月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2024.04.20

女子高生レフェリー・三海世奈さん、U15全国大会で笛を吹く!「目指すはJK初の高校全国大会」

緊張を乗り越え、堂々と笛を吹く


3月27~31日、東京体育館を舞台に行われたBリーグU15クラブによる日本一決定戦、B.LEAGUE U15 CHAMPIONSHIP 2024。その初日に女子高生レフェリーの姿があった。実践学園高1年生(当時、現2年生)でC級ライセンスを持つ三海世奈さんである。「それまで準公式戦でしか吹いたことがなく、全国大会どころか公式戦が初めて。しかも、今まで上からしか見たことがなかった東京体育館のコートに立って緊張してしまい、最初はふわふわした気分でした」。そう振り返りつつも、「プレーしている方やチャンスを下さった方にも失礼だし、せっかくの機会なのでちゃんと吹きたいと思っていたら、自然と試合に集中することができました」と滞りなく担当試合を終えてみせた。

JBA公認審判ライセンスは上からS級、A級、B級、C級、D級、E級の6種類(S級・A級は18歳以上が受講条件)あり、担当できる試合が異なる。県大会以上を吹くことができるC級以上の登録者は男女合計で13,887人。その内、女性は1割余りの1,890人(共に2024年3月1日時点)と少ない。まして高校生ともなれば、より少ないのは自明の理である。
三海さんが、初めて審判ライセンスを取ったのは中学3年生の時。元々小学4年生の時に、お姉さんの影響でミニバスを始めると、世田谷区立梅丘中でもバスケ部に所属。関東ベスト8進出に貢献するなど、選手として活躍していたが、高校ではマネジャーをやりたいと考えていたと言う。
「中学3年生の夏に選手を引退した後、中学で活動するクラブチームでマネジャー登録をしてもらい、審判の練習もしていました。高校に進学したあと、チームのためにできることを身に付けられることはないかなと考えていたのです。中学校の顧問の先生の知り合いだったS級の須黒祥子さんの審判姿を見て“かっこいいな”とも感じていたこともあって、その夏にE級を取得しました」。

晴れて実践学園高に進学し、女子バスケ部のマネジャーになると、昨夏には一足跳びにC級を獲得した。バスケ部の顧問である小椋雄大先生は三海さんについて「協調性と社交性を兼ね備えている。明るく積極的な性格で、部内で審判をやる時も毅然とした態度で吹いています」と語ると、「外部コーチと『審判の才能があるよね』と話しています」と称えている。





自身の目標に向けて、この夏、B級取得を目指す


初めての公式戦は「100点満点で60点か70点くらい」と三海さん。「1Qの入り、最初の笛を大事にしすぎたことで、軽いものだと鳴らせなかったのに、後半に吹いてしまったりして最初に吹いておくべきだったなと思っていました。また部活でいつも女子を吹いていることもあって、男子の当たりの強さは同じ競技とは思えないというか、判断基準自体は変わらないのですが、レベルや年齢が上がると接触も強くなり、それが正当か不当かを判断するというのは難しくもあり、おもしろいと感じました」とU15の試合を吹いたことで多くの発見を得られたと説明する。試合後には、一緒に試合を担当した先輩審判からアドバイスを受け、立ち居振る舞いから細かなポイントまで指導してもらった。その言葉を胸に、何度となく担当した試合を動画で見返して反省しているという。



将来的にはアスリートを支える仕事を目指したいと語る三海さんには、高校卒業までに成し遂げたい夢がある。それは“高校生の全国大会で吹いた女子高生1号になること”。
「ウインターカップやU18日清食品トップリーグで吹いた男子高校生の方がいるのですが、女子高生ではまだ聞いたことがなく、自分が第1号になれたらいいなと考えています。最近は審判をさせていただく機会も増え、活動が楽しいと感じています。だから大学とかでも続けられたらと思います」

自身の夢を実現するためにも、ということで今年の夏に18歳以下で取得できる最高位のB級を目指す。「B級ライセンスで評価が高い方の中には、全国大会や決勝、準決勝といった舞台で吹いている方もいるので、まずはB 級を獲得したいです。多くの経験を積み、たくさんの方から指導していただいたことを踏まえてB級審査に臨み、取得できればいいなと思っています。目標達成に向けて、しっかり頑張ります」。終始笑顔を見せながらも強い思いを語ってくれた三海さん。女子高生が同世代の全国大会で笛を吹く――それが現実になる日もそう遠くないはずである。

※取材協力:Bリーグ、取材日:2024年4月10日






文/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)

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