we also know he is very effective in the mid-range. He’s a guy that we have to keep in front, okay? We have to close out quickly to the perimeter because he is knocking down those shots, he is taking those shots. But I think it just adds to his game. I like his athletic ability, his ability to run the floor. Now he’s moving out, shooting the 3-ball, which is just gonna make him a more dangerous player.”

 

ウィザーズとの試合前、マクミランHCは八村の3Pシューティングを大いに警戒している様子だった(写真をクリックするとインタビュー映像が見られます)

 

 

 このように警戒していたマクミランHCだが、この試合で八村に許した4本の3Pアテンプト、3本の成功はともに八村にとってのシーズンハイ・タイの本数だった。八村自身は3Pショットを「特別に意識していません」と話していたが、機会が巡ってくれば狙ってほしいという思いをウェス・アンセルドJr.HCやチームメイトたちも口々に話している中で、自然とその機会を作り出す動きやスペーシングができてきているようだ。

 

 現時点での平均3Pアテンプト数は2.3本で、マクミランHCも触れているとおり多くはない。しかし、この日のように4本程度には上昇してくる可能性が高いのではないだろうか。そこで現在の確率を維持できたらチームにとって非常に大きなプラスだ。


ウィザーズはこの試合を終えた時点で28勝34敗(勝率.452)。順位はイースタンカンファレンスの11位で、プレーイン・トーナメント進出圏内の10位に位置しているシャーロット・ホーネッツ(31勝33敗、勝率.484)に2ゲーム差をつけられている。

 

 トレードデッドライン直前に獲得したクリスタップ・ポルジンギスはまだ戦列に加わっていないが、この日の試合では2月末にフリーエージェントとして獲得した長身のプレーメイカー、トマシュ・サトランスキーが初登場。ポルジンギスが戦列に加わる時期は明示されていないものの、アンセルドJr.HCはこのままシーズン終了まで出場機会がないとは思っていないとコメントしているので、残り20試合のどこかで201cmのサトランスキーをポイントガードに据え、ストレッチ5として221cmのポルジンギスを起用する超大型ラインナップがお目見えする可能性がある。

 

 その顔ぶれがそろうときに、フィジカルにインサイドを攻略でき3Pシューティングの脅威が驚くべきレベルに高まってきている八村がどんな働きを見せるか。まちがいなくウィザーズの巻き返しのカギを握る存在だ。

 

取材・文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)



PICK UP